第5話やるせない話
来那は全部の反応が初めてのような反応だった
手を繋ぐ時も、キスをする時も
俺が来那に触れる時も
来那は彼氏がいたことはないとは言っていない
“覚えてないだけ”と言っていた
あとは“内緒”
来那が演技してあたかも初めてのような反応をするのも考えにくいしよくわからない
でも一つ言えることは
来那は処女ではない
そういう行為をしたことがあって
彼氏もいたことあるんだと思う
俺は内緒にされていただけだったんだ
来那に騙されてるのかもしれない
朝、ラブホテルから出た俺と来那は一言も喋らずに駅に向かう
なんでもかんでも全部内緒ってなんだよ…
フェアではない
俺自身来那に隠すような事とかはないんだけど
相当大事にしていた4ヶ月
初めてだと思っていたからゆっくり時間を掛けた
でも結果
こういう女もいるのかなって思ってしまう
こんな可愛い子に彼氏いた事ないなんてありえないよな普通
「……りつ?」
浮かない顔をしている俺を見つめる来那
「…ん?」
「なんでそんな機嫌悪いの?」
「悪くないよ」
俺がそう言うと来那は握っていた手を離して立ち止まる
「どうした?」
立ち止まり下を向いてる来那に声を掛ける
「……私の体、そんなにダメだった?」
「いや、そんなことないよ」
「じゃあなんで不機嫌なの?」
来那が少し怒ったように俺を見る
でもどこか悲しそうな顔をしているので俺は正直に言う
「来那の内緒の話って何?」
俺は来那に鋭い眼差しを送り言う
来那は少し固まる
何も言わない来那に俺は続けて言う
「彼氏いたことないって言ってたよな?
別にいてもいなくてもいいんだけど
内緒って何?」
あまり怒りたくはないけど
怒りを抑えることは出来なかった
「内緒にされる気持ちって考えたことある?
覚えてないだけって言われて俺が何もないって勝手に思ってただけかもしれないけど
俺は来那を信じてたよ、
でも裏切られた気分になってる」
俺は思ってる事を真っ直ぐに言う
でも来那は話そうとしない
「頼むからなんか言ってくれよ…
俺に内緒の話ってなんなんだよ!」
怒鳴るように来那に言う
来那は泣きながら重たい口を開いた
「………ごめんね」
泣きながら謝る来那
「私……本当に覚えてないの…」
「……え?」
……何が覚えてないんだ?
来那は続ける
「本当にごめんね……
前の彼氏も覚えてないし
りつとどこであったのかも覚えてないし
初デートも初キスも覚えてないの」
「………」
どういうことだ?
「内緒にしててごめんなさい
でも、りつに変われるって言われたから変わってみたかったの」
涙を止めることなく来那は言った
俺も頭の中で整理出来ないでいる
言い訳?それともまた騙されてるとか
でも泣いてるし、初めてのような反応してたってことは
本当に覚えてない…?
「どういうことかわかんねーよ」
「また後で話そう
りつに見せたいものがあるから
明後日でいいかな?」
来那は少し泣き止み俺に言う
「……うん」
と一言だけ返事をする
とりあえず俺と来那は帰ることにした
よくわからないまま俺は家で1人考え事をする
もし、覚えてないっていうのが本当だったとしたら
あの時カバーの付け方を忘れた時も
繋がるのかも知れない
あれはわざとやっても出来ない
本当に忘れてるのか……?
考えてもどういうことかわからずに
俺はそのまま眠りについた
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