第4話好きになる話
来那は案外いいやつなのかもしれないな
しかしめちゃくちゃ可愛い
例えるなら君達が想像する可愛い顔の子の3倍は可愛い
透明感という言葉が1番合ってるだろう
セミロングくらいの髪に栗色のストレートで
メイクはほとんどしていない
なのにあの透明感
なんだろう
あんな可愛い子がこんな本屋にいて大丈夫なのかな?
と思いながら俺は帰ることにする
本間と同じ電車に乗るけど車両は別にしている
話すことないのに同じ空間にいるのが嫌だから
俺って性格悪いのかな?
でもそう思ってしまうのだから仕方ない
1ヶ月が経った時
俺は大学の友達と一緒に下校をしていた
決まっていつもこのメンバーと一緒にいる
悠『ゆう』
テンション高い系男子
うるさい軍団とはとはまた違ううるささなので許せる
ちなみむっつりスケベ
あとは舞衣『まい』
女子力担当で料理とかファッションヘアメイクの流行に敏感だ
ちなみに元卓球部のジャニヲタ
そして最後はりこ
おしゃべりが大好き
1人でよく食べ物を目指して旅に出ることがあるらしい
ちなみに足が太い
これが俺のいつメンだ
いつメンとはたまにこんなことを話してる
「で?来那ちゃんとはどうなの?」
お喋りなりこが俺に聞いてくる
こいつらなら言ってもいいかなと思って来那の事は話してる
来那とはあれから色々と話はしていた
前に質問を結構したんだけど
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「来那は大学の友達とかいないの?」
「んーーー内緒」
「なんだそれ」
「いないわけではないよ」
「彼氏は?」
「いない」
「いたことはあるの?」
「んー内緒」
「なんだよまたかよ」
「付き合った覚えがないだけだよ」
「それっていたことないってことじゃん」
「そうなのかなー?」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
そんな感じだった
内緒が多いんだよなー
特にデートとかはしたことない
仕事の空いてる時間に聞いた話だった
内緒ってなんだよ
そういえば本間も内緒にされていたな
あんまりプライベートのこと話したくないのかもしれない
それだとかなり距離を置かれてるんじゃないか!?
「あれ?もしかしてあんまりうまくいってないの?」
りこが心配そうに俺を見る
「まあーそんな感じかなー
なんか話しかけても素っ気ないし」
俺は多分来那のことが好きなのかもしれない
中身はまだわからないけど
胸がきゅーーっと締め付けられるこの感じは絶対に恋だと思った
だからタメ口を聞かれてなぜか距離が縮まったように感じたから嬉しかったのかもしれない
しかしこのままだと何もうまくいかないんじゃないか……?
「その子どんな子なの?」
とりこの隣にいた舞衣が興味津々に聞いてくる
「んーーーあんま喋らないのと
話しかけても素っ気ない態度で返してくる
プライベートのことを聞くと
ほぼ内緒にされて距離が近くなる気がしないしな」
「ふーーん可愛いのに素っ気ないってもったいないよね
そのうち顔とか体目当ての男の人に狙われて大変なことになっても知らないよ?」
うっ
なぜそんなことに?
向こうはおそらく彼氏がいたことないはず
てかそんな感じのこと言ってたし
「てか!なんで男に狙われるんだよ」
俺は慌てるように舞衣に聞くと
「だってナンパした女の子が可愛くても素っ気なかったら体だけでも欲しいってならない?」
「よくわかんねーけどどうなんだ?」
と俺は疑問に思う
すると
「まあ確かにな!体だけでも無理矢理やってやるってなるかもな!
はっはっはっは!」
と後から来た悠が高笑いをしながら言ってくる
笑い事じゃねーぞ……
色々不安が募る中
「じゃあ律はその子にどうなってほしいの?」
わりと真剣な目で俺を見る舞衣
「どうなってほしい?」
「そう、律が伝えて変わってもらうのも一つの手じゃない?」
どうなってほしいか……
まあ素っ気ない態度じゃ無くなってほしいのが正直な気持ちで
あとはなんでもよかった
バイトの時間になる
いつもは本間が後から来るはずなのに今日はなぜか早めに来ていた
本間の横には来那が居た
俺は見た瞬間になんでここにいるんだと思うと同時になんとも言えない心の痛みが激しく突く
デートしてきたのか?
なんて思うけど何も言わないし何も言えない
「りつおはよ」
相変わらずタメ口の来那
今は朝じゃねーだろとツッコミたかったけど
胸が痛すぎてそれどころじゃない
「うん、おつかれー」
俺は無理矢理な笑顔で答えてバイトの制服に着替えてすぐにフロアに出た
イライラとしていたいけどそんな小さな自分が嫌なので我慢している
「店長おつかれさまです」
「おぉーおつかれ!
なんだ?怒ってんのか?」
と店長に見抜かれてしまった
顔に出してたわけじゃない
なんでだ??
「いやー??怒ってないですよー!」
俺は慌てて否定する
「そうかーー?
まあそんな気がしただけだからな」
店長のなんとなくがかなり怖いぞ……
しばらくすると
来那と本間は2人でフロアに出た
しかも仲良さそうに
落ち着けまだ何もないはずだ
そして俺も仕事に集中する
これしか気にしなくなる方法はないしな
「来那ーレジお願いねー」
と俺は本の整理をする
新作の本を並べるのにかなり時間がかかる
店長も手伝ってくれてるからまだ早く終わるけど
大変なんだよなー
「ちょっと早くしてよ!!」
ん??
何やら40代くらいのおばちゃんが来那に怒鳴ってる様子
「どうされました??」
と店長が慌てて入ると
「本のカバー付けるのに時間かかりすぎじゃない?
電車の時間間に合わなくなっちゃったじゃない!」
カバー付けるのに?
来那にカバーの付け方教えたはずだぞ?
「今付けます!」
と言って店長は急いでカバーを付け始める
「大変申し訳ございませんでした」
「もういいわよ!」
と言って40代のおばちゃんは怒って帰ってしまう
「来那大丈夫か?」
俺は来那の顔色を伺って言う
「……うん、ごめん」
「カバーの付け方教えたよな?
その前もちゃんと出来てたし
どうしたんだよ?」
俺は優しく来那に問いかける
来那は涙目になりながら
「………ちょっとど忘れしちゃった
ごめんなさい!」
来那は店長に謝る
「いいんだよ、しょうがない
また復習を兼ねて吉見くんに教えてもらって?」
と店長も優しく言う
俺も頷く
「じゃあやろうか」
と言って来那とまたカバーの付け方を教えた
俺が教えてる最中の事
「これをこうするの、おっけー?」
「……」
来那は返事もしないままだった
俺はそういうところが嫌だった
「来那ってさ、なんでそんな冷たいの?」
俺がそう言うと来那は久しぶりに俺の目を見てくれた
「俺が話してるのに無視って何?
話す気ないの?」
少し俺は強めに言った
来那はこのままじゃダメだと思ったから
「なんで?」
来那は華奢な声で俺に聞く
「話しても素っ気ないじゃん
それだとただの感じ悪い人だぞ?
俺は来那にはそういう人になって欲しくない」
そう、本間みたいなやつには
「なんでそういう事言うの?」
「来那に変わって欲しいから」
俺は素直な気持ちを正直に言った
来那は黙ったままだった
なんとでも言って欲しいことだったのに
来那は何も言わず泣いてしまう
「ら、来那!?」
俺は慌てる
な、なんで!?俺なんか言っちゃったか!?
「ご、ごめん!てかどした!?」
来那は近づく俺を跳ね返すように腕で俺の胸を押す
「優しくしないで」
来那が泣きながら言った言葉だ
「……え?」
俺は理解が出来なかった
「なんで?」
「私は…りつが優しくしていいような人じゃない」
「どういうこと?」
気になることが多すぎた
何が言いたいのかさっぱりわかんない
その時
本間が近くに来る
俺らの2人の言い合いは多分終わった
来那も何も言わないでカバーの付け方を泣きながら練習していた
仕事が終わる
俺は外で来那を待つ
すると店を出る来那が見えた
「来那!」
俺の目の前を通り過ぎる来那の名前を叫ぶ
止まらず自転車に乗ろうとするが
「待って!」
俺は無理矢理自転車のハンドルを持って止める
「なに?」
また冷たくあしらう来那
「話すだけでいいから
時間くれないか?」
そう言うと来那は自転車には乗らず押して歩いた
「話してくれる?」
「うん」
俺は少し喜びながらも付いていく
「飯は?家帰ればあるの?」
「大体あるよ」
「そっか、じゃあ近くの公園でいいから話そう」
「うん」
公園に着く
「来那寒くないか?」
「……ちょっと寒い」
「わかった」
俺は着ていたカーディガンを脱いで来那の肩に掛けた
「ありがと」
小さな声で来那は言う
俺は近くの自販機であったかいココアを買って来那に持たせる
「これで寒くない?」
「うん、ありがと」
こんなに人のために何かするの初めてかもしれないな
それほど来那を大事に思いたかった
「さっきの話の続き聞かせて?
何で来那は俺が優しくしていい人じゃないの?」
自分で言うけどここまで俺はかなり来那に優しくしているつもりだ
そんなことないよと伝えたいから今全力で優しくしてる
「言えない?」
「……」
来那は顔を横に振る
「りつは優しいね」
急に来那は微笑みはじめた
あまり見ない来那の笑顔に
俺はドキドキする
来那は体を縮こませる
寒いのかな?
夜なのもあって今日はやけに冷える
俺は大丈夫だけど来那が心配だった
けど来那の話も聞きたかったから
とりあえず何も言わず言葉を待つ
「私、変われると思う?」
来那が弱々しく言った
「いくらでも変われるでしょ」
「……そうかな?」
「俺はもっと来那に笑ってほしい
ずっと笑顔でいて欲しいんだよ」
ストレートに来那に気持ちをぶつける
しかし来那は
「無理…私、そんな風に……
変わろうと思って生きたことない」
「これからでも変われるよ
自分を変えるのに遅いも早いもないんじゃないかな?」
「………優しくしないでよ」
来那はまた同じ事を言う
「バカなこと言うな
来那はこれからいっぱい変わっていけばいいんだよ
何があったかはわかんないけど
俺は来那と一緒に変わっていきたい
そう思えたんだ」
俺がそう言うと
来那はボロボロと涙を流す
「……」
黙り込む来那に俺は言葉を重ねる
「俺が来那と一緒に居て
一緒に変わるんだよ
俺の人生、来那に全部あげる」
来那はどう思ってるかわからないけど
前に進めない来那の背中を押してあげたい
「ねえりつ?」
「なに?」
「こういう時ってどうすればいいの?」
「こういう時って?」
「なんか頭の中が真っ白でさ
りつに触れていたい」
それって……
「もっと近くに来な?」
と言うと来那は俺にピタッと体をくっつけた
「俺も来那と同じ気持ちだから
悪いけどこうさせて?」
俺は来那を抱きしめた
「………」
来那はびっくりしている様子だった
本当にこういう経験ないのかな?
「りつ……?」
「ん?」
「私、なんか変かも」
「なんで?笑」
「心臓が痛いもん
恥ずかしくてりつの顔が見れない」
なんて可愛い事を言っていた
「俺は来那のこと好きだからめっちゃドキドキしてるんだけど
来那も俺のこと好きだからドキドキするんじゃないか?」
「……そうなのかな?」
「本間さんと話してる時は?」
「なんともなかったよ
でも無理して笑わなきゃいけないかなって気使うから疲れちゃう」
なんだ、そうだったのか
「じゃあこれからもずっとこうしていられるように
この先も一緒に居てくれる?」
俺は来那に優しく言うと
「私でよければ」
これを機に俺たちは付き合うことになった
来那は人と仲良くなりすぎるのが苦手らしく俺を突き放すように距離を置いていたのもそのためだったみたいだ
でもそれでよかったな
本間には申し訳ないけどバイト先で
俺と来那が付き合ってる事を知ってるのは店長だけだった
本間も何も知らずに来那に近づいてるけど
もうざまあみろとしか思わなくなった
これで来那と俺の付き合った経緯は終わりだけど
俺はもうこの時にミスをしてることに気づかなかった
なんで来那が変われないと言ったのか
そしてそれに気づかずに4ヶ月が経ってしまう
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます