第3話他愛のない話
とりあえず俺は出勤の時間になるまでタバコを吸うことにした
あ、そうか、まだこの子未成年だよな?
「あ、ごめん、タバコ大丈夫?」
と、来那ちゃんに聞くと
コクンと二回頷く
て、店長……早くきてくれ…
この子しゃべってくんない!
とりあえずこのまま喋らずにいると
また誰かが入ってくる
お?店長かな??と思って思い切り振り返ると
本間が居た
なんだおめーかよ
「おつかれさまです」
「はーいおつかれ」
といつものように微妙な雰囲気が流れる
くっそー
なんか苦手なんだよなーこいつ
まあいい、てかどうでもいい
この気まずい雰囲気から脱出するために
俺は仕事に向かう
多分必然的に来那ちゃんに教えるのは俺になるであろう
その時に仲良くなればいいんだ!
とりあえず仕事中の店長に挨拶
「店長おつかれさまでーす」
「おーおつかれー
どうだった?新入りの子」
「いやーなかなか喋ってくれないんですよー
どうしたもんですかねー」
「そんなん飲みに誘ってガーッ!ってやってホテル行ってガーッ!ってやればいいんだよ」
「宛にならないっすね笑」
店長はめちゃくちゃいい人だ
明るくて優しいし、人の話を親身になって聞いてくれる
「まあまあー若いうちしか出来ないんだから
経験しときなってことだよ」
んーー女遊びっていうのはやっといた方がいいのかな?
と思ったが高校の頃に付き合った彼女とはあんまり長続きしなかったからなー
基本的に女の子は大好きだけど
女遊びをしたいかと言われればそうでもない
だから来那ちゃんとも仲良くなりたいだけであってそういう気はないのかもしれない
しかしめちゃくちゃ可愛い
なんなんだろうなこの感じ
まさか一目惚れ!?
とりあえず俺はレジにいる
しばらくすると来那ちゃんがやってくる
そして俺は強く胸に衝撃を食らう
来那ちゃんは本間と2人で笑いながら歩いていた
お、おいいいいいー!!
なんだこの光景は!!
なんで本間と!?
俺はしばらく視界に入らないようにしていたが
どうしても気になる……
横目に2人の姿が映る
なんでそんな楽しそうにしてるんだ!!
俺は落ち着かせるためにひとまず品を整えに行く
やばいやばいやばい
心臓のチクチクが取れねー!
と思っていたところだ
「吉見くん」
店長に呼ばれる
「は、はい?」
「ほら、教えにいかないと!」
と言って俺の背中を押し出す
「て、店長??」
「ほら、君はもう先輩なんだから」
と無理矢理押される
そしてレジにいる2人の後ろに行き
また微妙な雰囲気が流れる
この空気……耐えらんねー!!
2人は俺を見もせず話を進めていた
「へえーーじゃあこっち来るまでに自転車使って来てるの?」
「はい、家がこの辺なので」
俺と話した時に見せなかった笑顔だ
なんでこの男にはそんな顔するんだよ…
「へえーー高校はどこの高校?」
と本間が来那ちゃんに聞くと
来那ちゃんはしばらく黙ったままだった
そして長い間が空いてから来那ちゃんはこう答えた
「内緒です」
「ぶふぅーー!!」
俺は内緒にされた無様な本間が面白おかしく思えて吹き出す
ざまあみろ!お前には秘密なんだよ!
と、思っていると勢いよく本間は振り返り
「なんだよ」
と睨んできた
「なんでもないですよ」
俺はあしらうように返事をすると
本間は聞こえるようにため息を吐いた
それがかっこいいと思ってんのかよクソ野郎が!
俺は本間のため息を無視して来那ちゃんの方へ視線を移す
「さあ!俺が仕事の内容教えるから
来那ちゃんも付いてきてねー!」
来那ちゃんは嫌そうな顔を浮かべてまた首を2回縦に振る
俺には相変わらずか…
「まあ!最初はレジからやるのと
あとカバーの作り方教えるね」
わざと俺は明るく振る舞う
負けねーぞ俺は!
レジは簡単だからやり方だけ教えて
本のカバーの付け方を教えた
その間にも本間は店長に指示されて
俺らが教えてる間レジについてもらうことになってる
完全に2人きりの空間だ
俺は少しドキドキしながら教える
「ここに折り目を付けてこうしてこう」
俺が実際にやってるところを見せると
来那ちゃんはわりと俺に近づいてきていた
この距離…すげー緊張するな…
そんなことを俺は表には出さず
「はい!じゃあやってみて!」
と言うと
「うん」
とタメ口を使ってきた
なんでタメ口やねん!
と思ったけどとりあえずいいや
一生懸命カバーを付けている来那ちゃん
不器用だなー
まあ最初はしょうがないね
「違う違う、端に本を乗せてそうそうそう!
で、折り目付けて」
といい感じだったが
「ちがーーう!その中に表紙のとこ入れるの!」
と言うと
こちらに顔を向けてきて
しかめ面を見せる
「はい!イライラしない!続けて!」
来那ちゃんはしかめ面のまま続けた
「そうそう!やれば出来るじゃん!」
と言うと急に笑顔になる来那ちゃん
「ほら、完璧だよ
ここまで出来たんだからえらいじゃん」
俺が褒めると嬉しそうな顔をする
可愛いな…
その日はレジだけやらせて
ぎこちないながらも来那ちゃんはしっかりやってくれていた
そしてもうすぐで夜の10時になる
うちのお店は10時が閉店になるのでお店を閉める作業をしなければいけない
まずは掃除、棚の整理、レジ金の確認
それらを終わらせてから仕事が終わる
「はーいおつかれさまー
そして、来那ちゃんまた明日もよろしくねー」
店長が言うと来那ちゃんはコクリと頭を縦に振る
店長にも冷たいつもりかよ
まあいい
「来那ちゃん夜遅いけど大丈夫?
よかったら吉見くんが送って行くけど?」
と店長が勝手なことを言う
んまー確かに夜遅いの危ないしな
「大丈夫ですよ!
自転車だし!」
と強く断る来那ちゃん
「本当に?じゃあ気をつけて帰ってね」
と俺らは店を出た
「本当に大丈夫?」
と俺は来那ちゃんをもう一度心配した
「大丈夫、夜も遅いしりつも早く帰んな?」
な、なんでタメ口なんだよ!
とまた思ってしまう
まあタメ口が嫌なわけではないけど
常識的に考えて俺一つ上だし敬語使うのが普通じゃないか!?
しかも呼び捨てだし!
しかもしかも心配してきてるし!?
俺もお返しに言ってやった
「おう、じゃあ来那も気をつけてな」
呼び捨てにしてやった
まあこれくらい当然
そして来那は俺の顔をじっくり見る
「ん?なに?」
と、何かを期待するように俺は言う
「いや?カバーの付け方教えてくれてどうもありがとう」
来那ちゃんはコクっと頭を少し下げた
なんだそんなことか
「付け方忘れんなよー?
また明日もやってもらうからよろしくな!」
「うん、"絶対に忘れないよ"」
と言って来那と別れた
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます