第47話

「次のゲーム開始するかぁ」



直後にそんな声が聞こえて来てギョッと目を見開いた。



まだ呼吸は荒く、体を起こす事もしんどい状態だ。



綾も同じように床に転んだままキツク目を閉じている。



とてもじゃないが、次のゲームなんてできる状態じゃない。



「お、俺、ちょっとトイレ!!」



焦っていると、浩成がそう言った。



「なんだよお前、トイレは自由時間にすませとけよー」



鬼の文句が飛ぶが、浩成は無視して広間内にあるトイレへと向かった。



「浩成、わざとだね」



綾が目を開け、俺にだけ聞こえる声でそう言った。



「あぁ……」



その間に少しでも体力を回復させるため、



俺は深呼吸を繰り返したのだった。



浩成がトイレから戻って来たのは10分ほど経過してからだった。



「お前ウンコだろー!」



トイレから出て来た浩成を、子鬼たちがつつく。



「悪いかよ」



浩成はそう言いながら俺たちへ視線を向ける。



10分という休憩時間を貰った俺と綾は随分と体が軽くなっていた。



これならどうにか起き上がる事はできそうだ。



次のゲームが何かにもよるけれど、汗もひいた。



「綾、大丈夫か?」



「うん」



ミヅキの方へ視線を向けると、ミヅキはぼんやりと空中に視線を投げかけていた。



さっきから何も話さないし、何も耳に入っていないように見える。



「ミヅキ、次のゲームだぞ」



そう声をかけて見ても、反応はなかった。



ミヅキはマットの上に正座したまま、ボーっと天井を見上げている。



この様子じゃ次のゲームに参加できなさそうだ。



「じゃあ、次のゲームな!」



鬼の言葉に顔を上げる。



鬼は右手にストップウォッチを持っていて、その横に大きな電光掲示板が用意されていた。



鬼が持っているストップウォッチと連動しているようだ。



「もしかして、短距離走とか?」



綾が小声でそう言った。



そうかもしれない。



時間を計測するようなゲームだということは確実そうだ。



腕立て伏せ100回の後にこれはきつい。



でも……。



俺は横目でミヅキを見た。



ミヅキはきっと走れないだろう。



ここで脱落してもおかしくない。



せっかくここまで来ることができたけれど、綾を助ける事を考えればミヅキに脱落してもらった方がいい。



自分の考え方に冷や汗が流れるのを感じる。



「次のゲームは正座ゲーム!!」



鬼が大きな声でそう言い、俺は「へ?」と目を丸くした。



「せ、正座?」



浩成が瞬きを繰り返している。



「誰が一番長く正座できるか競争してもらう!」



「お父さん、あの子もう正座してるじゃん」



子鬼の1人がミヅキを指さしてそう言った。



「あぁ。それに関してはすでにカウントを開始してるから大丈夫だ」



鬼がそう言い、隣にいるメイド鬼を見た。



その手にはストップウォッチが握られている。

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