第46話

ギャル鬼が鬼を見る。



「あぁ~確かになぁ。でもその女の分の腕立て伏せ、まだ残ってるしなぁ」



鬼はブツブツと何かを呟いている。



「それじゃぁさぁ、今100回達成した男が、残りをやるってのはどうよ?」



鬼が浩成を指さしてそう言った。



マットの上に座っていた浩成の顔が、一瞬にして青ざめる。



「お前、何回腕立てした?」



鬼がミヅキへ向けてそう聞いた。



ミヅキはとまどいながらも「10回……」と、答える。



「じゃぁ、あと90回だな!」



「う……そだろ?」



流れる汗を手の甲で拭い、浩成は泣きそうな顔になっている。



「嘘じゃねぇよ。だって、そっちの方が楽しいだろ?」



鬼はまたケラケラと声を上げて笑ったのだった。


☆☆☆


「99……100‼」



俺と綾は同時にそう言い、その場に倒れた。



大量の汗と鼻水と涙で顔はグチャグチャだ。



腕は丸太のように重たく、ピクリとも動かせない。



腕立て伏せが開始されてから何時間経過しているのかもわからない。



だけどとにかく、俺たちは100回をこなしたのだ。



「よく頑張ったな」



結局、俺たちより早くに追加の90回を終わらせた浩成がそう言って来た。



「お前、そんなに体力があるなんて知らなかったぞ」



そう言うと、浩成は自慢げに「ロッククライミングをしてるからな」と、笑って見せた。



「なんだかんだで、できたじゃねぇかぁ」



鬼が拍手しているのが聞こえて来る。



「ってことは、今回は死者なしかぁ」



寂しそうに聞こえて来た鬼の声に、つい笑顔になった。



ざまぁみろ、今回は俺たちの勝ちだ。



そう言ってやりたい気分だった。

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