第23話
それは時間にしてほんの数分の出来事だった。
6人全員のジャンケンが終っていた。
勝ったのは俺、綾、浩成の3人。
負けたのはミヅキ、小恋、文夫の3人だった。
負けた3人は床の上に座り込んで青い顔をしている。
俺は綾が勝ってくれたことに心底安堵していた。
これで、俺はまだ綾を守る事ができるのだ。
そう思い、俺は綾の手を強く握りしめた。
「勝敗、決まったみたいだな?」
鬼の声が聞こえて来て、俺は視線を上げた。
鬼は鼻くそをほじりながら欠伸をしている。
このゲームに退屈して来ているようだ。
それなら解放してくれればいい。
さっきのジャンケンなんてなかったことにして、ここにいる全員を助けてくれればいいんだ。
そう思って見ても、鬼にその気はないようだ。
いくら飽きてきても、このゲームを中断すると言う選択肢はないのだ。
俺は鬼を睨み付けて歯を食いしばった。
この鬼に勝つ方法は本当にないのか。
このまま鬼の言いなりになっていれば全員殺されるんじゃないのか。
そんな風に考える。
「勝ったチームと負けたチームであみだくじを作れ」
鬼の言葉に俺は瞬きを繰り返した。
床に座り込んでしまっている3人が顔を上げた。
「ジャンケンで負けて終わりじゃなかったの?」
ミヅキがそう聞いた
「そんなこと誰も言ってないだろ? ジャンケンはただのチーム決めだ」
鬼の言葉にミヅキたちに喜びの表情が浮かんだ。
さっきまで青い顔をしていた小恋と文夫も一気に明るくなる。
俺は喜ぶと同時に嫌な予感を覚えていた。
さっきのジャンケンで勝敗がついていないということは、これからが本番なのだ。
綾の手を強く握る。
綾は不安げな顔で周囲を見回す。
「大丈夫だ。俺たちは幸運にも同じチームになったんだ。きっと、大丈夫だから」
小さな声で綾を励ました時、子鬼の1人が紙とペンを持ってやってきた。
「この紙にあみだくじをかくのか?」
「そういうことだよ。当たりは1つだけ。後は空白にしとけばいいから」
当たりは1つ。
今までのやり方を見ていると一気にまとめて殺す気はなさそうだ。
ということは、当たりをひいた人間が死ぬ可能性が高い。
「当たりを引いた奴が死ぬあみだくじなんて、俺作れねぇよ」
浩成がブンブンと首を左右に振ってそう言った。
誰だってそうだ。
そんな気味の悪いあみだくじなんて、作りたくない。
「作らなかったらどうなるか、考えてみろよ」
俺は浩成へ向けてそう言った。
浩成の顔色がサッと青ざめる。
参加しない奴だって、きっと殺されるだろう。
浩成は何も言わず、真っ白な紙を見つめている。
ここに梯子みたいな図を描いて、その下に当たりと書けばおしまいだ。
たったそれだけのことだ。
緊張が走る中、綾がペンを握った。
「最初は書きにくいと思うから、あたしが書く」
そう言い、真っ直ぐな線を3本引いた。
「ありがとう」
俺はそう言い、ペンを受け取った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます