第24話
適当な場所に短い線を書き足していく。
次は光世の番だった。
浩成は俺と同じように線を描き足し、そして真ん中の線の下に当たり、と書いた。
その手が震え、文字が歪んでいる。
「よく頑張ったな」
俺は浩成の肩を叩く。
「あ、あぁ……」
浩成は大きく息を吐き出してペンを置いた。
同時に、ミヅキたちのグループも書きあがったようだ。
あみだくじの一番下を折り曲げて相手チームに見えないようにした。
「できたか? それじゃあそれぞれ紙を交換して、好きな場所に自分の名前を書け」
鬼が指示を出す。
ここでズルをすれば、きっとすぐに殺されてしまうだろう。
まわりには子鬼たちがいるし、下手に動くことはできない。
俺はミヅキと紙を交換した。
3分の1の確率で当たりをひいてしまう。
その緊張感から、なかなか選ぶことができない。
「綾。どこにする?」
「あたしは……」
緊張した表情をしながらも、綾は一番にペンを握りしめていた。
みんなの気持ちを察して、率先して動いているのがわかった。
「ここにする」
そう言い、線の真ん中を選び、線の上に自分の名前を書いた。
もう、後戻りはできない。
続いて俺は右端の線を選び、浩成が左端になった。
「できたか~? 紙、持って来い」
鬼にそう言われ、子鬼が俺たちから紙を取って走って行く。
子鬼の後ろ姿を見送っていた綾が大きく息を吐き出した。
「大丈夫か?」
「うん。さすがに、ちょっと緊張しちゃった」
綾はそう言い、ニコッとほほ笑む。
俺を安心させるための笑顔だったようで、その顔はひきつっていた。
「大丈夫だよ。きっと、俺たちは助かるから」
そう、2人で助かろう。
こんな鬼たちから逃げ出して、日本へ帰ろう。
「まず最初に大塚ミヅキ、行くぞ~」
鬼の声にミヅキの体がビクリと跳ねた。
鬼は歌を歌いながらあみだくじをなぞって行く。
子鬼たちが鬼と同じように歌い始める。
それは大きな合唱となり、不愉快に鼓膜を揺るがしている。
「大塚ミヅキ、はずれ~」
鬼が真っ赤な舌を出してそう言った。
「なんだぁ、つまんねぇ」
子鬼がブーイングを飛ばす。
ミヅキが安堵してその場に座り込んでしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます