第17話

しかし……。



「ブラボー!!」



鬼がそう言い、立ち上がって盛大な拍手を送りはじめたのだ。



子鬼たちの拍手がかき消されるくらいの大きな音に、広間内が歪んだかと感じられるくらいだ。



ピアノの前に立ちつくして呆然と鬼を見上げているミヅキ。



鬼は両目からボロボロと涙をこぼして感動しているのだ。



その様子に子鬼たちはとまどいの表情を浮かべている。



親がこんなにも感動しているピアノの評価に悩み始めた様子だ。



「まじかよ、泣いてんだけど」



ギャル鬼が呆れた顔でそう言った。



「さっきの曲はお父さんとお母さんの出会いの曲だからね」



母親とおぼしき鬼が照れくさそうな表情でそう答えた。



どうやらミヅキがひいた曲は鬼の両親にとって思い出深い曲だったらしい。



っていうか、2人ともどうやって知り合ったんだよ。



そんな突っ込みを入れたいところだったが、やめておいた。



ミヅキの結果は○が4つだった。



悪くない評価だ。



戻って来たミヅキはなにも言わず、その場にヘナヘナと座り込んでしまった。



耳が痛むのか顔をしかめている。



今は何も言わずにそっとしておいてやる方がよさそうだ。



「次、誰だー?」



ピアノの余韻に浸る暇もなく、鬼の声が聞こえて来た。



綾がゴクリと唾を飲みこんだのがわかった。



次は綾の番だ。



「大丈夫だ。いつも通りにしていればきっとうまく行く」



綾が何を披露するのかも知らなかったけれど、俺はそう言った。



少しでも気持ちが落ち着けばいいと思った。



「ありがとう。言ってくる」



綾はそう言い、自分の足でしっかりと歩き始めたのだった。

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