第12話

ミヅキの止血をしている間に、広間の中央にあった観覧車は片付けられていた。



代わりに、広間の端に長いテーブルが置かれ5人の子鬼がパイプ椅子に座ってスタンバイしている。



「今度は子鬼たちによる審査制だ。不公平がないように、くじ引きで順番を決めるからなぁ」



鬼がそう言うと同時に、子鬼の1人が割り箸を持ってやって来た。



割り箸の下は子鬼がギュッと握って見えないようになっている。



そこに番号が書かれているのだろう。



俺はゴクリと唾を飲みこんで綾を見た。



綾は不安そうな、緊張したような表情をこちらへ向けている。



最初に割り箸で作ったクジを引いたのは文夫だった。



ジッと待っていられなかったのか、自分から手を伸ばす。



その割り箸に描かれていた数字は3番だった。



文夫の表情は少しだけ和らぐ。



一番じゃなかったことにホッとしているようだ。



後でもなく、先でもない方がいいに決まっている。



みんながどんな特技を披露するかはわからないけれど、真ん中辺りを引いた方が安心感がある。



俺はクジに手を伸ばした。



一本を選び、掴む。



心臓がドクドクと跳ねるのを感じながら、一気に引き抜いた。



何番だ……!?



割り箸の端に書かれた数字に視線をやる。



赤いペンで6番と書かれているのが見えた。



最後から二番目!



ホッとすると同時に緊張が襲って来た。



こんなに遅い順番で大丈夫だろうかと不安になる。



横を見ると綾もクジを引いていた番号は5番。



俺のひとつ前だ。



綾が不安げな表情で俺の手を握って来た。



俺はその手を握り返す。



「うそだろ、まじかよ!?」



そんな声が聞こえて来て振り向くと、青い顔した浩成が床に膝をついていた。



その手に握られている割り箸の番号は、1番だ。



誰だって1番にはなりたくなかっただろう。



こればかりは運としかいいようがない。



浩成には悪いが、俺と綾が1番を当てなくてよかったと思う事にした。



「順番、決まったみたいだな。じゃぁ1番から広間の中央に出て特技を披露してくれ」



鬼の声が聞こえて来て、浩成がヨロヨロと立ち上がった。



逃げても無駄だということはミヅキが証明している。



行くしかないのだ。



浩成の足は震えていて広間の中央へ移動するだけでも困難な様子だった。



その怯え方を見て子鬼たちが手を叩いて笑う。



審査員である子鬼たちも笑っていて、機嫌はよさそうに見えた。



でも、これがどう出るかはわからない。



広間の中央まで来た浩成は客席にいる鬼を見た。



「お、俺のと、特技は……ぎゅ、牛乳の早飲みです」



恐怖で言葉をつっかえさせながら浩成入った。



「なるほど。牛乳を用意してやれ」



鬼がメイド鬼に指示を出す。



メイド鬼は忙しそうに走りだし、5分後には浩成の手に牛乳が握られていた。



コップ一杯分の牛乳。



頑張れば誰でも早飲みできる量だ。

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