第10話
残り
2年1組
成瀬早人
内藤綾
2年3組
大塚ミズキ
松本小恋
2年4組
森田文夫
2年5組
片岡浩成
長大星斗
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「お前らよく耐えたなー」
悪魔のような観覧車は止まり、残った3人が出て来た。
3人ともあちこちに怪我をしている様子だけれど、命はあったようだ。
「大丈夫か!?」
すぐに広間へとかけつけると、3人は無言のまま倒れ込んでしまった。
あれだけの回転に耐えたのだ。
無理もない。
「よーし、お前ら。少し休憩しろ」
さっきと同じ場所から鬼が言う。
俺は鬼を睨み付けた。
だけど、鬼は俺のことなんて見てもいない。
小さな観覧車は子鬼たちが撤去し、一時の静寂が訪れる。
どうにかしてここから脱出しないと……。
そう思っても、頭は全く働かない。
どうすればいいのか見当もつかない。
大人たちはどこへ行ったんだ?
助けがくるはずなんじゃなかったのかよ!
このままじゃ、俺たちはこの鬼たちに殺されてしまう!
焦って周囲を見回してみても、自分たち以外の生きている人間の姿は見えない。
周りは子鬼たちに囲まれていて、いつの間にか逃げ道もなくなった状態になっていた。
「は、早人……」
綾が俺の手を掴む。
その顔は真っ青だ。
「大丈夫だぞ綾。すぐに助けが来てくれるはずだからな」
そう言うと、綾は左右に首を振った。
「違う、そうじゃなくて……」
か細い声でそう言い、指を指す。
そちらへ視線を向けると柱にへばりついたままの千春の体があった。
その周りに子鬼たちが群がり、肉を引き裂いて食べているのだ。
壮絶な光景に一瞬にして吐き気が込み上げて来る。
俺はできるだけ綾から離れ、さっき食べた物を全部吐き出した。
子鬼たちが俺を指さしてゲラゲラと笑っている。
「吐いてやんの」
「きったねぇ!」
「だっせぇなぁお前!」
甲高い声が耳障りだ。
胃の中のものが全部なくなった時、俺はようやく顔を上げた。
子鬼たちは小春の体とイブキの体を食べている。
「早人、大丈夫」
いつの間にか近くまで来ていたのか、綾が心配そうに俺の顔を覗き込んできた。
俺は慌てて自分の体で吐いた物を隠した。
「だ、大丈夫大丈夫」
そう言い、綾を吐しゃ物から遠ざける。
「俺たちは食事ってことか」
青ざめた顔の文夫がそう言った。
「そう言う事なんだろうな……」
だとすれば、他の人たちはすでに食べられてしまっているのかもしれない。
これだけの鬼たちを満腹にするためには、何百人という犠牲が出ていても不思議じゃなかった。
「これから俺たちはどうすればいいんだ?」
文夫にそう聞かれても、俺はなんの返事もできなかったのだった。
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