第8話

俺たち5人が連れられてきたのは広間を見おろることができるエントランスだった。



今は客席みたいに椅子がズラリと並べられていて、長いテーブルの上には豪華な料理まで用意されていた。



見ると、メイド服を着た鬼たちがせっせと料理を運んできている。



さっき見たギャルの鬼も、その手伝いをしていた。



「勝ったチームには豪華な料理を食べながら罰ゲームを見てもらうことになっている」



鬼がそう言い、大きな椅子にドカッと腰を下ろした。



促されるようにして、俺たちはその隣の空いた席に座る。



するとほぼ同時に紅茶を差し出された。



「お前らは未成年だからな」



そう言う鬼の手には赤ワインらしきものが持たれていた。



まぁ、紅茶でもなんでもいいけれど。



少し飲んでみるとギョッとした。



今まで飲んだことがないような美味しさが口いっぱいに広がる。



とても上品な味だ。



「これ、すごく美味しい」



俺の隣に座る綾が目を丸くしてそう言った。



「あぁ。なんていうブランドなんだろうな」



家族に飲ませてやりたい。


そんな風に思っていると、子鬼たちが広間の中央に何かを運び込んでいるのが見えた。



「あれって……」



綾が広間を見おろして呟く。



「観覧車?」



俺は綾の後をついでそう言った。



それは小さな観覧車だった。



ゴンドラは4つで、1つずつがとても小さい。



観覧車は広間の中央に置かれ、ゆっくりと回転を始める。



「これが罰ゲーム? なんだか楽しそう」



綾がその光景を見て言った。



確かに、楽しそうだ。



小さな観覧車を見て千春がはしゃいでいるのが見える。



青チームの4人はそれぞれ1人ずつゴンドラに乗り込んでいく。



「いいなぁ観覧車」



観覧席に座るミヅキが頬を膨らませている。



「準備おーけー」



4人全員が観覧車に乗ったのを確認すると、広間中に響く声で鬼がそう言った。



思わず耳を塞ぐ。



「高速観覧車、スタート!!」



陽気な声と共に、オクラホマミキサーに使われている藁の中の七面鳥という音楽が流れ始める。



今にもダンスがはじまりそうだ。



音楽に合わせて観覧車が回りはじめた。



小さな観覧車の一周は数十秒ほどだ。



音楽に合わせてクルクル回る。



クルクルクルクル回転する。



見ている方が目が回りそうになってくる。



「これ、何回転するんだろうね?」



綾が差し出されたサーモンのカルパッチョを食べながら聞いて来た。



「さぁ?」



俺はローストビーフを食べながら返事をする。



メイド鬼たちが紅茶を入れ直してくれる。



と、藁の中の七面鳥が早くなった。



同時に観覧車のスピードも上がる。



「あぁ、だから罰ゲームってわけか」



俺はようやく納得した。



この観覧車は徐々にスピードを上げていって、終わった時にはみんなヘロヘロということなんだろう。



「でもこれって早すぎない?」



藁の中の七面鳥はすでに原型を無くすほどスピードをあげており、観覧車も猛スピードで回っている。



「ん? 待てよ……?」



グルグルと回転している観覧車の様子がどこかおかしくて、俺はジッと目を凝らした。



そして気が付く。



観覧車のドアが回転の遠心力によって閉じたり閉まったりを繰り返しているのだ。



「お、おい。ドアがちゃんと閉まってないぞ!」



それも1つのゴンドラだけじゃない、4つすべてのドアが開いたり閉じたりを繰り返しているのだ。



「罰ゲームだと言っただろ」



鬼が赤ワインを飲みながらカラカラと笑い声を上げる。



その言葉の意味することがわかってしまい、サッと青ざめた。



回転はどんどん速くなる。



子鬼たちは喜び、歓喜の声を上げている。

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