第7話

「よーい、どん!」



パンッ! と空砲が鳴り、2回戦が始まった。



次々と投げられる玉。



赤勝て、青勝てという子鬼たちの応援。



ここが船上だということも忘れてしまいそうになる。



シャンデリアが落下し、メイン照明が残されていない広間だったけれど、視界は十分に明るかった。



たった5分。



されど5分。



2回戦終了の合図が鳴るまでが永遠のように長く感じられた。



まだか。



まだ終わらないのか。



俺はいつからこんなに体力がなくなったんだ?



手を伸ばしてジャンプするたびに息切れをする。



こんなんじゃ綾に嫌われてしまう。



そう思い、歯を食いしばって5分間を耐えた。



「はい、終了~!」



その合図と同時に俺はその場に座り込んでしまった。



肩で大きく呼吸を繰り返す。



「早人、大丈夫?」



綾が心配そうに声をかけてくる。



綾は額に汗を滲ませているが、まだまだ大丈夫そうだ。



「あぁ。大丈夫だよ」



ダサい所は見せられないと、立ち上がってそう言った。



立ち上がった瞬間、軽いめまいがした。



本当になさけない。



「よし、じゃぁ数えるぞー」



さっきと同じように子鬼たちが駆け寄ってきて、玉を数えはじめた。



「いーち! にーい! さーん!」



「じゅーに! じゅーさん! じゅーし!」



お、今度は前回よりも沢山玉が入っているようだ。



そう期待した時だった。



「じゅーご!」



の合図では赤い玉が投げられなかった。



子鬼が籠の中を覗き込んで確認している。



青い玉は15個目をなげられて止まった。



14対15で、今度は青チームの勝ちみたいだ。



こういう場合はどうなるんだろう?



まさか、もう一戦とか言わないよな?



流れ出た汗はまだ乾かない。



できるならもう少し休憩時間がほしかった。



「今度は青の勝ちか。どうする?」



鬼がそう言って子鬼たちを見る。



子鬼たちは口々に何かを言い、その言葉はごちゃ混ぜになって何を言っているのかわからなかった。



「う~ん。仕方がないな。今回はトータルの個数で決めることにしようか。え~と、赤が16個と15個。トータル30個。青が13個と15個でトータル28個。ってことは、赤の勝ちー!!」



「やった! 勝った!」



頑張ったかいがあった!



俺は綾とハイタッチをしてニッと笑った。



負けた青チームは悔しそうに下唇を噛んでいる。



「でも、勝ってどうなるんだろうね」



綾がふと真顔に戻ってそう言った。



「さぁ? でも、勝ったんだからいいんだろ?」



もしかしたら船から脱出だってできるかもしれない。



「あーじゃぁ。勝った赤チームはこっちへ」



鬼がそう言い、俺たちを誘導して歩いて行く。



「行こう、綾」



俺は綾の手を握り、鬼の後について歩きだしたのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る