第5話

「俺たちの通う高校にはないんだよ。怪我なんてしたら、大変だからさ」



俺がそう教えてやると、娘鬼は怪訝そうな顔になった。



「なにそれ、体育祭がない高校とかガン萎えなんですけど」



どうやら鬼は体育会系みたいだ。



まぁ、見た目でなんとなくわかるけれど。



「ハチマキ、全員に行きわたったか?」



鬼にそう言われて確認してみると、生徒たちには赤色と青色のハチマキがそれぞれに行き渡ったところだった。



「2年1組から2年4組までの生徒は赤色。2年5組と6組の生徒は青色な」



ちゃんとクラス分けまでされていたらしい。



「で、赤色の方が1人人数が多いから、そっちはハンデとして入口狭くなってるからな」



入口が狭くなってる?



なんのことだ?



そう思っていると、子鬼たちがピコピコと足音を立てながら籠のついた棒を運んできた。



「あ……」



綾が小さく呟く。



これは、玉入れの籠だ。



子鬼たちは2つの籠をセッティングすると、元の場所へと戻って行った。



鬼が言った通り、俺たちの籠の入り口は少し狭くなっているようだ。



「これからみんなで玉入れしろってこと?」



千春が誰ともなくそう言った。



たぶんそうなんだろう。



「ハチマキ巻けよお前ら、やる気あんのかよ」



娘鬼が罵声を飛ばして来る。



ここは言う通りにしておいた方がよさそうだ。



玉入れなんてしている暇はないけれど、どうしようもない。



俺は赤いハチマキを撒いて、カゴを見上げた。



高さはそれほどじゃない。



ジャンプをすれば入口に手が届くくらいだ。



「2回勝負、1回5分だ」



鬼がそう言うと同時に、広間に体育祭の音楽が流れ始めた。



それはかの有名な天国と地獄だった……。

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