第21話
「そっか。優しい友達だな」
「まぁ、そうなんだけどね」
変に突っ走ってしまうところがたまに傷な友達だ。
今もきっと、2人でいろいろな妄想を膨らませてこちらへ向かっていることだろう。
「付き合ってるのとか、聞かれそう」
「そっか。いいじゃん別に、付き合ってるって答えたら」
裕也の言葉にあたしは目を見開いた。
裕也はなんでもない表情を浮かべながらも、耳まで真っ赤になっている。
あたしの心臓はドクドクと早鐘を打っている。
こんな状況なのに裕也のことが好きだと確認するなんて、思ってもいない展開だ。
「そ……そうだね。それも、いいかもしれないね」
ぎこちなく返事をすると、今度は裕也が驚いたように目を見開く番だった。
そして、あたしたちは互いに笑いあった。
この時だけは、ストーカーの恐怖を忘れることができていたのだった。
☆☆☆
それから1時間経過したが、心と彩は来なかった。
少し寄り道をしているにしても遅い。
学校からあたしの家までは徒歩で20分もかからない距離だ。
心配になってきたあたしは2人にメッセージを送った。
《夏美:2人とも、今どこにいるの?》
しかし、少し待ってみても既読がつかない。
「どうしたんだろう」
「もしかして迷ってるんじゃないか?」
「それなら、連絡くらい来るよね?」
いまどき誰でもスマホを持っているから、連絡が取れないことのほうが稀だ。
不安がよぎったそのときだった。
不意に既読がついた。
かと思うと心からのメッセージが届いたのだが……。
それは心と彩が拘束されている写真だったのだ。
《心:2人がどうなってもいいのか?》
その文面に頭の中が真っ白になる。
なにこれ。
心たちの悪い冗談だよね?
こんなこと、起こるはずがない。
「夏美、これは……」
裕也が青ざめた顔で呟く。
その時またメッセージが届いた。
写真だ。
そこに写っているのは家に来たあの男の姿だった。
後方には拘束されて倒れている2人も写っている。
そんな……!!
ゴトリと音がして、スマホが床に落下したのだった。
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