第8話
俺は気にせず自分の席に座った。
足元にばら撒かれたゴミを踏んでクシャクシャと音がなる。
「おい、聞いてんかよ!?」
わざわざ低い声ですごんでくるので、俺は彼から視線をそらせた。
俺は元々釣り目で目つきが悪く、人付き合いが苦手で無口だった。
それが原因でこいつに目をつけられたのだ。
彼を見るだけで『睨んでんじゃねぇよ!』と文句をつけられて暴行を受けたことも何度もある。
だから、俺はすぐに目をそらす。
「人が話しかけてんだからこっち向けよ!」
ガンッ! と強く机を蹴られて、また教室内に悲鳴が聞こえた。
下等な女子生徒たちがいちいち勘に触る声を上げている。
俺の中ではなっちゃん以外の女の悲鳴なんて、雑音にしか聞こえない。
耳障りな声に苛立ち、一瞬顔をしかめてしまった。
それを彼が見逃すはずがない。
「なに睨んでんだよ!?」
「違う!」
咄嗟に声を上げていたけれど、そんなものは彼には通じない。
自分が睨まれたと思った彼は容赦なく俺の頬を殴った。
その勢いで椅子から転げ落ちてしまう。
一瞬目の前が真っ白になった後、徐々に痛みが襲ってきて顔をしかめた。
下等な女子たちのせいで、どうして俺がこんな目にあわないといけないのか。
そう思ったとき、チャイムが鳴りはじめてホームルームがはじまったのだった。
☆☆☆
なっちゃんがケーキを作った。
俺は家の近くの公園尾ベンチに座り、唖然としてなっちゃんのインツタを見ていた。
学校はとっくに終わっていたが、家ではおちつちて勉強ができないため、俺は毎日公園や図書館によって勉強をしていた。
頭を使って疲れて、甘いものがほしいと思っていたときのことだった。
「なっちゃんは、俺のためにケーキを作ってくれたんだ……」
じゃないと、こんなにタイミングよくケーキを作ったという投稿をするはずがない。
きっとなっちゃんは俺がここで勉強をしているのを見て、慌てて作ってくれたに違いない。
そう思うと、学校での嫌な出来事なんてあっという間に忘れ去ってしまう。
自分よりも下等な人間しか存在しない学校なんて、無意味そのものだ。
俺はなっちゃんさえこの世にいてくれればそれでいい。
いとおしさが一気にこみ上げてくるのを感じる。
なっちゃんの優しさ、けなげさな俺の中にじんわりと広がっていく。
表向きには母親の誕生日だと書かれているけれど、これは違う。
順の文字を純に書き換えてしまうくらいテレやななっちゃんだからこその、演出だ。
周りの人にはまだ、俺との交際を秘密にしているのかもしれない。
俺となっちゃんがこんなにラブラブだとわかれば、きっと全人類は嫉妬するはずだ。
それを懸念しているに決まっている。
なんてけなげで、そして頭のいい女の子なんだろう。
俺はスマホを胸の前で強く抱きしめたのだった。
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