第6話
それから乳製品のコーナーで生クリームを買い、スイーツコーナーでスポンジを見つけて買った。
後は何種類かのフルーツが入っているカットフルーツを買えば終わりだ。
自転車のカゴに買い物袋を入れるとずっしりと重たくなる。
あたしは両足に力を込めて、漕ぎ出したのだった。
☆☆☆
両親が家に帰ってくるのは夜の9時頃だった。
定食屋の営業時間は朝11時から、夕方6時まで。
そこからは明日の仕込み時間に入る。
うちのお店はメニューが多いから、仕込みに時間がかかるのだ。
買い物を終えて家に戻るとちょうど5時が回ったところだった。
今から作れば十分間に合う。
あたしは部屋着に着替えて白いエプロンをつけた。
エプロンの前には『うまい屋』と藍色で書かれていて、これが両親が営んでいるお店の名前だった。
「さ、作るぞ!」
あたしは腕まくりをして気合をいれ、作業に取り掛かったのだった。
☆☆☆
おかずを作る手際はなれたものだった。
なにせ、あたしは物心がつく前から両親のお店を遊び場として使っていた。
時にはお客さんにお水を運んだり「いらっしゃいませ」と、つたない言葉で挨拶もしていた。
そのたびにお客さんから頭をなでてもらっていた記憶がある。
料理がひとつできるたびにいい香りがキッチンに漂いはじめる。
最初にシチューを作り、クツクツと煮込んでいる間にから揚げを上げる。
それらができたらシーザーサラダをつくり、冷蔵庫で保管。
最後にオムライスのチキンライス部分だけ作って、食べる前にトローリ卵を焼いて乗せれば完成だ。
「さて、最後はっと……」
呟いて冷蔵庫をあける。
中にはスポンジと生クリームとフルーツが入れられている。
あたしはそれらを作業代の上に取り出して眺めた。
誰でもできそうなケーキつくりは、見栄えが命だ。
とにかく綺麗に丁寧にクリームを塗り、フルーツを盛り付けていく。
結構慎重に作業をしたつもりだけれど、できあがったのは15分後だ。
そのくらい簡単に作ることができる。
「結構いいんじゃない?」
指についたクリームをなめとって、自画自賛する。
そうだ!
せっかく初めてケーキを作ったんだから、写真を撮っておかないと!
自分で作ったとは言いがたいけれど、これはこれで記念になる。
そう思ってあたしはケーキの写真を何枚か撮影した。
そこにふんわりと見えるように加工をすれば、なかなか可愛い写真ができあがる。
「これならインツタにあげれそう!」
女子力の高い写真だから、みんなからの反応もよさそうだ。
あたしは鼻歌交じりにスマホを操作したのだった。
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