6ぷるぷるぷるるんっ
「ちょっとちょっと中村氏ー。活動内容も聞かないで返事しちゃって大丈夫なの?」
細野氏が不安げな声を上げる。
「なぁ、もう行こうぜー。腹減ったよ」
うるさいデブ。
「中村君。仮入部の手続きしましょ。一緒に来てくれる?」
まゆゆの、鈴を転がすような可愛らしい声。小生はひ弱な鶏ガラと見苦しいデブから顔を背けて振り返る。
「はい、分かりました。一緒に行きます」
「……よかった、中村君に会えて。中村君が白いシャツを着ててくれたから、わたしは今日、あなたに気付くことができたの」
はにかむように笑うまゆゆ。ああ、天使だ。女ネ申だ(縦書きで読んでいる諸兄はそろそろ諦めていただきたい)。
今日、白いシャツを着てきてよかった。
帰宅したら、チェックのシャツはすべて廃棄しよう。これからの時代は白シャツだ。チェックみたいなダサい柄、金輪際着るもんか!
この際、ジーパン……いやいや、デニムも新調した方がいいな。よし、今日はゲームなど放置して、バイトを探すか。
「じゃ、サークルまで案内するわ。今ね、テントを立てて実際の活動を体験してもらってるの。中村君も、体験してみて」
「体験……?」
「うん。ほら、あそこのテント」
まゆゆが指差す方に、確かにテントがあった。ビニールの屋根に金属の足がついた、小学校行事などでお馴染みのアレだ。
そのテントの前に、看板が出ている。看板に書いてあったサークル名を――小生は二度見した。
「カレーうどん同好会……『ホワイトシャツ』?」
呆然と呟く小生の横で、まゆゆが今日一番の笑みを浮かべた。
「そう。カレーうどんを満喫するサークルよ! ただし……『白い服を着て』食べるの!」
カレーうどん。そして、白い服を着ている小生……。
何やら不穏なものが、脳内をグルグルと渦巻き始める。カレーうどん、白い服、白い服、カレーうどん……。
「そ、そんな……そんなことをしたら……」
小生はテントとまゆゆを見比べて、わなわなとおののいた。
「中村氏! やめた方がいいよ。絶対、汁が飛びまくるって! カレーうどんに白い服なんて、アウト。アウト過ぎる!」
悲痛な叫びとともに、細野氏が小生に体当たりしてきた。ひ弱な鳥ガラは、その衝撃で自らよろめく。
続いて太田氏も、腹をぶるぶるふるわせながら言った。
「中村氏、考え直せ。白い服着てカレーうどん食うなんて、ちょっとおかしいぞ!」
「おかしくないわ!」
まゆゆが、太いのと細いのに毅然と言い放った。それから、小生の方を振り向く。
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