天狗の贄

@nenya

第1話 エピローグ

「お前、何してんの?」

「…誰?」



私はある小さな村で生まれた。

2歳の時に両親は他界。

親が死んだというのに涙ひとつ流さない私を大人たちは気味悪がった。

その後は地獄だったと思う。

服は布切れ1枚、食事は一日一食、日が出ている間はこき使われる、藁に倒れ込むようにして眠る、そんな日々。

そんな私にとってこの出来事は幸運だったと言えるのかもしれない。


ある日村が酷い飢饉となった。

長老含め村のお偉いさんたちが、

「天狗様が怒っておるのだ!」

「早く贄を用意しなければ!!」

もちろん誰も贄にはなりたがらない。

結局私にその役が回ってくるのだろう。


思っていた通り、私は贄に仕立てあげられた。

(1人口減らしされたところで変わらないでしょ…。)

そして、村の男5人が私を運び始めた。

なぜ運ぶのかって?

簡単な話。逃げないように足の健を少し切られているからだ。

これでは立つことすら不可能である。

人に担がれるという行為に慣れないまま、村の近くにある天狗の住むとされる大岩にたどり着いた。

さて、これからどうなるんだろうか…。

男たちは私を縄で縛り行ってしまった。

縄などなくても逃げられないと言うのに。


しばらく経つとだんだん視界がぼやけてきた。出血が多いのだろう。

(死ぬのかな…。)

そんな時だった。


「お前、何してんの?」

「…誰?」

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