第16話 1億ボルト

妻の明美に自らの胸の内を話した宙は、どこかスッキリとした感じがあるものの、有美の事で頭がいっぱいになっていた。


妻の明美は、逆にモヤモヤしながらの生活になりながらも宙の事を離したくない一心で、妻として女として宙に接していった。


そんな8月の事。

宙が、いつものように仕事をしていると、有美から15時くらいに電話があった。


ごめん!今、仕事中だよね?


うん。そうだけど、どうしたの?


有美は泣きながら、ゆっくり話した。内容は母が急に倒れて病院に運ばれたとの事だった。


お願い。仁科君、会いたいの。


うん!分かった!

仕事が終わってからだと遅い?


ううん。終わってからで大丈夫だよ。


宙は、つい返事をしてしまったが、妻の明美からは二度と会わないで!と言われている為、悩んだが、会う事に決めた。


仕事が終わった18時頃、すぐに妻の明美に電話をし、事情を話した。


もしかして、宙の好きな女の人?怒


う、うん。本当にごめん!今日だけだから。


宙は慌てて電話を切った!

そして、急いで有美がいる病院へと向かった。


はぁ、はぁ、有美さん?お母さんは?


仁科君(泣)


有美が宙の胸にもたれかかり、泣いた。


もしかして?


有美が強く身体を締め付け頷いた。

有美の母は急な心筋梗塞になり、あと1歩間に合わずに亡くなってしまったのであった。


宙にはかける言葉が無かった為、有美が落ち着くのを抱きしめながら無言で待った。


そこへ医者が、一礼をして、看護師が書類一式を有美へ渡し死後の手続き等の説明をした。


有美は小さく泣きながら、書類を受け取り、母の遺体をもう一度、眺めて病院を出た。

その後はタクシーで二人は有美の家へと向かった。


俺、居ても大丈夫?


う、うん。居て欲しい


俺が会った時は先月だったけどさ、元気だったし、あの男にもビシッと話してくれたのにね?


仁科君は、お母さんの事、許してくれてたの?


許すとか、そうゆうの考えてもなかった。

だって、俺のトラウマの人かどうかなんて分かんないじゃん?凄く昔の事だし。


そっか。アタシ、お母さんの事、嫌いだったんだけどさ、なんか、死んじゃったら、色々とごめんなさい。って気持ちになっちゃって。もっと仲良くしたら良かったなー。とか思って、今、凄く後悔してる。


そういえばさ、奥さん、大丈夫だったの?


いや、怒ってはいた感じだったけど、無理矢理に来た。


そっか。じゃ、帰る?


うん。そうしないとダメかも。でも、有美さんといたいし。悩んでる。


アタシといたい?って?


うん。最近、とゆうか前からかもしれない。俺、有美さんが好きなんだと思う。こうゆう気持ち、初めてで、良く分からなくて。


ずっと、女の人って避けて生きてきたから。


うん。嬉しい。アタシは仁科君で良いよ。アタシも好きだから。それに今日はずっと一緒に居て欲しい。ワガママだね。

でも、奥さんや子供はどうするの?


俺は散々、妻に苦労をかけたし、別れても全然、良いんだけど。妻がさ。


うん。どうする?


有美が宙の顔を覗き込み、手を握った。


5分ほど沈黙をして、宙は一旦、帰宅して、もう一度、妻と話す事に決めた。


そして、帰宅し、妻と話していると有美から突然、電話がかかってきた。


夜の10時頃であった。


ダメ!出ないで!


いや、一度、聞いてみないと。何かあったのかもだし。


宙は妻を振り、電話に出た。


有美さん?


違う!男の声だ。


よー、彼氏か?久しぶりだな?俺だよ。


声で分かった。宙が投げ飛ばした男だ。


その電話からは、有美の声も聞こえてきていた。


嫌!やめて!嫌~!


今から、何するか分かるか?


宙は察した。


お前!警察をそこへ向かわすぞ!


やってみろよ。家族のいざこざで片付くだけだからよー!


宙は明美に簡単に事情を話して、返事も聞かずに休みの日にしか乗らないバイクに乗り、有美の家へと向かった。


バイクを薬局の外へ止めて、有美の部屋へと向かった!


お~、お~、この女、スゲ~具合が良いじゃん♪おら、もっと泣けよ!お前の母親より良いぞ!


いや、いや、いやー!(泣)


宙はバイクに乗せていたL型六角レンチを握りしめ、部屋の扉を思いっ切り開けた!


部屋の中を見た宙はキレた!


男が裸になり、有美の上に乗っかていたのだ。


宙はすぐに六角レンチで男の後頭部を思いっ切り殴った!


ドンッ!と鈍い音がして男の後頭部からは血が噴き出し、男はベッドの下に倒れた。


有美は全裸のまま泣きながら、宙にしがみついた。


仁科君(泣)うっ、うっ、もう最悪だよ~(泣)


うん。もう大丈夫だから。で、でも俺、人、殺しちゃったかも?


自分の震える手を必死にこらえて、有美を抱きしめた。


この人、どうしよう?


有美の顔は怒った顔になり、今まで聞いた事が無い大きな声で叫んだ!


そのまま、死んじゃえー!


叫ぶと有美は、宙をキツく抱きしめた。


人殺しをしてしまった苦しみと、有美の気持ちを理解する感情が激しくぶつかりあい、その日、初めて宙と有美は身体を重ねた。


はぁ、はぁ、仁科君♡気持ち良いよ~♡


有美さん♡これ、凄く良い。何で?俺、嫌いな事だったはずなのに!変だよ!


はぁ、好きな人、同士だから♡はぁ♡良いの♡

あの男、♡忘れさせて♡うん♡

仁科君で忘れたい♡


白い雲の中でプラスとマイナスの電粒が激しくぶつかりあい、発電し雲を黒く染めていきく。

雲の中では1億ボルトの電流が作られていった。

























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