第15話 儚い雷雲
有美とキスまでは、何とか出来た宙は、その後、妻が待つ家に帰宅した。
妻の明美は小さく涙をし、宙に抱きついた。
あれ?宙、大丈夫なの?
あ、うん。何か慣れたかも。それより、心配をかけて、ごめん。
うん。もう良いよ。それより美月は?
遊びに行ってるよ。慣れた?いつの間に?
明美は不信そうに宙の隅々を見た。
なんか、怪し~!
宙はドキッとして、本当の事を言うべきかを悩んだ。
その時、明美が宙の手を握りだした。
えー!何とも無い!スゴーい!スゴいじゃん!何で?何で?
明美は宙の手を握り上下に振って喜ぶと、また抱きしめてきた。
ね、してみる?今、美月、いないし。
いや、それは、まだキツイかも。それより、ちょっと話しがあるから、良いかな?
明美に言われて自分が何とも無くなっている事に気付いた宙は、自分の手を見つめながら、不思議な感覚になっていった。
・・・正直に話そう。このままだと二人を傷つけちゃうかもしれない・・・
宙は、唇をかみしめて、ゆっくり明美に話し出した。
あの~、
何?さっきから、本当に変だよ?
うん。あのさ、俺、恋した人がいる。って言ったら、驚く? よ、ね?
はぁ?
明美はしばらく、考えて話しだした。
驚くとゆうより、うーん。言葉が出ないかも?
やっぱり、別に女がいるの?
いや、いるとゆうか片思い?かも。
本当に?!相手は誰よ?アタシ、知っている人?
多分、知らないと、思う。
でさ、仮にそうだとしたら、どうする?
明美はリビングをうろうろしながら、何かを考えていた。
そして、再びソファに座るとテレビを付けて音量を上げたり下げたりしはじめた。
明美?やっぱり、こうゆう話し、変だよね?
ごめん。無かった事にして。
嫌!無かった事には出来ない!
だって、だって!えっ?整理できないよ!
そして5分の沈黙後、明美は再び口を開いた。
それでさ、宙に好きな人が出来ていたとしてアタシは、どうしたら良いの?別れたい?とか?
家や、美月はどうするの?
そう、だよね?
とりあえず、仮にだよ?仮に別れたとしたら、家は渡すし、美月は美月の意思を聞きたいかな?って思うけど。学校の事もあるし、ここが良いんじゃないかな?って俺は思うけど。
うーん。
何か帰ってこなかったり、本当に変!怒らないから正直に話して。
本当はさ、もう違う人、いるんでしょ?分かるよ。もう10年以上も一緒にいるんだし。
宙は大きく息を吸って静かに話した。
うん。まだ友人なんだけど、俺の身体の事も知ってて。その人が、好きなんだ。自分でも変だって分かってる。でも、心がおかしくなりそうで。どっちかに決めなきゃいけない!って思ってるんだ。
そっ、でも、アタシは嫌!だって、宙が好きだもん。大学の頃から、ずっと。
俺ってさ、女が苦手だったし、どこが良かったの?
って今も完全には治ってないけど。
でも、恋愛みたいな物って俺、生きてきて、初めてで。今なら明美の気持ちが少しは分かる気がする。けど、
最初は、そうゆう人って事を知らなかったし。でも、知っていくうちに何かね。自然に好きになってたかな?
なら、アタシを好きになってよ。
う~ん。分かった。
ちょっと、まだ考えさせて。
どれくらい?
何ヶ月間か、かかるかも。
今は分からない。
話してみて妻の想いが分かった宙は自分の変化に気付いたと同時に妻の愛情を改めて分かったように思えた。
有美と出会う前は、妻の気持ちとかは全く分からず、どこか壁があったように思うからだ。
恐れていた雷雲の事を少し知り、怖さが薄れていく。
そんな感じになっていた。
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