第14話 静電気
その後、宙は有美の細くて優しい手を握る事まで成功した。
やった♡
有美が静かに独り言を漏らした。
宙も、変なドキドキを抱えて、震えながら軽く頷いた。
その後は、頭の中は真っ白になり、覚えていない。
そして、気付くと有美のベッドで眠っていた。
辺りを見回したが有美の姿は無く、机の上にサンドイッチが2つと置き手紙があった。
おはよう♡
昨日の事は、きっと覚えてないよね?
呼んでも返事が無かったから、そのままにしておいたよ。
サンドイッチ、良かったら食べて。
アタシはちょっと行く所があるけど、すぐ帰ってくるから。
そうだ、昨日はね、残念だけど何も無かったから安心して。部屋は勝手に使って良いけど、お母さんには見つからないように、よろしくね♡ 有美
と手紙には書いてあった。
宙は、ぼやけた頭で少しづつ状況が飲み込めてきた。
あっ!明美!
宙はすぐに携帯電話を確認した。
着信 5件 明美
そして、すぐに妻へ電話をした。
妻の明美は少し泣いていて、とても心配をしていたようだった。
うん。ごめん。昨日は飲み過ぎたみたいで同僚が家に泊めてくれたみたいなんだ。それで、今まで寝てしまっていて。
本当にごめん!
ううん。無事に居るなら良いよ。本当に心配したからさ。
宙は、また嘘をついた。
電話を切った、その時、窓の外から男の声がした。
何だ?喧嘩か?
宙は、そっと窓から下を見た。そこには有美と金髪の男が話しているのが見えた。
おい!まだ何もしてないじゃないか!有美!来いよ!
いや!何の話しかと思ったら、あんた最低よ!早く帰れ!
そして、逃げる有美を男は捕まえて、有美の胸を鷲づかみにした。
宙は、すぐにそこへ向かった。
到着すると男は有美の腕を摑み、強引に引っ張っていた。
おい!誰だよ、お前!
に、仁科君!
あん?オメーが誰だよ?
有美の新しい男か?
そう!アタシの彼氏。だから、帰って!
なら、勝った方が有美を貰う!で良いよな?
金髪の男は腕まくりをして腕のタトゥーを見せつけた。
野蛮だな?まー、別に良いけどさ。とりあえず、あんた誰だよ?
俺は有美の彼氏だよ。
嘘よ!仁科君、とりあえず逃げて!
男が宙に向かってきて胸ぐらを摑んで睨みをきかせてきた。
おっと!逃げるとかしねーよな?
事情が良く分からんのだけど?良いの?
何がだよ?強がるんじゃねーよ!
男が拳を宙の顔面に飛ばしてきた。
宙は、しゃがんで避けると、男の腕を摑み、逆の手でズボンの後ろに手をやり、片足で足を払い地面へと投げた。
それを見た有美は驚いた。
男も目が点になり、咳き込んでむせていた。
まだ、やる?
倒れている男の腕を捕まえたまま、拳を顔面に向けた。
男は静かに首を横にふった。
宙は男の腕を放すと有美に駆け寄った。
大丈夫?
う、うん。それより仁科君、今の?
うん。俺、高校の時、柔道部だったから。
そこへ有美の母親が男に駆け寄ってきた。
あんた、大丈夫なの?
宙は、それを見て、話しにいった。
一応、ダメージは少なくなるようにしました。なので、大丈夫です。
男が気付いた。
そして、4人は有美の家に入り、話した。
そうだったの。ごめんなさいね。まさか、娘に手を出そうとするなんて!もう、あの男は絶交するわ。
それから有美の部屋へ戻った。
仁科君、ありがとう。あの人、前からアタシをジロジロ見てて怖かったの。でも、お母さんには内緒の話しがあるからって聞きに行ったら、あれで。
そっか!虐待した人?
ううん。別の人だよ。それよりさ、仁科君、強いんだね♡ビックリ!
有美が宙に肩を寄せてきた。
・・・わっ!どうしよう、どうしよう?・・・
宙がとっさに避けようとした、その時、有美は宙の身体をガッシリ摑んで顔を寄せてきた。
次の瞬間、宙の唇に柔らかいソレはくっついてきた。
チュバ。
とゆう音がして宙は、固まってしまった。が意識はシッカリしていて、妻とは違う優しさのある唇が静かに宙の唇を包んだ。
包みながら有美は静かに言葉を漏らした。
少しだけ、このまま。お願い。
固まっている宙は逃げれずに小さくうなずいた。
は、はい。
身体は固まってしまったが、優しくて切ない唇は、宙にとって心地が良かった。
はぁ、はぁ。有美さん?
ごめんね。辛いよね。でも、アタシのワガママを聞いてくれて、ありがとう。
ううん。さっきの男、怖かったんでしょ?
うん。ちょっとだけ。でも、仁科君がいるから安心する♡
そして、有美は、また身体を寄せてきた。
宙は女性に接する怖い気持ちと闘いながら、有美にだけは、どこか許したい気持ちがビリビリと身体中を駆けめぐっていた。
・・・どうしよう?この変な感じ、初めてかも・・・怖いけど心地良い・・・
身体も心も擦れ合い、小さな静電気が作り上げられていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます