第5話 轟の向こう側

その日、宙はイビキをかきながら、夢を見ていた。


その夢は宙が、まだ5歳の時の記憶であった。


宙の父が仕事へ行っている時の事。母はうっかり、宙を放って昼寝をしてしまった。


その間に宙は何を思ったのか一人で、10キロ先の公園へ行っていたのだ。


その公園には滑り台、ブランコ、鉄棒、砂場と沢山そろっていた。


中でも宙は砂場遊びが大好きだった。

泥まみれになりながら、山やトンネル、家なんかを作って、そこにロボットや怪獣の人形を置く。のが定番であった。

そして、最後には全部を壊すのだ。


そんな、楽しい時間を過ごしている時、母は宙が家に居ない事に気付いて、とても慌てながら近所を走り回り捜していた。

その後、少し落ち着いて警察にも相談へ行ったくらいだ。


そんな中、宙は知っているおばさんを公園で見つけた。ベンチに座り、知らないおじさんと話していた。


おばさん!こんにちは!


そう、言いたくて近寄っていくと、おばさんとおじさんは立ち上がり、どこかへ行ってしまった。


あれ?僕、見えなかったのかな?ついていって、驚かせよう!


そう思い、跡をつけた。


二人はトイレへ向かったのだ。


何だ!オシッコか。


しかし、少し様子がおかしい。おばさんは男用に入っていったのだ。


あ、間違えてる!言ってあげよう♪苦笑


宙の無邪気なイタズラ心が動いた。


そーっと跡をつけて、ゆっくりと男性トイレへ入っていくと、二人の姿が無かった。


あれ?何で?


はぁ、はぁ、はぁ。


荒い息遣いが大をする方から聞こえてくる。

宙はおばさんが病気なのかも!

と心配した。

だが、青白い顔をしてテレビで見るオバケのようだったら怖い!


誰か助けて!


そう、思った時、


あーん♡


と聞こえた。宙は、パニックだ。


とりあえず、勇気を出して中を見てみよう!


隣の空いていたトイレに入り、便器をよじ登り、上にある隙間に手をかけると、そーっと中の様子を見た。


オバケの目が出てきませんように!


中では、おばさんとおじさんが裸になっていた。


なんだ!おもらしをしちゃったんだな!だから、恥ずかしくて。出てこれないんだ!


そう、思っていたのだが、おじさんがおばさんの上に乗っかり、イジメだした。


宙はパニックだ。


しかし、おばさんは気持ち良い~♡


と言っている。


これが、トラウマになり、宙はしばらく母とは、お風呂には入れなくなった。


そして、おじさんとおばさんが帰ってからは、泣きながら砂場で遊んでいる所を警察の人に連れ帰ってもらった。


宙ー!宙ー!


誰かが呼んでいる。

はっ!妻だ!


バサッと布団をめくり起き上がった宙は妻をそっと見た。


大丈夫?

凄く、うなされてたよ?


妻が、そっと宙を抱きしめた。


時は、まだ夜中の2時であった。


雷雲は唸りを上げて雲の中で、ゴロゴロと鳴り響いていた。


ごめん!変な夢を見て。


大丈夫?


妻が身体を寄せてきた。


うわっ!

宙は思わず、身を引いてしまった。


ね、何があったの?大きい声を出すと子供達が起きちゃうよ?


うん。実は俺、女性が怖くて。でも、明美にだけは何とか慣れよう。って頑張れて今があるんだ。黙っててごめん。


理由は聞いても良い?


うん。でも明日にしよう。寝なきゃ。


分かった。


雷雲は一撃の落雷を落とすと再び雨雲へと変化した。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る