第3話 雨が降った日
いつものバスの時間に珍しく乗り遅れた宙は、仕方なく、その日、歩いて帰った。
歩いてみると、いつもバスから見える景色がゆっくりと走馬灯のように流れていく。
そんな寂しさもあったのか、宙は珍しく1件の居酒屋へと入っていった。
そこは1人飲みが出来るカウンターと、相席が出来る机と椅子。が置いてあり、内装は少し汚れて古くさく照明もどちらかと言えば暗い、良く言えば落ち着くイメージの居酒屋だった。
そんな場所で1杯だけ飲んで、休憩をしたら、すぐに出よう。
そう、宙は考えていた。
その時の時刻はまだ夜の9:00頃であった。
1人の宙はカウンター席を狙っていたのだが、その日はカウンターは埋まっていて仕方なく相席の方へ座った。
1杯のビールと一串の焼き鳥を注文して、暇だった宙は、妻にメールを送った。
今日は、バスに乗り遅れちゃって!歩いて帰ってるんだよ~
だから、帰るのが遅くなる。
と。
すると、そこへ1人の女性が声をかけてきた。
ここ、良いですか?どこも、空いてなくて。
宙が店内を見渡すと、いつの間にか人で溢れていたので、仕方ない。といった感じで
どうぞ。
と一言、行った。
そして見上げると、
その女性は、白衣を着ていた。
白衣なのに、居酒屋?
宙は不思議な違和感と衝撃を受けた。
しかし、まぁ医者だって飲むよね。人間だし。くらいで流す事にした。
そして宙は、最後の1滴を飲み干すと、お勘定をして、すぐに店を出た。
帰宅した宙は妻に温かく出迎えられた。
おかえり♪
大変だったねー?お腹は空いてる?
一応、途中で休憩をしたからさ、焼き鳥を1本だけ食べたけど、お腹は空いてるよ。
じゃ、まだあるから、食べて。
うん。ありがとう。
子供もかけよってきた。
お父さん、おかえりー
ただいま♪
子供の顔を見て、宙はなぜか安心をしたが、なぜか、脳裏にあの白衣姿の女がチラついていた。
宙の中で静かに雨は降り始めてきたのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます