第34話 旅の記録1
一番最初に訪れる場所として選ばれたのは隣国のグナイ王国である。この国を選んだ理由は王女と会ったときにこの国以外で聞いた名前だからだ。それにこの国はファロー王国と友好的な関係を築いていることも知っている。
「よかったのか?最初に行く場所がグナイ王国で。もっと別の場所だってあったのに」
「別にいいわ。ここはそのうち行きたかったからね。空を飛んで行った方が早いんだけどまぁ魔法の修行にも魔力を使わないといけないからね。徒歩でゆっくりと行きましょう」
俺も魔道具を使い空を飛べば早く行くことはできるが、俺の魔力量が少ないのに加えて毎日特訓で魔力を使っているのだから余裕はない。だがおかげで簡単な火魔法を扱えるようになった。もちろん戦闘で使えるレベルではないが。
「お前には色々勝てねぇわ。これから1か月、よろしく頼むぜ」
「な、なによ急に。まぁこちらこそよろしく」
そうしてゆっくり楽しみながら俺達はグナイ王国へと進んでいく。途中王女が魔物に襲われた地点を通過する。その場所では調査が行われていた。そこには例の副団長がいて俺達を見つけるや否やこちらへ向かって走ってきた。逃げたいが逃げるわけにもいかないので仕方なく対応する。
「いやー、またお会いしてしまいましたな。国王より色々聞きました。国を助けてもらったこと本当に感謝します。そして以前村で会っていたということも」
「いやー、お恥ずかしい・・・」
「あの村で騎士団に対して嘘をついたことも本来であれば重罪になりますが、今回は許しましょう。貴方達の置かれていた状況、陛下から教えていただきました。私共としては貴方達を助けれなかったこと、そしてこのような事態を防げなかったことを大変重く・・・」
話が長くなりそうだなぁと思っているとサラがそれを遮ってくれた。ナイス。
「あー、それくらいで。私達はグナイ王国へ観光に向かっているのであまりここで時間を取られると困ってしまいます」
「なんと、グナイ王国へですか?あの国の観光名所と言えば水の都とも言われる首都にある巨大な噴水、河川が多い景観とマッチしていてまさに水の都と言ったものを存分に味わえます」
「ありがとう。とても参考になったわ。首都ねぇ、まぁ結構有名だから当然っちゃ当然ね。だけど余計に行ってみたくなったわ」
俺達は副団長に礼をしてその場を去る。まぁ色々あったけど普通はいい人だよな。
俺達は時に野宿を、時に村で泊まりながらグナイ王国へと進んでいった。そして国境へとたどり着く。
「これを見せりゃ一発って話だけどやっぱり初めてだと緊張するな」
「私はこれが偽物って疑われることのほうが怖いわ・・・」
理由は違うが緊張することに変わりはない。そして俺達の番が訪れる。
「はい、入国許可証もしくはそれに準ずるものを提示お願いします・・・ん?君達、これは・・・失礼しました。どうぞお通りください」
以前衛兵に見せたときと言い、王様が直接渡してくれたものの効力はすごい。下手したらこの大陸内ならどこでもいけるんじゃないか?
「いやー、すごい。本当に王様が直接くれるものってすごいな。なにはともあれこれでファロー王国とは一旦お別れだ。思えば今までの騒動、この国の中での出来事だったんだよな。この国が広いんだかこの大陸が狭いんだか・・・」
「まぁ実際広いからね。今から行くグナイ王国は2か月もあればほとんどの街を回れるけどファロー王国だと半年はかかるわ」
「へぇー、地図で見た限りだと広さはそんなに変わらない感じがしたけどな」
「人が住める範囲がファロー王国よりも少ないの。人間が安定して住める環境があるのは半分くらいってとこかしらね」
なるほどねぇ、確かにファロー王国は森はある程度あったとはいえ高い山や砂漠などはなく、比較的平坦な土地が広がっていたなぁ。
だらだらと話しながらグナイ王国首都めがけて進んでいく。途中魔物と遭遇することもあったがファロー王国内と大して変わらなかった。まぁ、魔の森以外はそんなに魔物の強さって変わらないんだろうな。
国境を越えてから3日、俺達はグナイ王国首都パーヤムへとたどり着く。街に入る前から何度も橋を渡らなければならなかった。流石水の都と言ったところだ。
「思ってたよりきれいな街ね。規模はサードゥ以上王都未満といったところかしら。さ、この国に来てからまともな街にも寄らずにここに最優先で来たのよ。ぼーっとしてる時間なんて一秒もないんだからね」
ここに来るまで寄ろうと思えば2つくらい大きめの街はあった。だが1か月という期限がある以上あまり悠長にしていられない。もちろんそれが終われば自由なんだが。
「確かに、ここに来るまでに10日もかかってしまったからな。ここは2日くらいの滞在にするか」
「そうね、じゃあ行きましょう」
この2日間どこをまわったかなんて言いきれない。とにかく起きている間ひたすら巡り続けた。宿に帰った時はもうへとへとですぐに寝てしまうくらい。でも、それが楽しかった。この世界への希望は膨らむばかりである。
あっという間に2日が経つ。最後に副団長の言ってた噴水を見てこの街を後にする。確かにこの街を表していると言える巨大な噴水に見とれてしまった。いや、本当に見に来てよかった。
サラの方をちらりと見ると彼女も感動しているようだ。まぁ初めてこれを見て感動しないやつはいないよな。
「ちょっと、なに?噴水より私に見とれたんですか?」
気づかれてしまった。そんな勘違いされるのは困るが。
「いや、どっちが綺麗とかは・・・。来てよかったって思っただけさ」
「ふーん、まぁそれには賛成ね」
余韻に浸りながらバーヤムの街を後にする。機会があればまた来たいな、そう思える街だった。
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