第30話 王都防衛戦
魔法が展開され、辺り一面土煙に覆われる。毎回のことでもう慣れっこだ。こうなることが多いならこの状況で敵の位置とかわかればもっと戦いを有利に進めれるな。この戦いが終わったら聞いてみるか。
「な、なんだ今の爆発は。こんな魔法使いさっきまでいなかったぞ」
「やっぱりあいつらが来てるんすよ。このままじゃまずい」
(どんだけ魔族のやつらにビビられてるんだ俺達)
何はともあれ魔族達が混乱しているのはいいことである。俺はその隙を逃さず魔族へ斬りかかり、3人ほど戦闘不能にした。
俺の働きに鼓舞されたのだろうか、さっきまで絶望的だった騎士達の士気も戻っていて俺のいない場所でも戦線を押し戻しつつあった。
そして1時間ほど魔族、魔物との戦闘は続く。状況は一進一退だったが、魔族側は俺の顔も見たくないのだろう俺との戦闘は徹底的に避けられていた。
(俺がいるところは安全って意味では俺がここに来た意味はあるんだろうがなんか違うよなぁ)
俺から逃げるだけでは王女の魔法に狙われてしまうため、魔族側にとってはどう見ても不利だ。だがここで撤退してしまっては他の戦場に俺達が向かってしまう。途中から北東の戦場を突破することは諦め、俺達の足止めに切り替えたようだ。
俺はまともにやり合ってくれない魔族を相手を追いかける。中々距離を詰めさせてくれない魔族にイライラが溜まってくる。しかし、追っていたはずの魔族が急に倒れた。それも魔法による攻撃ではなく何かで斬られたようだ。何事かと周囲を見渡すとギュンターがそこにいた。
「ギュンターさん、来てくれたんだな。てことは」
振り返るとサラが手を振っている。全く、戦場というのに呑気なやつだ。まぁここにいる4人が居れば負ける気はしないけどな。
「・・・ここを片付けてさっさと他の場所も加勢に行くぞ」
ギュンターさんと俺が魔族をかき乱し、後方から2人の魔法で援護する。俺とは違って2人の強化魔法を受けれるギュンターさんの動きは目で追うのがやっとといった速さだ。こんなの相手にされる方はたまったもんじゃないな。
俺もそんなに遅い方ではないのだが前衛が1人の関係で俺より早い相手をする場合にはどうしても後手に回ってしまうことがあったがその弱点を彼は見事にカバーしている。
2人が来てからは一方的だった。10分も経たないうちに魔族も魔物も誰一人として立っていない。まぁ俺達が来て五分だったわけだから当然か。
「いやー、ギュンターさん。滅茶苦茶強いね。これなら残りの戦場もすぐ終わっちゃうね」
「ふん、俺だけなら流石に多勢に無勢すぎる。お前ら3人が居なければここまで早くは片付けれなかったよ」
「なんだか、思ったよりしゃべるんだな。もっと用心棒って寡黙な感じ想像してたんだけど」
「あれはあの場でベラベラしゃべるわけにはいかないだろう」
「た、確かに・・・とにかく、一旦指揮官に報告して次の戦場へと行こう」
指揮官は俺達が来る前に報告を聞いたのだろう。俺達が部屋に入ろうとする直前に部屋から出て外の状況を見に行ってしまった。追いかけようかと思ったがすぐに戻ってきたため安堵する。まぁあの状況から敵を全滅させましたなんて報告されても信じれるわけがないからな。
「君達のおかげでこの北東側の城壁は守られた。ありがとう。この褒美は・・・」
「それは嬉しいですがまだ戦いは終わってません。残りの戦場の助けに行きたいです」
「む?そうか?しかし、君達も疲れているだろう。ここで君達に無理をされる方が困るんだがね。まだ元気というなら北側のほうが苦戦していると聞くから向かってくれないか。おそらく西側はどうにでもなる」
「わかりました。でも先程みたいに説明するのも面倒ですね。誰か説明役として同行してくれませんか?」
「では私が行くとしよう。おい、俺がいない間頼むぞ。すぐ戻るから」
俺達は北側へと向かう。今度は同行者の説明もあり、すんなりと戦場へ入る。北側の戦力は北東の8割といったところだったので30分程で壊滅してしまう。
後ろで見ていた指揮官は俺達の戦いぶりを見て唖然としていた。まぁそりゃそうか。これほど無双という言葉が似合うことはない。そんな戦いぶりを4人がしていた。
北側での戦いを終えて一息つき、指揮官にこの後の行動について話す。
「次もすぐ行きたいところだけど流石に疲れた。今の戦力を集めれば何とでもなるだろう?」
「まぁ、そうですね。私としては貴方達に戦ってもらった方が被害が少なくなって助かりますけどここまでしてくださったのにこれ以上望んではばちが当たります。どうかゆっくりとしてください」
流石に魔族や魔物を相手にし続けるのは疲れる。それは俺だけじゃなく他の4人も同じだ。うとうととし始めてきたころ、急に部屋の扉が開かれる。
「急報、現在交戦中の西側の城壁付近に魔族が襲来。こちらの攻撃を全く寄せ付けず一気に劣勢になっているとのことです」
「あいつか、やはり生きていたんだな」
「俺の攻撃が必要と言っていた奴か?ユウタ殿には届かなかったこの刃、奴に届くのかどうか試してみよう」
「よーし、今度こそやっつけるんだから」
「えぇ、行きましょう」
「なんだお前ら?もしかしてあの魔族と戦ったことがあるのか?まぁどちらでもいい。今は君達の力が必要なんだ」
西側の城壁の外へと向かう俺達、暴れまわっている魔族は一人だが、誰もそれを抑えれない。まさに蹂躙という光景がそこにあった。
「全軍に伝令、あの魔族をこの方たちが引き付けるから撤収」
号令は戦場全体に響き渡る。魔族は音の発生源に気付いたようでニヤリとする。
「やはりここにいたか。前回はよくわかんねぇ横槍が入ったが今回はそうはいかねぇ」
俺達は前へと進んでいき、魔族と対面する。お互いに負けられない戦いが今、始まる。
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