第29話 反撃開始
王女に起こされた俺は慌てて戦闘態勢を取ろうとする。
「そんなに焦らなくてもいいわ。慌てなくてもすぐには閉じないのはあなたも知っているでしょう?それに無事に王都の近くまでついたそうよ」
サラが外で俺達の方を睨んでいる。なんでこんなに機嫌が悪いのかと思ったが王女との距離が近すぎるからということにすぐ気づく。でも一々そこには触れてはあげない。
「ありがとう。サラのおかげで無事に王都まで来れたよ」
「ふーんだ、マリー様といちゃいちゃでもしてたんでしょ。私なんかどうせ大した女じゃないですよーだ」
「それくらいにしてくれ・・・この件が終わったらしばらく2人でゆっくりすればいい」
「ほんと?約束だからね」
「あんたらにとって私って何なのよ・・・」
「さて、この話はいったん終わりだ。周囲の状況をわかっている範囲で教えてくれないか?」
「マリー様の予想通り魔物達の大群と魔族は王都へ向かっていたわ。そして攻撃はもう始まっている。今は持ちこたえているけどいつまで持つかはわからない。まぁ王都の中に入ったわけじゃないからどれくらい余裕があるかなんてわかんないんだけどね」
「報告ありがとう。ではここからの動きを言うわ。まずサラにはスラムに行ってもらってギュンターさんの力が必要なことを説明して私達と合流する。私達は王都の周りにいる魔物や魔族をできる限り減らす。これでどうかしら」
俺とサラは頷き、再開した直後だがまた二手に別れた。
王都の周りはひどい乱戦だった。魔物だけでなく兵士たちがそこら中に倒れていた。流石に王都といったところで魔物側もそれなりの被害が出ているようだった。思ったより善戦できていると思った。
「いや、ここには魔族の姿はない。それでこの程度なら他はもっと苦戦しているでしょう。さっさとこの辺りの魔物を片付けて他を助けに行くわよ」
俺達は魔物に対して攻撃を仕掛ける。予想外の方向からの攻撃に魔物達はあっという間にやられていく。そして俺達の存在に気を取られた魔物に対して好機と見た兵士たちが突撃し、この辺りでの戦闘は終わった。
「助かったよ、君達は・・いや、今はそれどころじゃない。もっと苦戦している場所があるんだ。もしよければ加勢に来てほしいんだが」
「そのために来たんだ。さっさと教えてくれ」
俺達を案内している兵士によると王都への魔物の襲撃は大きく分けて4つの戦場からなっているそうだ。今俺達が戦ったのは南側でここは一番規模が小さいらしい。北、北西、西の戦場は魔族の姿も確認されていてかなり苦戦しているようだ。
「このまま王都の周りを移動して横から奇襲を仕掛けていくか王都内に入ってヤバそうなところから行くか・・・どっちがいいんだ?」
「難しいわね。そこの貴方、この状況に詳しそうだからどちらがいいと思うか教えて頂戴」
「先程の戦いぶりを見る限り魔族にも引けを取らないと見た。それなら北東の戦場に向かってもらいたい。騎士団の者が対応しているがなにせ魔族の者が多くて苦戦しているようだ」
「わかったわ。ありがとう。それと1つお願いがあるんだけど私達を探している少女がいたら私達がどこで戦っているか教えて欲しいの」
「それくらいお安い御用だ。ではご武運を」
俺達は王都へと入り、北東の方角へと進んでいく。街の中とはいえ所々火の手が上がっていてたまに魔物の姿すらある。既に攻撃が始まってから時間が経っているのだろう。非難に遅れている住人などはいないようだった。
「流石に敵側のスパイは攻撃があるってわかったら先に逃げるよねぇ。それか口封じに殺されているかどっちかかな」
「物騒だな、まぁ俺でもそうするかな。お、段々と戦いの音が聞こえてきたぞ。戦闘準備!」
俺達は城壁の前にたどり着く。後ろの方で待機していた兵士達は俺達に気付きこちらへ向かって来る。
「君達、ここは戦場だ。逃げ遅れたのならさっさと非難しなさい。それともその恰好・・・魔物達と戦ってくれるのか?その心意気は嬉しいが我々騎士団でも手こずっているのだ。比較的楽な南側に行って彼らを助けてくれないか?」
「いや、俺達南側の魔物を全滅させたからこっちに来たんです。この状況に詳しい人に北東側が一番危ないって言われたから来ました」
「なに?そうだったのか。これは失礼した。ささ、こちらへ」
俺達は指揮官のいる場所へと通される。戦況が思わしくないのかみんな忙しそうだ。
「副団長、援軍です。南側の戦闘が終了したためこちらへ人員を回してくれたようです」
「なに、それはありがたい。・・・ん?君たちはどこかで」
(この人あの村であった人だ。思い出される前にさっさとこの場を離れよう)
「さ、早く案内してくれ。前線の負担を少しでも減らしてやりたいんだ」
「そうか。ではこちらに。この先に前線の状況を教えてくれるものがいるはずだから詳しい話はそこで。それにしても君達やっぱりどこかで・・・いや、今はあとだな」
案内された場所は負傷した者で溢れていた。王女の回復魔法を使えばある程度の治療はできるだろうが根本を断たなければ焼け石に水だ。俺達は奥へ進み、指揮官と対面する。
「来てくれてありがとう。ここはごらんのありさまでね。少しゆっくりしてくれといいたいところなんだが今すぐにでも戦場へ向かってくれ。正直ここはもう長く持たないかもしれない。だが最期まで諦めるつもりはない。私も戻らないといけない場所があるんでね・・っと話が逸れたね。では頼む」
魔法と血飛沫の飛び交う戦場へと俺達は進んでいく。確かに戦場に残っている者ですらどこかしらに傷を負っている。魔族達が戦闘に加わるだけで戦場の厳しさは天と地といったところだ。
「よし、一発デカいの頼む。それまで俺が引き付ける。いつものやつだな」
「はいはい、油断はしないでよね」
俺は1人前線から突出し、魔族や魔物達の攻撃を半分程度引き受ける。前へと歩き続ける俺に対して止める声や呆れの声も聞こえてきたが気にしない。これが俺のこの場でできる最大限の仕事だからだ。
俺に対して攻撃を続けていた魔族や魔物だが俺が倒れる気配がないことに気付く。
「おい、こいつもしかして・・・」
「いや、ありえん。この距離を3日で来れるわけが・・・」
魔族どもめ、焦っているな。・・・そろそろ魔法の準備ができたようだ。後ろから大規模な魔法の発動を感じる。
「さぁて、反撃開始だ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます