第26話 強敵との戦い
魔族の男はこちらへゆっくり近づいてきている。魔法使いがいるというのが分かっているのに余裕そうだ。俺達は不気味に思ったがこの隙を逃すものかと魔法で攻撃を加える。
(これで終わってくれれば楽なんだが・・・)
その望みはすぐに絶たれる。砂煙が落ち着いてくると徐々に魔族の姿が露わになる。しかもあの攻撃を受けたというのに笑っている。
「くくく、なるほどなぁ。これなら魔物達が手も足も出なかったってのは納得だ。だが、俺には全然効かねぇんだよ。次はこちらから行くぞ」
魔族の男は魔法の準備を始めだす。当然隙だらけなので俺は距離を詰めて剣を振り下ろす。確実に捉えたはずの一撃・・・だったが弾かれる。こんな事初めてだ。
「あめぇんだよ。これでもくらえ」
至近距離で魔法が直撃する。2人に劣らない威力の魔法だったがそれでは俺には効かない。
「・・・なるほど。お前も俺と"同じ"ってわけか。そして後ろの2人とお前、これが魔物達を襲ってた奴の正体だ。だが俺とお前に攻撃は効かないが後ろの2人はどうかな?」
「そういうことは俺を地にひれ伏せてから言うんだな」
2人の支援の下、俺は魔族の男を2人に近づけさせないように気を付けながら戦いを進める。手数の面でこちらが後れを取るようなことはないがキリがない。
お互いに有効打のないまま戦闘が続いていく。しかし、魔族はなぜか余裕そうだ。謎は解決することはなく延々と応酬が続く。
「このままやってても仕方ねぇなぁ。俺としてはここでお前らを倒したいがそれはできないようだ。お前らも同じだろう?仕切り直しとしようじゃないか」
その提案はまずい。今回の戦闘で俺達は手の内を明かし過ぎている。この情報を持って帰られて共有された場合のリスクを考えるとこの場で仕留めるほかない。だが、この魔族の言うことももっともであるため非常に難しい選択を迫られることになった。
「いや、ここでお前を倒す。お前の魔力が尽きてしまえば俺達がお前の命を取ることはできなくても無力化することくらいはできるだろう」
「ふん、それはお前らも同じだろう?後ろの2人は魔力を先の戦闘でも使っているはず。その分まで考えると2人で戦っているとはいえそこまで有利とは言えないだろう。それでも続けるというなら構わないが」
「構わない、お前みたいな奴と何度も戦いたくないんだよ」
戦闘が再開されようとしていた時、時空に亀裂が走る。この現象には王女とサラ含め魔族の男までも動揺していた。
直後、見慣れた斬撃が俺と魔族めがけて飛んでくる。俺は何度も見た斬撃なのでギリギリのところで躱すが、魔族の男は直撃を許してしまう。
あれほど余裕そうだった魔族の男が、斬撃が直撃したことにより苦しんでいる。それもそのはずだ。俺だってあの斬撃には相当苦しめられた。
「馬鹿な・・・き、貴様なにをやった?」
「いや、俺にもわからん。俺の方にも飛んできたのはお前も見ただろ?」
「く、不覚。こんな邪魔さえ入らなければ・・・」
魔族の男はそう言うと気を失ってしまった。でもあの攻撃仮に直撃したとしても俺は多分大丈夫だった。もしかしたら奴は攻撃を完全には無効にできていなかったのかもな。
「なんだったのあの攻撃は・・・軌道を読み切ってたようだしユウタ、何か知っているわね。後で聞かせてもらうわ。それよりもここで倒れている魔族だけど」
そう言って気絶している魔族の方を見る。結果はどうあれ俺達が最後に立っていたのだから勝ちだ。
「とりあえず縛っておくか?でも目を覚ましたらまた襲ってきそうだしどうしようか。魔族を捕らえたままにすることってできるんか?」
「この前衛兵に突き出したような弱い奴ならともかくこいつはちょっと手に負えないわね。放っておくしかないかしら・・・今の私達じゃ倒すのは無理だからしばらく動けないようにだけしておきましょう。サラも手伝って」
王女はそう言うと魔族の上に巨大な岩を大量に落とし続けた。サラもそれを見て岩を落とす。魔族のいた場所には小さな山ができた。息ができない様に水で顔を覆うなどの方法を取ってもよかったが魔族が途中で気づいたとき今度は俺に対して有効な攻撃とみなされる可能性もあったので今は暫定的な措置にした。
「もう魔力残ってないわ。でもこれでしばらくは出てこれないと思う。次戦う時までに何か手を打たないといけないわね・・・」
「私ももうだめぇ。どこかで休みましょ。ここから離れたところで安全なとこ!」
「こいつ俺には少し至らなかったが相当な防御力を持ってるな。横槍が入らなければ正直危なかった。魔族の方の魔力がどれくらい残っていたかはわからないが2人の魔力の残りはどれくらいだったんだ?」
「うーん、そんなに残ってなかった。今積み上げた岩を動かせるだけしか残ってなかったと言ってもわかりにくいかしら。あのまま行けば20分くらいで尽きていたってところかしらね」
「私もそんな感じですー」
「そうなのか。勢いで戦闘続ける発言したけど結構危なかったのか?」
「それは何とも言えないわね。魔族の方から提案してきたあたり向こうも尽きかけてたかもしれないしそうでもないかもしれない。あまり考えても仕方ないわ。今回の戦闘で分かったことはお互いに手詰まりだった。それだけね。さぁ、この場を離れましょう。そしてあの事聞かせてもらうわよ」
俺達はこの場を離れ、適当な場所に移動する。そして食事の準備をした後、先程の件について話す。
「俺が別の世界から来たってのは2人とも知っているはずだ。俺はそこで主人公と言われていた奴に毎日のようにあの斬撃で斬られてぶっ飛ばされていたんだ。まぁ、その斬撃を受け続けた結果今の身体になったんだがな。だからあの斬撃を見たとき、本能で軌道が分かってしまったんだ。前の世界ではもっと接近された状態で斬撃を撃たれてたから躱せなかったんだが今回はある程度距離があったから上手く躱せたってわけだ。だけど・・・」
「問題はそこじゃないってことね。なんで別の世界の人物の攻撃がここに飛んできたかってことよね」
「そうだ。だが考えても仕方ねぇ。今の問題はあいつをどうやって倒すかと残りの拠点をどうやって潰すか。これ以外のおことは一旦置いておこう」
何はともあれ拠点を1つ潰したことには変わりない。残りは2つ。懸念点もあるがこのまま突き進んでいこう。
将軍Ⅱの世界 フィールド11
「おい、今の俺の攻撃途中で消えたぞ、お前も見たか?」
「はいっ、確かに攻撃が途中で消えたように見えました」
「そうか、これはあいつが消えたことと何か関係があるかもしれない。すぐにさっきの一撃について調べさせろ」
「承知しました」
まさか自分の放った一撃がユウタを助けることになったとは思っていないだろう。だが、この一撃はこの世界とユウタのいる世界、2つの世界を繋げる研究をするのに十分すぎるデータが取れたのだった。
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