第25話 魔法無双
翌日、俺達はまず森を出てそこから一番近い拠点に向かうことにした。今回たまたま入った森はそこそこ広く、しかも昨日薄暗くなった辺りで彷徨ったため正確な位置はわからない。なのでまずは森を出てみないことには正確な現在位置が分からないのだ。
途中で魔物と遭遇したりしたが、無事に森は抜けることができた。しかし、辺りに目印になるものは見当たらず、現在地が分かるまでに時間を要した。そうこうしているうちに昼過ぎになっていた。
「さて、次に向かう地点だけどここ。たまたま出たところが結構近くだったのは幸いね。昨日の今日でイライラしてるからさっさと潰しに行きたいわ」
「私も魔族も魔物も蹴散らしてやりたいからさっさと行くことには賛成ー」
「・・俺はいいけどよ。常に冷静でいないと足元掬われるかもしれないぞ。向こうも何かしら対策してくるだろうから気をつけろよ」
少し不安はあったが作戦を多少立てたとしても魔族や魔物が急に強くなることはない。最終的にそう主張する2人に押し切られてしまった。
次の日には印の地点の近くにたどり着く。最初は不安だったが今までと同じ様に魔物の規模と配置を偵察して作戦を練ったので安心する。流石に取り逃がすようなことがあれば余計に時間がかかってしまうため当然と言えば当然の判断である。
「魔法によって一気に殲滅されることを嫌ってかあまり密集させ過ぎないようにしているわね。魔物側の偵察部隊はあまり見なかったけどこれだけ広範囲に展開していると偵察する範囲も相当広くなるからかしら?本意ではないけど多少取り逃がすのは覚悟するしかないわね」
「今のままならそうかもしれないけど魔物達に動いてもらうってのはできないか?最初の攻撃で密集せざるを得ない状態にしてしまえば前回と同じように行けると思うけど」
「そうねぇ、やはり前言っていた魔石に魔法を入れる方法を取るしかないのかしら。それなら最大5発、準備なしに撃てるから誘導させることはおそらくできるはず。周囲に爆発を起こして1か所に誘導して最後に私達がそこに対して打ち込めば理論上はいけそうね」
「それをやるなら少なくとも今日は準備に専念しないとだめだわ。その間魔物達が移動しない保証もないけどそれでもやる?」
「俺としては結果的にそっちの方が早く片付きそうだからそれがいいな。もちろん2人ありきなんで嫌なら仕方ないが」
「まぁ無暗に突っ込むよりはいいでしょう」
「私もー、それに慌てふためく魔族の姿も見たいしそうしましょー」
「じゃあ2人は準備してくれ。俺は魔物達が動き出さないか監視を続ける。明日の作戦開始までの間常にだれか監視している状況は作りたいから2人にも交代でお願いする」
そうして明日の魔物殲滅の作戦に向けて俺達は準備を開始した。それにしても魔物達をここまで大群で1か所にとどまらせ続けているのはなぜだろうか。今までなら魔物が倒される心配はほぼなかったはずなのでまだわかる。しかし、今は俺達に狙われるというリスクがあることを向こう側もわかっているはずだ。
もしかしたらこの間倒した魔族、あれは俺達が思っているよりもずっと強い存在だったのだろうか?戦力を分散していては勝てない。そう判断されているなら魔法の攻撃で全滅はしないが各部隊間で連携の取れる程度の距離に配置しているという点も納得できる。
(まぁ、ここで考えても仕方ないな。今はここに魔物の大群がいる。これだけで十分だ)
その後、交代をしたりして各々十分とは言えないまでも休みを取りながら戦闘準備を整える。この間もずっと魔物達に大きな動きはなかった。
「なんと言うか・・・こっちから来るのを待っているようにも見えるよねー」
「その可能性はあるわね。誘導のために全部の魔石を使おうかと思ったけど1つは残しておこうかしら。流石にこれで終わりってことはないでしょうし」
「じゃあ行くぞ、今から30分後に俺が魔法を起動させるのが合図だ。その後は手はず通りで。今回はそうだな、上手くいったときは魔物を倒すからいいが上手くいかなかったときは・・・そうだな、ここに集まることにしよう。今回は収納魔法を使う余裕もないからな」
こうして俺達は配置に着き、約束の時間に行動を開始した。
俺は魔石を叩き、魔法を起動させる。いつもなら収納魔法が発動されるが今度は違う。すさまじい量の魔力が渦巻き、前方100メートル程先の地点を中心に爆発が起こる。
その爆発の直後、別の個所からも同様に爆発音が聞こえてくる。打ち合わせ通り合計4回の爆発音が鳴ったことを確認し、俺はその場を離れる。
爆風により周囲の様子を確認することはできなかったが少なくともこちらに向かって来ている個体はいないようだった。
そして、1分も経たないうちに4つの爆発地点の真ん中あたりめがけて魔法が展開される。ここまでは計画通りだ。何度も見た爆発後の荒れた土地に向かって進んでいく。魔物の死骸が大量に転がっているが魔族らしき者は見つからない。
「ここには魔族がいなかったのか?それならそれでいいんだけど・・・」
「うーん、それにしてはなんか引っかかるのよね。まるで私達を試しているみたいに」
「2人とも、誰かいるよ」
俺達が振り返ると魔族と思われる男が3人いた。3人は警戒しているのか遠くにいて近づいてこようとはして来ない。なにやら話し合っているらしいがここまで聞こえてこない。
「いつか仕掛けてくると思って待ってましたが・・・なるほど、1回目の爆発で1か所に魔物を集めて本命の2回目で殲滅ですか。実によくできた作戦だ。しかし、妙ですね。この作戦には少なくとも4人の魔法使い、それも相当の魔力量を有する者が必要です。貴方達の他にも誰か伏兵がいるのでしょうか?これではますます手を出しにくいですね」
「あの男はあまり魔力を持ってないようだがあいつがいたと思われる場所の辺りでも爆発があったから益々謎が増えてしまった。とりあえずこの情報を持って帰らないと」
話し終えたらしい魔族はこちらに近づいてこようとはせずにどこかへと行ってしまった。前の時もそうだったが完全に戦ったらだめなやつって思われてるな。
魔族が遠ざかっていったと思ったが別の方向からとても強い殺気を感じ、思わず振り返る。2人も同じものを感じ取ったらしくすぐに戦闘態勢を取っていた。
「なんだぁ?すごい爆発音がしたから来てみたらここに会ったいろんなもんが無くなってるじゃねぇか。お前らの仕業だな?そういえば近頃俺達の邪魔をしてるって顔もこんなのだったな。ここで会えるとは幸運だ。ここでお前ら諸共殺してやるよ」
こないだ戦った魔族などと比べ物にならない。ただただこいつはヤバい。
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