第13.5話 王の戦い

ファロー王国王座の間



「報告、各地で魔物の被害が増えているとのことです。既に魔物の討伐に対して賞金を出したり各街や村に対して防護柵の設置を推進してはいますが完全には防げていないようです」


最近、いや我が娘への襲撃後から魔物のによる被害が連日のように報告されている。対魔物に全力を出すことで何とか持ちこたえてはいるがいつ崩壊してもおかしくない。それほど強力な魔物達が多数報告されているとのことだから頭を抱えずにはいられない。


「軍の予備を使っても構わん。事態の収束に全力を出せ」


ジャックは側近へ命令を出す。威勢よく言ってはいるものの疲れを隠せない。


「王様、少し休まれては・・・」


「この事態が収まるまではそうはいかん。兵の指揮へ影響が出てしまっては長引いてしまうかもしれん。この間条約を結んだグナイ王国からの援軍が来れば少しは楽になるだろう」


王女が戻っては来なかったとはいえグナイ王国との間でどちらかが魔物又は魔族による襲撃があった際にお互いに助けるという条約を結んだ。今回の魔物の襲撃はタイミングが良すぎるためおそらく人間側の団結を良しとしない魔族の仕業と考えられる。


(マリーがいればこの事態も早く収拾させれたかもしれないのにまったく、どうしてこうなってしまったのか)


マリーは王国内で有数の魔法使いだった。当然狙われるリスクもあるため、今回の会談に代表として向かわせることにリスクはあった。それでも彼女を向かわせたのは条約を結ぶ際に魔術を使ってお互いに約束を違わぬようにするためだ。この魔術は魔力の消費が大きく、普通の魔法使いでは使用することができない。空いている魔法使いが手配できなかったため娘が向かうしかなかったのだ。


(会談は非公式にしていたはずなのにどこから情報が漏れた?我が国かグナイ側かはたまた別の所からか。いずれにせよ調べないといけないな)


「娘の捜索は撃ち切る。これから儂の言うことをしてもらいたい」


ジャックは声を小さくして側近へ耳打ちする。


「いいのですか?まだ諦めるには早いかと」


「重要度の問題だ。仮に今生きているならこれからもなんとかするだろう。それよりもだ、今回の会談の情報がどこから漏れたか極秘に捜査してほしい。ただし、名目上は娘の操作は続いていることにする」


まずは敵への内通者を見つけないことにはこちらに勝機はない。見えない敵との戦いが始まった。

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