第13話 最適な練習相手
数日後、俺達は魔の森へ再び足を踏み入れた。サラは初めてだったので最初は結構怖がっていたが、何度か戦闘を繰り返すうちに自信をつけたのか徐々にいつもの調子に戻っていった。
「それにしても貴方はやっぱりおかしいわ。魔の森の魔物相手にタイマン張れちゃうんだから」
2人の少女は俺の戦いっぷりを見て呆れている。サラはわかるが王女は何度も見てるから違うだろぉと言いたくなる。
「さて、次からは色々な連携を試すわよ」
次の魔物をサラが発見する。俺は事前の打ち合わせ通り自身に強化魔法をかけて熊のような魔物に向かう。俺が魔物に接近するより少し早く支援魔法が当たり魔物が怯む。その隙に俺は一太刀浴びせる。しかし、致命傷にはならなかったようで再び距離を取る。
ここで予想外のことが起きる。俺から見て反対側にもう1体同種の魔物が現れた。俺が前衛ができないとすぐに接近されてしまうがここで王女は秘密兵器を使う。普段収納魔法を保存している魔石に攻撃魔法を入れておいたのだ。魔物は突然の魔法の発動に驚き、直撃を許す。威力も十分と言ったところで次の魔法を余裕を持って唱えれるだけの時間は十分稼げた。
(あと2回使えるからあっちは大丈夫そうだな)
王女一人で対処できると判断したサラは俺と対峙している魔物に向かっての攻撃を再開する。魔物としては俺の後ろから来る魔法が鬱陶しくて仕方ないが俺を無視するわけにはいかないのでジリジリと追いつめられる。しばらくは抵抗を続けたが攻撃に耐えきれずに遂に倒れた。確実に仕留めたことを確認すると王女の方を見る。王女も問題なく倒せたようだ。サラが俺と王女両方にバランスよくサポートしてくれたおかげで予想よりも早く2体同時に仕留めることができた。
「ここまで上手くいくなんて・・・やっぱりこれ存在しちゃいけない魔道具だわ」
そういいながら魔石に術式を込める。魔法使いにとっての弱点である発動までのタイムラグを消すこの魔道具はやはり破格なようだ。
「いやー、その魔石ずるいよねー。一家に一台、欲しいですなぁ」
「いやいや、これ持ってるのばれたら命狙われるレベルだってあなたもわかってるでしょ?」
「わかってますよー冗談冗談。でも戦闘用にも欲しいなぁ。1回くらいなら相手も何が起こったかわからないだろうし奥の手ってことで用意しておきたいです」
「俺はよくわかんねぇからどっちでもいいけど・・・実際戦闘中に急にこれ使ってばれるもんなのか?」
「直接魔石から魔術が出ていることが見られなければばれることはまずないわ。仮に見られたとしても1回で理解するような奴はいないと思うけど」
「そうなんか、じゃあ魔石をうっかり落とさなきゃ何とかなるってことに変わりはないな」
「それも魔石に術式を入れるなんて発想が出てこない限りは・・・うーん、考えすぎだったかしら。でも魔法の弱点を克服したい人が何かの拍子に気付かないとも限らないし・・・戦闘用には1つしか持たない。これで行きましょう」
俺もサラも王女が結論出すまでの間王女について話していた。
「時々あんな感じだけど前からああなのか?」
「たまーにね、そのうち結論出すから放っておくのが一番。そろそろ終わりそうね」
「私とサラの各1個ずつ魔石を取ることにします。収納魔法用は今まで通りで。今日は日も暮れてきたから明日にしましょう」
俺達は例の洞窟へと向かう。洞窟を出るときに王女の魔法で入り口を塞いでいたため中には誰もいなかった。まさか戻ってくる想定までしてたのか?まさかね・・・
「またここで寝泊りすることになるとはなぁ、あの布団がなかった頃は思い出したくもないよ」
「まさかここで何も敷かずに寝てたの?信じられない・・・」
「仕方ねぇだろ、俺はこの世界にこの剣1つで放り出されたんだから」
「にしても最初に来たのがこことはねぇ、あんた以外の人間なら誰かに会う前に魔物の餌だっただろうね」
前来たときは色々あってこのように雑談する雰囲気ではなかったってこともあるが一人増えるだけで賑やかになっている。こうやって賑やかな旅もいいなと思いながら段々と瞼が重くなってくるのを感じる。明日は万全の状態で向かわなければ足元を掬われる。眠気に抗わず俺は2人がしゃべっている中眠りについた。
朝起きると俺はサラと王女の間で寝ていた。2人はまだ寝ているがこの状況に混乱する。だがまもなくその理由を理解する。サラの寝相がものすごく悪いのだ。つまり俺はサラから王女を守る壁の役割をさせられていたのだ。
(こういうところもちゃっかりしてるなぁ。正直ビビってしまったから事前に言ってほしかったけど俺が先に寝てしまったのも悪いな)
俺は洞窟から出て外の空気を吸う。いい天気だなと思いながらしばらくゆっくりしていると王女がこちらへと向かってきた。
「うー、先に起きたなら言って欲しかったわ。寝起きが最悪・・・」
「寝相のことも含めて先に言って欲しかったね。次からはそうするから今日は文句なしだ」
そうこうしているうちにサラも起きてきた。ゆっくり朝食を取り、狩りの準備をする。昨日は危なげなく戦ったが毎回上手くいくとは限らないため準備はするだけした方がいい。
「よし、今日は少し奥まで行ってみるか?」
「魔石の質的にはどこでもいいけど強い魔物を相手する方が練習にはなるわね。その分リスクも大きいけど昨日の感じだとそんなに奥へ行かなければ大丈夫でしょう」
そうして俺達は森の奥へと進んでいった。魔物は徐々に強くなっている感じはあるが想定を超える魔物とは遭遇しなかった。魔の森の外から洞窟までと傾向は同じである。一番奥がどうなっているか気にならないわけではないが今の目的は俺達の戦力強化だ。王女の件が終わった後余裕があれば向かうかもしれないがその時はその時だ。
「この辺でいいでしょう。さて、明日くらいまでには魔石を集めきりたいわね」
俺達は魔の森の魔物達を相手にひたすら戦い、倒し続けた。今回は魔石を持っている魔物がなかなか現れず2つ目を手に入れるまでに狩り始めてから3日かかってしまった。少し遅くなってしまったがお互いの連携はばっちりと言えるほどにはなったので悪いことばかりではない。
洞窟へと戻り、これからの行動について3人で話し合う。
「王都へ向かうのは確定なんだけど・・・サラがいるからちょっと計画を練り直そうかしら。私は死んだことにされてそうだけどどこまで情報が広がっているかわからないから一先ず情報を集めるところからね」
情報集めに少し不安もあったがサラが一緒だと心強い。俺達は再び王都を目指して旅を再開した。
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