第12話 俺の弱点

サラが俺達の旅に同行するようになった翌日、魔物と遭遇した。とは言っても普通の魔物なので大した敵ではない。サラの実力を見るために彼女に戦ってもらうことにした。


「ちょろいわね、私を苦戦させるような魔物なんてまずいないわ」


そう言うと単身で魔物へと向かう。今回は発見が早かったこともあり、魔物達は何かする間もなくサラの魔法の前に倒れた。王女の魔法は一撃が重く威力があるといった感じだったがサラの場合はなんというか無駄がない。敵に応じて魔法の強さを調整し、できるだけ少ない魔力で倒すことに特化しているようだった。


「おぉ、マリーの魔法もすごいがサラのはすごく器用で見てる方が感動するような戦い方だ。もちろんお互いに別の戦い方もできるんだろうが・・」


そういえばあの冒険者達の魔法を使う様子を見ていないので今のところ俺の知っている魔法使いはバケモンしかいない。この世界の普通ってのを俺はいつ知ることになるんだろうか。


サラが戦闘を終えこちらへ戻ってくる。なんともなさそうな感じだ。


「こんなもんね。私の実力理解してもらえたかしら?」


「あぁ、マリーは常に戦闘に参加できるわけじゃないから非常に助かる。ところで俺の実力は疑ってはないのか?」


「魔の森の奴らに普通に勝てるんでしょ?そんなの疑う余地なんてないわ」


「さて、お互いの実力がわかったところで・・・2人や3人での連携をしっかりとれるようにしないとね」


「とは言ってもよぉ、その辺の魔物じゃあ練習にもならねぇからどうすんだ?」


「そりゃあ、魔の森の魔物しかないでしょ」


正気を疑うような提案ではあったが、俺と王女の2人でもなんとかなっていたため3人ならいい練習にはなるかもしれない。


「マリー様の提案なら賛成!」


「行くなら行くでいいけど危険なことに変わりはないぞ。それに王都へ行くのが少し遅くなるぞ」


「まぁ、それはそうなんだけど・・・王都へ行った後すぐ戦闘とかになったときにお互いのこと知っていないのはマイナスにならない?」


「ぐ・・・まぁお前が言うならいいけどよぉ」


そういうわけで魔の森へ行くことが急遽決まってしまった。


そういうわけで魔の森へ向かおうとしたときサラが俺を挑発する。


「ちょっとユウタ。貴方にいい経験させてあげたいんだけど・・・私と勝負しない?」


「いいぜ、俺の身体の強さ思い知るがいい」


「ちょ、ちょっとサラ、あいつに魔法含む攻撃は一切効かないって言わなかった?」


「魔物との戦闘の話を聞いて彼の攻略法を思いつきました。効く確証はないですがまぁ見ていてください」


俺とサラが向かい合う。


「いいのか?あの空飛ぶ魔道具使わなくても」


「そんなもの必要ないわ。あなたの方こそうぬぼれていられるのも今のうちだけね」


「後悔するなら今のうちだぜ」


勝負前の煽り合いが終わったところで王女が戦闘開始の合図をする。


俺は自身に強化魔法をかけ、接近戦を取ろうとするがそれはサラもわかっているので距離を取る。それでも純粋な速さでは俺のほうが上なので徐々に差が詰まる。


もう少しで届くと思ったその時、俺はなぜか水の中にいた。いや、厳密には俺の顔の周りだけ水があった。水を振りほどこうとするが上手くいかない。最早サラを追いかけるどころではない。俺は必死に色々試したが俺の顔に吸い付いているかのような水の前にどうすることもできなかった。


俺は降参のポーズをとると水が俺から離れていく。


「ね?少しはそのうぬぼれが治った?」


「あぁ、俺はどこかで負けないって慢心があったかもしれねぇ。今のままだと魔の森の魔物に負けてもおかしくねぇ」


「わかればよろしい。まあ今のような器用な魔法をできる人なんてまずいないけど貴方を殺せる可能性がある人もいることは覚えておきなさい」


「対策になるかはわからねぇが息を長い間止めれるようにしとけばその間に助けが来るかもしれないな。ようし、今日から特訓だ」


負けた悔しさももちろんあるが、魔法以外にも強くなれる見込みができたことによる嬉しさのほうが大きかった。正直俺の弱点に最初に気付いたのが敵じゃなくてよかったというのも大きい。まぁサラの場合も魔の森での戦闘を聞いていたから思いついたってのもあるんだろうけど対策が少しでもできるならするしかない。せっかく手に入れた自由を奪われるわけにはいかないからな。


「ユウタに対してあんな感じで戦えばいいとはね・・・正直思いつかなかったわ。でも負ける姿なんて二度と見れないかもしれないからこれはとても貴重な経験かもしれない」


「他にも火魔法でも同じことができるかも・・・試してもよかったけど彼の顔がボロボロになるかもしれないからやめたけどね」


(なるほど、そういう手もあるのか。それは聞き捨てならないな。そっちの方も何かできないか考えておこう)


「・・・さて、そろそろいいかしら?出るときはもう二度と来ないと思っていたけどまさかこんなに早くに戻ることになるとはね。さぁ行きましょう」


「言い出したのはお前だろ・・・」


俺達は魔の森へと向かう。もっと強くなるために。




将軍Ⅱの世界 フィールド3


「最近、歯ごたえのあるモブがいねぇ気がするんだけど・・・気のせいか?」


戦場で勝利を収めた主人公が物足りなさげに参謀へと話しかける。


「ふぅむ、少し調べてみましょう。ここから逃げることなんてできないはずですが確かに誰かがいなくなっている。それについては私も思っていたところです」


人の数はかなり多いためすぐには発覚しないだろう。だがユウタがいなくなっていることに気付かれるのは時間の問題ではある。そんなことをユウタは知る由もない。

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