第六感

一盃口

第1話


 僕は直感を信じているだろうか? 彼がしくじった大罪は被害妄想だった。周囲が僕を暗号みたいなあだ名で呼んで、陰口を叩いている、時折、笑いがおさえきれないようでフッと声を漏らすのだから心の中ではどう嘲っていることか。きっと周囲は僕を嫌うか、嘲笑うか。そんな極端な判断を押し切る。

 結局は何だ? クスッと笑いたくなるようなコミカルでかわいい奴だったのか? それとも、1アクシデントでだけ彼らは注目したのか? そんな判断もできやしなかった。

 結局言って、子どもたちはある時どうしょうもなく恥知らずだが、しかしそれでも僕という奴を受け入れているつもりなのだ。そういうグレーなところをすぐに見抜く程、僕の第六感は優れちゃいなかった。

 分かりやすいのさ、彼らは味方、彼らは敵、その二分、二項対立の方が。一度嫌ったやつは他でも許さないからね、僕は。その方が混乱しない。


 まあもちろん、与えてくれたものもあるさ。電柱に貼られた違法カジノ、テレクラ、あとは工部省の礎石、工事現場での労災申請書類の貼り付け、高輪ゲートウェイには京急が噛んでるという看板、そういうのを見つけてくれて僕の歩きの助けにもなってくれた。

 ここの石は火成岩だとか気付けると、もちろん世界は広がる。


 なんだろうか、ね。第六感はニンゲンを嫌い、モノに執着させるためにあるのかい? どうしてだか、優しい推理を僕はイメージできない。思い出したけれど。いかに犯人を暴くか、それだけじゃないか。復讐。


 少しカミングアウトしたつもり。

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