第7話 過去の世界ですれ違いは生まれる
降邪暦200年(旧西暦2318年)
新日本関東都市特区東京 対邪神攻撃区新八王子 抗者
俺の名前は柴雷英司。雷の法者だ。
今日の任務である魔神討伐を終えてきた。魔神とは邪神の配下。ぶっちゃけそいつらを倒すのは、昔のゲーム風に言うなら、デイリーミッションみたいなものだ。
財団が邪神集団に変貌してから、200年。もう人類は変わってしまった。人間の寿命は、旧日本や旧アメリカ政府などの怠慢が招いた世界的な病気のせいで、長くても40代までとなってしまった。
その影響で、技術力、生産力、科学力の大幅な減退。指導者不足による学力低下など、影響は顕著に表れた。
しかし、人類は違う方向に進化した。
能力を得たのだ。これまで存在が不確定だった『神』と呼ばれる存在に与えられたのだ。
俺達法者は、その神に与えられた力にさらに大幅な強化を受けた存在だ。そのおかげで今までの人類には考えられなかった力を手に入れた。
世界に法者は6人存在し、それぞれの属性は、「雷」「次元」「生物」「大地」「創生」「破壊」の六属性だ。数年前までは、「呪」の法者もいたのだが死亡した。今は、六人の法者と抗者たちで、邪神に対抗している。
だが、こんな世界でも俺には希望と呼べる存在がいる。それは次元の法者、亜希永美穂だ。
彼女はこんな俺を好きになってくれて、告白までしてくれた。法者となってしまった影響で子供を授かることはできないけど、付き合い始めてから毎日が少しだけ明るくなった。
今日も、俺と美穂のお楽しみが待っている。
ウキウキしながら美穂の部屋の前に行くと、中から男の声が聞こえてくる。
「なあ、いいだろ?性欲は英司だけにあるんじゃないんだぜ?俺にだってあるさ。だからさ、一回くらいならいいだろ?」
「それは……そうだが……」
声から察するに、美穂の部屋の中にいるのは美穂だけじゃないらしい。おそらく中にいるのは、美穂と「大地の法者」のダドリーだ。
ダドリーは、法者の中でもかなりのイケメンに分類される。そんな男が今美穂に迫っている。ここは彼氏として一言言ってやらないとな。
「ほら、仲間の性処理を手伝うだけだ。なにも英司を裏切ってないだろ?」
「そういう問題ではないのだが……」
「今回だけ、な?一回でいいからさ。」
「わ、わかった。一回だけだぞ。」
―――っ!?
美穂がダドリーと?うそだろ?
彼女はガサツなところはあったが、そんなに貞操観念の低い女ではなかったはずだ。いや、こんな世界だ。ましてや法者の中に女は一人しかいない。
そういうものなのかな?
気付くと俺はその場を立ち去っていた。そして、その後やってきた美穂とは体を重ねることが出来なかった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
救済の美穂視点
「ほらほら、お前こういうのがいいんだろ?いつも英司に乱暴にされてたろ?」
「そんな風に言うな……」
私は今、仲間の男であるダドリーに秘部をかき回されていた。正直痛い。
ただ私は英司を裏切っている。これを罰として、どんなに痛くても我慢するしかない。一度言ったことは最後まで……。
決して英司との関係に醒めたわけじゃない。今でも私は英司を愛してる。
でも、言い訳にするわけじゃないが、ダドリーの言う事もわかる。自分でいうのもなんだが、私はかなりエロい体をしている。その自覚はある。
だからこそ、英司以外の人たちのそういう欲求が溜まってしまうのもわかる。
そういう欲望を受け止めるのは、唯一の女である私の役目でもあるのかもしれない。
ごめん英司。私、これからもお前を裏切るかもしれない。でも、お前だけを愛してる。
「お?いい感じに濡れて来たな。おら、股開け。挿れるから。」
『痛くないか?美穂、辛かったら言ってくれよ。―――挿れるね。』
ダドリーの言葉に、私と英司の初めての時のセリフが思い出される。
英司は、いつも私を第一に考えてくれた。自分が我慢できないくらい欲求が溜まっていても、彼は私を優先して、私のいやがることはしなかった。
お互いが慣れてきて、私が生粋のMという事が分かってから、シてる時にお尻を叩いてもらう事もあった。
ちょっと痛かったけど、愛のこもった刺激で気持ち良さが勝った。
でも、この男はなんだ。なにかにつけて「こういうのがいいんだろう?」と言い、ただただ乱暴に扱う。
私の気持ちなどそっちのけで、自分がしたいから「股を開け」と言う。
私はこんな男と関係を持つのか?そんなの―――
「……や……だ……」
「あ?」
「いや……大好きな人にしか、体をゆるしたくない!」
そう言うと私は、勢いよくダドリーを突き飛ばした。彼はタンスの角に頭をぶつけて気絶した。
しかし、そんなことを気にもかけず、急いで服を着て英司の部屋に向かった。
コンコン
ギギギと建付けの悪いドアが開かれる。
「どうした美穂?悪いけど、今日は疲れたから寝かせてくれないか?」
「どう、したんだ?なんでそんなに悲しそうな表情をしてるんだ?なにかあったのか?今日、誰か死んだのか?」
「なんでもないよ。母さんや父さんののことを思い出してただけだ。」
英司はそう言うが、私にはそう見えなかった。それに、英司は触れて欲しくない事には、両親を引き合いに出す癖がある。いや、嫌なことがあった時に両親たちとの思い出に耽っていることが多い。
なにかあった。その事実は絶対だが、私はそれに触れることが出来ない。
英司は基本的に隠し事を私にはしない。本当に傷付いたとき以外はだ。彼は彼なりに解決できる。だから私は、あまり深くは聞かない。
「その……英司。一緒に寝てもいいか?エロは無しでだ。疲れてるんだろう?せめて添い寝でも……」
「それくらいならいいよ。―――俺の考えを改めればいいだけだから……」
「なにか言ったか?」
「ううん、何でもない。ほら入って。」
「お邪魔します。」
その後私たちは、同じベッドの中で添い寝をした。いつもながら、英司の寝顔は可愛かった。
法者ファイル
亜希永美穂・ミホ=アールツノイツ
前世で最強の名を冠した柴雷英司の恋人。そして次元の法者。英司の全てに惚れ、骨抜き状態。こんな人でもやるときはやる!色んな意味で!
得意技は、空間そのものを捻じ曲げる認識操作だ!
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