『熱海城』到着と執事の過去
熱海城まで片道約十分ほど。
熱海港海釣り施設からは、割と近い場所にあった。
無事に紺と合流した後、向かった。
山の方にお城はあり、早くも見えてきた。海にも面しており、熱海を見渡せそうだ。
車を走らせ、ついに到着。
はじめてながらナビのおかげで何とか来れたな。
駐車場に止め、すぐに降りると『熱海城』が見えた。
思った以上に立派で俺は驚いた。
「こりゃ凄いな」
「松本城を思い出すなぁ! 大きい~! なんか歴史を感じる~」
そういえば長野で松本城を観光したっけな。懐かしい。
だが、あの熱海城は割と最近に建てられたものであり、戦国時代、安土桃山時代、江戸時代だとかそんな時代から現存したものではないようだ。
「歩花、熱海城は1959年に建てられた観光施設らしいぞ」
「えっ……!? 昔からあるお城じゃないの……?」
「ある意味昔だけど、昭和なんだってさ」
「え~、じゃあニセモノなの?」
「まあいいじゃないか、ニセモノでも」
なぜか某勇者風の口調で言う俺。
昨日、動画配信サイトで見ていたせいだな。
などと熱海城について話していると、紺とアルフレッドさんもやって来た。
「回お兄さん、熱海城ってあったんですねー! 歴史を感じます!」
「紺……君もかい」
「えっ!?」
俺は、紺に熱海城のことを説明した。
すると頬を赤くして気まずそうにしていた。
「――というわけなんだ」
「そ、そうなんですね。なんだ~、二百年とか三百年前のお城かと勘違いしちゃいました」
だよなぁ。思った以上に立派だし、ここまでとは思いもしなかった。さりげなく名城ランキングに入っていても違和感ないだろうな。
「回様。やはりお城は良いものですなぁ」
「まあ、迫力ありますよね。アルフレッドさん、お城好きなんです?」
「ええ、まあ。こう見えて私はバッキンガム宮殿やウィンザー城を出入りしていた経験がありますので」
「なッ……!」
まてまて!
バッキンガム宮殿はともかくとして、ウィンザー城って言えばイギリス王室所有のお城だぞ! そんなところを出入りしていたって……アルフレッドさんは何者だよ。
そりゃ、外国人で紺の執事だけど……。
この人、いったい以前は何をしていたんだか。
「私の過去が気になりますか、回様」
「え、ええ……まあ」
「この際です。少しだけお教えしましょう」
「マジですか」
「私はイギリス空軍の元パイロットでした。かつてフォークランド紛争でシーハリアーに搭乗しておりました」
ちょ……ええッ!?
予想外すぎるというか、ガチの元軍人ということか。これは驚いた。まさか歴史に残る紛争の生き残りがこんなところにいるとは……。
「それで目を負傷されたんです?」
「いえ、これはただのファッションです」
「ファッションだったんですか……!?」
アルフレッドさんは片目に眼帯をしている。まさかのファッションだったとは。ということは普通に見えるというわけか。
「威圧感がある方が紺お嬢様をお守りできますので」
「な、なるほど」
ここに来てアルフレッドさんの過去を知れるとはな。
納得しつつも、熱海城へ向かった。
いや、でもアルフレッドさんの方が気になる……!!
だが、あんまり聞くのも失礼だ。これくらいにしてお城へ。
熱海城の入場料は1,100円とそこそこする。だけど、仕方ないか。せっかくここまで来たのだから人数分を支払った。
よし、楽しもう!
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