ラスト観光地・熱海市へ!

 大観覧車は地上へ戻った。

 富士の景色を楽しめた――けど、歩花と紺は未だに戦っているようで、俺の腕に絡みついていた。

 歩きにくいのだが、今はこのままの方が良さそうだ。


 あとはサービスエリア内をぐるぐる回って息抜きをした。


「お兄ちゃん、そろそろ戻ろ」

「そ、そうだな」


 もう一時間は滞在したな。

 そろそろ出発したいところだ。


「え~、回お兄さん。まだ遊びましょうよ~」


 紺はまだ遊び足りないようだ。

 しかし、時間はもうお昼過ぎだ。

 腹が減ったな。



「先に飯にしよう。アルフレッドさんも呼んでね」

「そうですね。そうしましょう」



 アルフレッドさんを呼んできてくれるということで、紺に任せた。俺と歩花は待機だ。二人きりになると歩花は少しテンションを下げた。



「……ごめんね」

「どうした歩花」

「別に紺ちゃんとケンカしたいわけじゃないんだよ……」

「あー、それな。仲良くやれよ」

「うん。でもね、お兄ちゃんを取られたくない」

「……歩花」


 そんな、しおらしくされると俺は弱い。

 でもそうだ。

 歩花だって別に紺のことが嫌いなわけではないのだ。

 気持ちをハッキリさせない俺が悪いんだ。


 でも、できればこの旅を気持ちよく終えたい。だから、そういう恋愛感情は抜きにして、故郷である相模原に辿り着ければと思う。


 あと少しで夏休みが終わるのだから。



 ◆



 紺とアルフレッドさんと合流。

 富士川サービスエリア内にあるフードコートを利用。


 特選まぐろ丼を食べにいった。

 値段が二千円近くもしたが、もう最後の旅だからな! 贅沢にいこうじゃないか――!

 それに、まだまだ資金はあった。

 宝くじで当てた金はまだ半分も使っていない。思った以上に手元に残った。これは俺はもちろん、歩花の未来の為に使う。


 お店を出て外のベンチでゆっくりとコーヒーを飲む。……美味い。美味すぎる。



「まぐろ丼、美味しかったですねえ~! 回お兄さん」

「ああ。清水港の天然マグロらしいからな」

「二千円もするのに……あたしとアルフレッドの分まで奢ってもらっちゃって、申し訳ないです」


「いや、いいんだよ。その代わり、歩花とは仲良くな」

「もちろんです。歩花ちゃんのこと、大好きですよ」


 笑顔で答えてくれて、俺は安心した。

 やっぱり心の底から憎いわけではないのだ。

 ただ、少しピリつくだけ。それだけなんだ。


「学校でも頼むよ」

「そうですね。もう間もなく秋ですもんね。早いなー」

「また冬休みにどこかへ行こう。計画で行けなかった観光地へ」

「名案ですね! あたし、北海道へ行ってみたいんですよね! アイヌ文化とか網走あばしり監獄かんごくとか!」


「へえ、それも面白そうだな」

「でしょ!」


 次回は、北海道もありか。

 とはいえ冬の北海道は寒そうだなぁ。

 でも、冬にしかない色もあるからな。あえて行くのもアリかもしれないな。


 次回は軽キャンピングカーではなく、通常サイズのキャンピングカーへ乗り換えるのもいいだろう。そうすれば、紺を招いても余裕で車中泊が可能だ。


 型落ちでもトイレやシャワーがついていたり、エアコンも完備しているキャンピングカーがある。次回はもっと快適を求めてもいいかもしれない。


 ただ、今乗っているインディ272に愛着はあるので、売ることはしない。となると今後二台持ちなんてことになる可能性もあるな。


 話を終え、車へ戻った。


 運転席に乗り込み、歩花も助手席へ。



「次はどこへ行くの?」

「うーん。もうお昼も過ぎたからなー。一気に熱海あたみまで向かう」

「熱海?」

「そ。今日は熱海で泊まろうかと思う。一泊500円で借りれる有料駐車場があるらしいんだ」

「へえ、安いね!」


「ああ。紺たちはホテルに泊まるっていうし、丁度いいだろ」

「うんうん」



 というわけで出発だ。

 片道一時間ほど。ちょうど十五時ちょいには到着するだろう。スーパーとかで買出しして、久しぶりに車中飯も作るか――!

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