夏最後の旅へ!

 ひとり五千円もしてしまった。

 おかげで勝ったお金は全部吹き飛んだが、後悔はない。

 うなぎを食べ終え、お店を後にした。



「美味しかったねえ~! 紺ちゃん」

「うん、やっぱり、うなぎだよねえ!」



 歩花と紺の笑顔が見れて俺は満足だ。



「さて戻るか」

「うん、お兄ちゃん」



 紺とアルフレッドさんはホテルへ戻る事に。



「では、あたしとアルフレッドは帰ります」

「おう、また明日」

「はい。歩花ちゃんも、おやすみー!」



 元気よく去っていく紺。

 俺たちは婆ちゃんの家へ帰ることに。


 車へ戻り、少しして婆ちゃんの家に帰宅。もう21時か。



「さすがに遊び疲れたなー」

「そうだね。あ、お兄ちゃん。わたしはお風呂行ってくるね」

「分かった」



 部屋へ戻るなり、歩花はお風呂へ。

 スマホを覗き、明日の予定を考えていると婆ちゃんが話しかけてきた。



「回、明日には出るのかい?」

「そうだな。そろそろ帰らないと……夏休みが終わるんだよね」

「もう八月も終わりだものね」


「ああ。本当は全国回るくらいの気持ちだった。でも、時間が足りな過ぎたよ。計画していた割りに上手くいかないものだ」


「旅はそういうものよ。けれど楽しかったでしょ?」

「ああ、婆ちゃん。すっげー楽しかった。歩花と紺、現地で出会った人たちと過ごした時間は宝物だよ」



 そう、この車中泊の旅で俺は、歩花との仲を凄く縮められた。もともと仲が良かったけど、もっと仲良くなったんだ。

 それに紺と出会うこともできた。二人の笑顔のおかげで俺は旅を続けられたんだ。



「また来年も旅に出なさい。これからもね」

「そうするよ。俺、あっちこっち行くの好きだし」

「たまには静岡にも顔を出すのよ」

「もちろん」



 婆ちゃんは満足そうに自室へ戻っていった。

 夏の旅はもう直ぐ終わる。

 でも、冬もある。

 これからもある。



 ◆



 目を覚ますと朝になっていた。

 ……そういえば、婆ちゃんの家で一泊したんだっけ。

 寝惚けた頭で半身を起こすと、妙に重みを感じた。


 ん、なんだ?



「…………お兄ちゃん…………」



 ん?


 んん!?



 よ~く見ると、下着姿の歩花が俺にべったりくっついていた。



「うおおおおおおおッ!?」



 びっくりした。

 こんな大胆な姿で俺にくっついていたとは。そうか、妙に柔らかいものを感じると思ったら、歩花の感触だったのか。


 おかげで朝から興奮してきた……。


 いやだが、ここは婆ちゃんの家。

 こんなところを見られたら大変だ。


 冷静になり、俺は歩花から離れた。



 ……が。



「ちゅーしてお兄ちゃん」

「ぬわっ! 起きていたのかよ」

「えへへ」



 仕方のない義妹だ。

 俺は目覚めのキスをした。



 ◆



「じゃ、婆ちゃん。また冬に来るよ」

「元気でね、回。歩花ちゃん」



 玄関で挨拶を交わす。

 歩花は寂しそうに婆ちゃんに抱きついていた。



「お婆ちゃん、また来るね」

「楽しみにしているわね」

「電話もいっぱいするからね」



 歩花は、婆ちゃんとビデオ通話を一週間に一度はしている。それほど婆ちゃんコなのだ。


 そうして俺はついに婆ちゃんの家を後にした。

 久しぶりに寄ったけど変わりなくて良かった。


 キャンピングカーへ戻り、俺は紺に電話した。


 直ぐに繋がった。



『回お兄さん、こっちの準備はオーケーです。今日はどちらへ?』

「一気に相模原へ戻るよ」

『あ~、もう帰るんですね?』

「おう。夏休み終了まで一週間しかないからね。そろそろ帰らないと」

『ですよね。では、ついていきます』

「ああ。でも、あと一日は使って観光地には寄っていく予定だ」

『名案です! もう一日くらい楽しみましょ!』

「決まりだな!」



 ラスト一日!

 俺と歩花と紺、そしてアルフレッドさんの“ラスト旅”を楽しむぞ……!

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