奇跡の万舟券

 俺は『4』『1』『2』三連単を“予想”した。

 4はA1選手だし、少しだけ自信があった。


 レース結果を待つと――。



「くそー、だめだったか……」



 さすがに外してしまった。

 惜しくはあったものの、ハズレはハズレ。

 歩花や紺も良い反応がなかったので、恐らくは外しただろうな。


 その後も4レース、5レースと観戦していく。


 そうして最終レースを見届ける前には、競艇を去った。



「あ~、楽しかった」


 歩花は満足そうに言った。


「観戦だけだったけどね」

「ううん、そんなことないよ。はじめてだったから見ごたえあった!」


 それは良かった。

 紺の方も予想だけで楽しんでいた。だが、ほとんど外れて悔しそうにしていた。


「ん~、こんなに当たらないものですね、回お兄さん」

「分かる。結構当たらないんだよね」


 婆ちゃんも予想していたようだが、手応えなし。

 となると、遠くで買っていたアルフレッドさんも絶望的かな。


 競艇を出ると、外は茜色に染まっていた。


 もう夕刻か。

 なんだかんだで一日も滞在してしまった。


 車へ戻ろうとするとアルフレッドさんが出現した。って、そんな野生のポ●モンみたいに現れないでも!



「お待ちを、回様!」

「お、おう。アルフレッドさん。……どうでした?」


「実は……とんでもない結果になりました」



「え!? とんでもない結果……?」


「はい。正直申し上げますと“万舟券”です」




「「「「えええええええええええええッッッッ!?!?!?!?」」」」




 俺も歩花、紺も婆ちゃんすらも叫んで驚いた。


 ま、まさか的中していたのか!


 この中の誰かの予想が当たっていたのかよ……!


 信じられないな!



「い、いったい誰の予想が的中したんです?」

「なんとですね。回様の予想なんです」


「は!? 俺!?」



 思わず驚く俺。まさかの俺の予想だったか……!



「わぁ、お兄ちゃんすごーい!」

「さすが回お兄さん!」

「回すごいわ~」



 歩花も紺も、そして婆ちゃんも俺を賞賛する。なんだか気持ちいな。

 あとは金額だ。そこ次第では今日、盛大にパーティが出来るぞ。



「そ、それでいくらです?」

「三万円の払戻金です」


「さ、三万円!! すごいじゃないか!」

「はい。三連単が的中しておりました」



 当たっていたんだ。

 でも、おかしいな。俺の予想はほとんど外れていたはず。



「どうして?」

「はい。実は、私のミスでして」

「ミス?」


「記入する数字を間違えていたのです。それがたまたま的中して……万舟券となりました」



 な、なんて偶然というか奇跡!

 うまく当たってしまったらしい。


 おかげで三万円をゲット!!



「わぁ、間違いでも凄いよ。お兄ちゃんが当てたことには変わりないよ~!」

「そうですよ。アルフレッドのミスとか気にしないでください。回お兄さん!」



 二人からフォローをもらい、納得しておいた。

 確かに俺の予想がなければ的中はしていなかっただろうし。



「ありがとう二人とも。じゃ、この三万円で美味しいものでも食べにいくか!」



「わーい!」

「やったー!」



 もちろん、婆ちゃんとアルフレッドさんも一緒だ。



「せっかくの三万円だ。うなぎでいいじゃね? 人数分は払えそうだ」



 俺がそう提案すると全員賛成した。

 なら決定だな。


 この浜名湖周辺には、うなぎ屋がいくつかある。



「よし、じゃあ行くか!」



「はーい!」

「楽しみです!」

「うなぎが食べられるなんて久しぶりね~」


 歩花、紺、婆ちゃんは俺の車に。



「ありがとうございます。回様。では後ろからついていきますので」

「分かりました!」



 さて、うなぎ屋へ出発だ――!

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