お兄ちゃんラブな義妹
「ええ~! 競艇へ行くんですか!?」
紺が驚いていた。
ぱぁっと顔を輝かせ、めちゃくちゃ期待されてる。
行きたがっていたみたいだし、こんなに喜ばれるとは。
「というわけで、アルフレッドさんは今日だけ他人だ。紺、いいな」
「そうですね。そうじゃないと舟券買えないですもんね」
「ああ。そこで婆ちゃんに同伴者になってもらう」
話を振ると、婆ちゃんも同調してくれた。
「もちろんだよ、回。任せなさい」
さすが、婆ちゃん! ノリが最高に良いな。
まあ、婆ちゃん自体も競艇が大好きなんだけどね。
その昔、よく連れていかれたものだ。
今日のところは休み、明日に備えることに。
だが、さすがにこの人数。
婆ちゃんの家に泊まるには、ちと窮屈かな。
このアパートは『2DK』で、和室と洋室の二部屋あって広いには広いが……無茶はできない。
それを察したのか、紺はこう言った。
「じゃあ、あたしとアルフレッドは近くのホテルで泊まります!」
「すまないな、紺」
「いえいえ、こっちがお世話になっているので。では、お婆様。また明日お願いします」
紺と婆ちゃんは深々とお辞儀をして、挨拶を交わしていた。
二人はホテルへ行ってしまった。
この弁天島には、ちょうどリゾートホテルが立ち並ぶ。
浜名湖を一望できるし、最高だろうなぁ。
さすが金持ち、羨ましい。
「紺ちゃん行っちゃったね」
「そうだな、歩花。俺たちも明日に備えよう」
「うん」
俺は洋室の方を借り、ゴロゴロしようとしたのだが――スマホに通知が入った。
ん、誰だろう。
名前を見てみると意外な人物からメッセージが入っていた。
安曇野:回くん、元気~?
おぉ、安曇野か! 久しぶりだなぁ!
これは直ぐに返信を返さなきゃ。
回:おう。今は静岡にいるよ
安曇野:あれ、もうそんなとこにいるんだ。地元へ戻ってる感じ?
回:そんなとこ。ほら、夏休みも終わっちゃうじゃん
安曇野:そうだね。時間だけは待ってくれないもんね
回:残念だがね。でも、今は婆ちゃんの家でゆっくりさ
安曇野:あ、やっぱりそうなんだ
回:やっぱり?
安曇野:うん。歩花ちゃんのSNSに浜名湖の写真があったから
歩花のヤツ、写真をアップしていたのかよ!
ていうか、安曇野のヤツ……見ていたのかよ。そっちの方が驚きだ。
もともと安曇野と歩花は少しバチバチしていた過去がある。でも、最後には和解して仲良くなっていた。
どうやら、今はSNSを通じて連絡を取り合っているようだな。
回:安曇野の方はどうなんだ?
安曇野:こっちは相変わらずだよ~。田舎で畑仕事とか、いろいろね。あと彼氏がいなくて寂しい。回くん、なってよ~
なんだその遠回しな告白。
嬉しいけどさ!
回:旅の途中だから無理だな
安曇野:残念! じゃあ、せめて、おっぱいの写真送る!
回:なに!? ちょ、おま……!
安曇野:回くんを誘惑しておきたい
なんだそりゃ~~~~!?
心の中でツッコんでいると、マジで送られてきた。
【安曇野さんから写真が送られてきました】
添付された写真を見ると、水着姿の安曇野が映っていた。胸元ドアップじゃないか。……谷間すげぇ。柔らかそう。
――って、そうじゃない!!
どうやら、川でバーベキューでもしている時の写真らしい。
長野特有の大自然が垣間見える。
しかし、なんて大胆な写真を撮っているんだ。
誰に向けた写真なんだ、これは。
……って、俺か。
回:ありがとう、安曇野
安曇野:使っていいからね
回:何を!?
安曇野:ほら、いろいろ溜まっていると思うし
回:安曇野、お前……意外と大胆なんだな
安曇野:だって好きだったんだもん。今も好きだけど
そこまで言われると照れるな。
めちゃくちゃ嬉しいけど。
ニヤニヤしていると、扉の隙間から視線を感じた。
「…………」
え、まさか……!
「歩花……?」
「お兄ちゃん……なんで嬉しそうなの」
「ちょ、違うって! 面白い漫画を読んでいたんだ!」
「本当かな。えっちな動画とか見ていたんじゃないよね」
「それくらいいいだろ。男の子だし」
「歩花で抜けばいいじゃん!」
「ストレートに言うな! 婆ちゃんもいるんだぞ!」
歩花は部屋に入ってきて、飛びついてきた。
残念ながら安曇野の写真を堪能する暇はなくなった。すまん、安曇野よ。せっかくの写真を使えなくなった。
「お婆ちゃんは寝ちゃったよ。だからね、このままヤろ」
「だめだって」
「え~。わたし、義理の妹だから、いいんだよ~?」
「ダメだ。シてるところがバレたら大問題だ」
「じゃあ、添い寝する」
結局こうなるのか。
お兄ちゃんラブな義妹には敵わん。
俺も歩花が可愛くてたまらない――。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます