うなぎで幸せ!
フラペチーノを味わいながら、浜名湖の風景を楽しんだ。
それから昼食を食べに“うなぎ屋”へ。
「本当に回お兄さんの奢りなんですか!?」
紺が驚いていた。
確かに、うなぎと言えば高級食材だ。
だが、ここまで旅を共にした仲だ。普段、歩花とも仲良くしてもらっているし、俺自身も紺と一緒に旅が出来て幸せをもらっている。
だから少しお礼がしたいと思っていた。
「いいんだ。アルフレッドさんの分も出すよ」
「で、でも……」
「気にするな。今日はここまで無事に辿り着いた記念っていうことで」
「ありがとうございます、回お兄さん」
嬉しそうに微笑み、俺の腕を抱く紺。こうしてもらえるだけでも俺は嬉しいよ。
そして、歩花も対抗するように俺の腕に。
最近はいつもこうなる気が……!
二人を抱えながらも、俺はお店へ。
「微笑ましいですな、回様」
「アルフレッドさん……からかわないでください。結構恥ずかしいんですよ、これ」
「いやいや、本当のことです」
アルフレッドさんの笑顔に悪意はない。
少なくとも紺をこうして俺に預けてくれているから、信頼はしてくれているってことだ。ええい、こうなったらこのままお店へ入るっ!
だが、店に入って俺は驚愕の値段に驚いた。
うな重が“5,000円超え”とは…………恐れ入った。
「た、高ぇ!」
俺が子供の頃は3,000円前後だった気がするけどな。今はこんなに高いんだな。
しかし、大見得を切ってしまった以上は後戻りできない。
人数分となると俺含めて20,000円か……ぐォ、予想外の出費!
いくら宝くじの資金があるとはいえ、高く感じる。今回の食費ではトップクラスの値段だな。
しばらくして、うな重がテーブルに並べられた。
「わぁ、お兄ちゃん。うなぎのタレのにおいが最高だね~。これだけで幸せだよ」
そういえば、歩花はうなぎが大好物だ。
「遠慮なく食え」
「うん、いただきますっ」
俺も箸を手に取り、うなぎを味わっていく。
さぁて……久しぶりのうなぎの味は――うまああああああああああッッ!!
ふんわりサクサクのうなぎだ。
タレが絶妙に絡み合って……美味すぎる。
「「ん~~~~~~~!」」
歩花も紺も幸せそうな表情を浮かべていた。
「いやぁ~、さすがに美味いな」
「そうだね、お兄ちゃん。うなぎって幸せしかないねっ」
箸が止まらない。
5,000円という価格を思うとゆっくり味わうべきなのだろうが、美味すぎてそれどころじゃない。
気づけば、うなぎを平らげていた。
「……ふぅ、美味かった」
「お兄ちゃん、早っ」
「味わってはいた方なんだが、手が止まらなかった」
「うん、分かる。うなぎ美味しすぎるもん」
少食である歩花でさえ、米粒ひとつ残さず完食しそうな勢いだ。
少し経つと、みんな食べ終わった。
「ごちそうさまでした」
「とても美味しかった~、回お兄さん、ありがと!」
「私も、これほど美味しいうなぎを戴けるとは感激です」
歩花も紺も、そしてアルフレッドさんも大満足の様子。
……さて、会計が怖いところだが。
もう分かり切っているのでド~ンといく!
予想通り、20,000円という大金に至ってしまった。けど、値段じゃない。俺もみんなも幸せだったのだから、それでいいじゃないか!
店を後にし、飲み物を買いに自販機へ向かった。
すると外国人観光客が自販機を物珍しそうに見ていた。へぇ、今時あんな風に自販機でワイワイする外国人がいるんだな。
「回お兄さん、どうしたの? ああ、自販機ですね」
「そうなんだ。反応が珍しいなって」
「海外では自販機ってほとんど設置されていませんからね」
「ああ、そうなんだ」
「はい。あたしはよく海外へ行くので知っているんですが、治安とかの関係らしいです」
紺によればお金が盗まれてしまうがゆえに、設置台数が少ないらしい。だから防犯上の理由なんだとか。だから、外国人が日本に来ると自販機が珍しいようだな。
そんな光景を眺めながら、俺はコーヒーを買った。
「お土産に三ケ日みかんでも買っていくか」
「そういえば、回お兄さんって静岡によく来るんです? なんか詳しいですよね?」
「ああ、婆ちゃんが住んでいるんだ」
「えっ! そうだったんですね」
「だから、たまに歩花を連れて弁天島に遊びに行ってた。今日はついでに寄れそうだ」
「いいですね、あたしも挨拶させてください」
「いいよ。弁天島も案内したいし」
「よろしくお願いします」
今後の旅のプランは決まったな。
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