特別番外編②
久しぶりの婆ちゃん家。
二階のアパートへ向かうと、ちょうど扉が開いた。
「……あれ、もしかして」
婆ちゃんの部屋から出てきたのは見覚えのある顔だった。
銀髪に日本人離れした体型。独特なオーラを放ち、こちらを不思議そうに見つめる。この外国人の女の子は、まさか。
「リディア」
「そこにいるの、春夏冬 回くん!?」
「久しぶりー。まさか婆ちゃん家にいるなんて」
「春夏冬家とはご近所さんだからね~」
とびっきりの笑顔で笑う銀髪の少女。名をリディアという。婆ちゃんの部屋の隣に住んでいるらしい。
もともと婆ちゃんの部屋には、別の女子が住んでいたらしが事情あって引っ越したようだ。そこを紹介してくれたのが、このリディアだった。
「いつも婆ちゃんの面倒を見てくれてありがとう」
「いいの、いいの。それより、そちらの女の子は?」
「ああ、こっちの小さいのは俺の義理の妹だ」
紹介すると歩花はカチコチに固まっていた。
そりゃそうだよな。
相手がガチの外国人で、しかもスーパーモデルみたいな人だからな。
「あ、あ、あ、あ……春夏冬……歩花………で、です」
歩花のヤツ、動揺しすぎだろッ。
まあ、俺でも未だにリディアを目の前にすると緊張しまくるんだけどね。
「歩花ちゃんか、可愛いね!」
「あの、えっと……」
「わたしはリディア。リディア・パーヴロヴィチ・コロリョフなんて長ったらしい名前なんだけどね。普段は“リア”って呼ばれているから、そう呼んでくれると嬉しいな」
これまた天使の笑顔。
うん、勝てん。
こればかりは病みやすい歩花も圧倒されているようだった。
「……は、はい。よろしくお願いします」
「うん。じゃあ、わたしはちょっと旦那を迎えに行かなきゃだから」
「だ、旦那さん!?」
「そ。わたし、結婚してるから」
そうなんだよね。
リディアはすでに既婚者。
しかも大学生で。
こんな美人な奥さんがいるとか相手が羨ましいね。
* * *
――というわけで、婆ちゃんの部屋へ。
久しぶりに再会し、歩花は初対面だったけど直ぐに慣れた。婆ちゃんに可愛がられまくる歩花は、本当の家族ように接していた。
良かった、婆ちゃんも元気だし、歩花も楽しめているようだ。
俺はおこづかいもゲットしたし。
しばらくは婆ちゃんの家で過ごした後、近場を散策することにした。もちろん、車で。
ブリウスで再び走り出し、浜松駅へ向かう。
この辺りには有料駐車場も多い。
ひとまず、良さげな駐車場へ入り停めた。
「よし、あのタワーへ行ってみるか」
「わ~、なんか大きいね」
「浜松アクトタワーというらしい」
歩きながら説明し、エレベーターに到着。そこから一気に上がっていく。
エレベーターからの風景だけでも迫力満点だ。
最上階に到着すると、受付があった。
どうやら有料のようだな。
入場料は……千円もするのか!
思ったよりも高いなぁ。
昔は五百円だったらしいが。
俺と歩花の分の入場チケットを購入。
受付に通し、そのまま『展望回廊』へ。直ぐに広大な街並みが見えてきた。
「すご……ビルとか家とかず~っと広がってるね、お兄ちゃん」
「ああ、迫力あるなぁ。いわゆる
展望回廊を歩いていく。
今日は人も少ないようで混雑もしていない。おかげで快適だ。
ぐるっと回り、途中のベンチに腰掛けた。
「なんだか落ち着くね~」
「そうだな。ずっと眺めていたいかも」
「……ところでさ、お兄ちゃん」
「ん?」
「今日はありがとね。お婆ちゃんとも仲良くなれたし、来て良かった」
「それは良かった。歩花には楽しんで欲しいからな」
「楽しいよ、お兄ちゃんとなら。それにね、ドライブ大好きだし」
歩花は嬉しそうにしていた。
連れて来て良かった。
歩花にはずっと笑顔でいて欲しいし、幸せになって欲しい。
アクトタワーを去り、駐車場へ戻った。
車を走らせて帰り道へ。
「さて、ゆっくり帰るか」
「え、もう? お婆ちゃんの家に戻らないの?」
「婆ちゃんのアパートは狭いからね。泊まるのは迷惑になる。だから、今日はビジネスホテルで一泊だ。二人きりでな」
「ほんとー! やった。お兄ちゃんと二人きり」
「おう。このまま磐田市へ向かい、ABCホテルで一泊だ。予約済みだからね」
三十分ほど走ると磐田駅前に到着。直ぐ目の前にABCホテルがあった。駐車場に停め、ホテルへ。受付でチェックインを済ませた。
とはいえ、時間はまだある。
磐田市内で食事でもしようかな。
そういえば、この辺りにしかないハンバーグ屋があるだよな。あそこへ行くしかないな。
「ねえ、お兄ちゃん。さわやか行こうよ!」
「おぉ、それだ! さわやかのハンバーグを食べにいこう」
めちゃくちゃ美味しいんだよなぁ。
静岡と言えば、さわやかのハンバーグは寄らないと損だ。
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