特別番外編①
※特別番外編です。後日、番外編枠へ移動させます
歩花を連れて親戚の家がある静岡へ向かった。
レンタルした車・ドヨタのブリウスで。
一日一万円ほどの費用が掛かるが、親戚の婆ちゃんが交通費を出してくれるって言うからお言葉に甘えることにした。
「歩花、新幹線でも良かったんだぞ」
「わたしは車の方が好きだから」
そういえば、歩花はドライブ好きだったな。俺が免許を取ったら、絶対に乗せてねと毎日のように言っていたっけ。
東名高速道路を一時間半以上と走り、富士川サービスエリアに入った。
夏ということもあり、澄んだ空のおかげで見晴らしがいい。
「富士山、綺麗だなぁ」
「雄大だよねぇ~」
景色に見惚れながらも歩花は、スマホで写真をパシャパシャ撮っていた。俺も同じように歩花をフォーカスしながらも写真撮影を楽しんだ。
……うん、やっぱり歩花は映えるなぁ。
我が義妹はアイドル顔負けの美少女。
スタイルも抜群だから、写真映りが最高に良い。どうして芸能界にスカウトされないか不思議なほどだ。
でも、そうでない方が俺は嬉しい。
ずっと傍にいて欲しいから。
「歩花、カフェオレでも奢るよ」
「ありがと、お兄ちゃん」
俺は自販機でカフェオレを買った。数十秒して出来上がった。紙コップのタイプは出来上がるのに時間が掛かる割りに、量がちょっと少ないんだよな~。
しかも最近は物価上昇のせいか高いし。
百五十円にしては……ちょっとなぁ。
カフェオレを楽しんだ後、ブリウスへ戻って再出発した。
再び走り出し、東名高速道路をひたすら真っ直ぐ進む。
この流れる風景を楽しむ歩花。
静かな時間だけがそっと続く。
「…………」
「歩花、景色楽しいか」
「うん、お兄ちゃんと一緒の景色見るのが好き」
一緒の景色――か。
なんて嬉しいことを言ってくれる。
気分よくドライブを続けていく。
やがて、目的地である『浜松』まで到着。
浜松インターチェンジで降り、そのまま舞阪町弁天島へ走り続けるが――その前にマックドナルドで少し遅い昼休憩とした。
俺はビッグドリームマックセットを。歩花はチーズバーガーとコーラとシンプル。やはり、少食。店内で食べ終え、また車へ戻り再び走り出した。
「――ふぅ、美味かったな」
「たまに食べるハンバーガーは最高だねっ」
「不思議だよなぁ。何か月も食べていないと美味しく感じる」
「うん。ハンバーガーとか久しぶりだった」
そんな会話をしながらも、ついに弁天島にある親戚の家が見えてきた。この辺りになると『浜名湖』が広がり、壮大な海と湖に囲まれている。
免許を取得して初めて訪れた。
弁天島公園を抜け、少し進むと小さなアパートがある。そこへ向かって駐車場に停めた。
「歩花、ここが親戚の……婆ちゃんの家だ。お前は初めてだよな」
「うん、お兄ちゃんのお婆ちゃんに会うの初めて」
歩花はウチの婆ちゃんとは面識がない。義理の妹なのだから当然だ。普段、相模原の実家に顔を出すこともないしな。遠方で離れているし。
さっそく車を降りようとすると、歩花は俺の手を握った。
「どうした、歩花」
「あ、あのね、お兄ちゃん」
「うん?」
「……歩花、なにを話していいか分からないの」
「大丈夫だよ、婆ちゃんは優しいから」
「そ、そうだよね」
不安なんだ。そういえば、歩花の“元”家庭では爺ちゃんも婆ちゃんもいなかったらしい。だから、こういうのは初めてなんだろうな。
「大丈夫か、歩花」
「う、う、うん……」
だめだ、ガタガタに震えている。
こんなに緊張していたら婆ちゃんも困りそうだな。
俺は歩花の気持ちを落ち着かせる為に手を握り返した。
「ほら、落ち着け」
「……ありがと、お兄ちゃん。あのね、キス……してくれたら……震えが収まるかも」
「なっ!」
まさかの要求に俺は頭が真っ白になった。
「だめ?」
「だ、だめだ……。俺たち兄妹だし……」
「じゃあ、頬でもいいから」
そんな、おねだりされると――。
ああ、もう。
頬ならいいか。
俺は爆発しそうな鼓動を抑えながら、歩花の頬にキスをした。
「……これでいいか」
「うん。震え、止まった」
「それじゃ、行くぞ」
車から降りて、いよいよアパートへ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます