幸せが歩いて来やがるッ――――――!!!!!

 過去を思い出していれば『高山市』に入っていた。もともと居た平湯から約一時間で到着だった。


 いったん休憩で高山駅前店のコンビニで停まることになった。



「どうしたの、お兄ちゃん」

「――いや、なんでもない。それより、もう高山か。高山ラーメンとか有名だよな」

「飛騨牛焼肉とか、みたらし団子も美味しいみたい」



 立ち寄っていきたい場所も多いが、白川郷まで向かわねば日が暮れてしまう。


 車を降りると飛騨さんが駆け寄ってきた。


「お疲れさま、回くん」

「ありがとうございます、飛騨さん」

「五分ほど休憩して、また出発しよっか」

「案内ありがとうございます。ここからあと何分くらいです?」


「白川郷までは一時間くらいだね~。お昼過ぎには到着かな」

「じゃあ、飯食っておきますかね」

「賛成。紺ちゃんもどう~?」


 いつの間にか飛騨さんの背後にいた紺とアルフレッドさん。


「あたしも賛成です!」

「腹が減ってはなんとやらだ。それに、せっかく高山市に立ち寄ったからな、飯くらい食っていこう」



 決まったところで飛騨さんに案内してもらうことに。

 どうやら、この近くに『飛騨牛まん本舗』というお店があるらしい。牛まんだって!? 店舗名からして、めちゃくちゃ美味そうじゃん。


 お昼を軽く食べるには、丁度良い。


 決まったところでナビにセット。

 ここから五分ほどらしい。近いっ。



 再び車を走らせ、向かった。



 直ぐに見えてきた『飛騨牛まん本舗』はあった。

 近くの駐車場に停め、さっそくお店へ。


 まるで屋台みたいな感じだな。


 ズラリと並べられている飛騨牛まん。



「ねえねえ、お兄ちゃん。飛騨チーズ牛まんもあるよ~。美味しそう!」

「ああ、これは絶対うまいヤツだ」



 ここは全員を喜ばせてやりたい。

 俺は思い切って全員分を奢ることにした。


 お店のおっちゃんに牛まんとチーズ牛まんをそれぞれ二個ずつ注文した。



「えっ! 回お兄さん、いいんです?」

「いいんだよ、紺。アルフレッドさんの分も頼んだから」

「アルフレッドの分まで、ありがとうございますっ」



 ぺこぺこと何度も頭を下げる紺。

 こんなに感謝されると、ちょっと気分が良いな。



「私の分まで出して貰っちゃって……悪いね」

「飛騨さんは案内して貰っているんで、その分です。安いですけど」

「ううん、嬉しい」



 ニコッと笑顔を向けられ、俺は不覚にも落ちそうになった。……今のはヤバかった。飛騨さんの笑顔……魅力ありすぎる。


 胸を押さえていると、なにかボソッと聞こえた気がした。



「…………」


「ん? 歩花?」


「え? なんでもないよ。えへへ……」



 な、何を言ったんだ。

 あまりに声が小さくて、まったく聞き取れなかった。


 ……気のせいだよな、うん。



 しばらくして、牛まんとチーズ牛まんが出てきた。ホクホクで美味そう~。



 俺は人数分を配った。

 駐車場へ戻り、キャンピングカーへ。俺、歩花、紺、飛騨さんと四人でなかなか窮屈だが、きちんとベンチ展開すれば、なんとかギリギリ座れた。


 ちなみにアルフレッドさんは遠慮して、X-VANで食べている。ちょっと申し訳ないけど、座れる場所もないからな。



「牛まん、おいし~!」



 珍しく食の進む歩花。

 いつも小食だから本当に珍しい光景だ。



「これジューシーすぎだよね、歩花ちゃん。ちゃんと写真撮った?」

「うん、めちゃくちゃ美味しい。――って、そうだね! ツブヤイターに投稿しなきゃ」


 二人は楽しそうにキャッキャしていた。



「久しぶりに食べたけど美味しいわ~」

「飛騨さんのおかげです。こんな美味い牛まんがあったとは……」

「気に入っていただけて良かった。回くん、チーズ牛まんも美味しいから、食べてね」

「今、牛まんの方を食べ終わったところなので、さっそくチーズの方をいただきますっ」

「そっちはトロトロで最高だよ~」



 ぱくっといただくと、中のチーズが見事に調和していた。脳に絨毯爆撃のような衝撃が走った。これは幸せの塊しかないっ! なんだこれは、脳が全回復リカバリーしていく!


 うまい、うますぎる!!


 舌の上で肉が踊っていやがる。

 肉汁がジュワっと広がって、また繰り返されて……なんだこれは! こんな幸せを噛みしめていいのか!



 幸せが歩いて来やがるッ――――――!!!!!

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