白川郷へ向かおう!

 カフェオレを味わう俺。

 ん~、とてもクリーミーで深い。これほど鮮明で鮮烈な味は初めてかも。


 この店、落ち着いているし気に入った。


 気軽に来れる場所ではないけれど、また来ようと思った。俺のお気に入りリストに追加だな。


 スマホでメモを取っていると、紺と飛騨さんが談笑していた。



「へえ、飛騨さんって白川郷の人なんですね。あの世界遺産の!」

「そうなの。すっごく田舎だけど景色も最高だし、空気も美味しいよ」

「いいなぁ……憧れますっ」



 飛騨さんって白川郷の住人だったんだ。それって、凄いな。宝くじで一千万円当選する並みに凄いことではないだろうか。いや、それ以上かもしれない。


 今度はアルフレッドさんが関心を示していた。



「ほぉ、白川郷ですか。行ったことがないので、興味がありますな」

「そうなんですね、アルフレッドさん。じゃあ、来ます?」


「いえ、私はお嬢様のご意思を尊重しておりますので。それに、此度の旅は回様の旅路でございますから……ただの執事である私に決定権などありませんので」



 紳士に振舞うアルフレッドさん。

 だが、その顔には行きたいと書いてあった。

 紺もソワソワしてこっちを見てるし。


 なるほど、俺がリーダーってわけか。

 ならプランを発表しよう。



「白川郷には立ち寄る予定だったから、安心して」



 俺がそう断言すると、紺もアルフレッドさんも瞳をキラキラ輝かせた。



「「おぉ!!」」



 ついでに飛騨も笑顔を向けてくれた。

 ……それはズルいというか、惚れてしまうじゃないかっ。顔をほんのり赤くしていると、歩花の負のオーラを感じ始めていた。


 ……ッ!!


 冷静になれ、俺よ。



「歩花も白川郷、興味あるよな」

「もちろんあるよ。だって、白川郷へ行きたいって歩花が言ったんだもん。お兄ちゃん、忘れたの……?」



 ……って、そうだった!


 思い出したよ。


 旅のプランを決める時、こう言っていた。



『ねえ、お兄ちゃん。わたしは岐阜の白川郷行ってみたーい!』



 あ、


 あ、


 あああああああああああああああああ……!!!



 俺としたことが、歩花の希望を忘れていたなんて……最悪だ。刺されても文句言えないよ。そりゃ、こんな不機嫌になるよな。


 あとひとつでも間違いを犯せば、歩花は闇落ちしそうだ。ここは慎重に。



「そ、そうだ……忘れていなかったぞ! 白川郷に行くぞ!!」


「本当?」


「本当本当。だから、な?」


「じゃあ、許してあげる」



 ……ふぅ、危なかった。

 どうにか許して貰えたようだ。



「よし、みんな。今日は白川郷へ向かうぞ」



 全員が頷いて同意してくれた。

 スマホで調べてみると、ここから車で二~三時間らしい。今からなら余裕だな。



「それじゃ、私が先導するよ」

「ありがとう、飛騨さん」

「案内するって約束だからね」



 これで決まりだ。

 残りのカフェオレを味わい――それから少ししたところで精算。お店を出た。


 う~ん、良い喫茶店だったなあ。


 実際いたのは三十分程度だったけど、何時間も居られた気がする。それほどに心地よい場所だった。


 今度はいつになるか分からないけれど、必ず来よう。



 キャンピングカーに戻り、後部座席の居住区に入ると歩花が突然、泣き崩れた。



「お兄ちゃんの馬鹿ああああああああ……」

「えぇ!?」


「なんで忘れてたの!!」


「おいおい、許してくれたんじゃなかったのか」

「それはそれ、これはこれだよ。ていうか、飛騨さんにデレデレしすぎじゃない!? これって、浮気だよね……」


「そんなわけないって」


「じゃあ、証明して」

「え、証明?」


「ここで歩花とするの。最後までしてくれたら信じる」

「さ、さ、最後までぇ!?」(←声が上擦った)



 突然のことに立ち尽くす俺。

 目の前で歩花は服を脱ぎ始めた――って、ダメだっ。



「なんで止めるの」

「止めるだろ。歩花、直ぐ出発なんだから……してる暇ないだろ」

「じゃあ、お兄ちゃんをスッキリさせるもん」


 今度は俺のズボンに飛びついてくる歩花。ああ、もうヘンタイ妹めっ。


 仕方ないので俺は歩花を抱きしめた。

 こうすれば落ち着いてくれる。


「……今はこれで我慢しろ」

「うん……。ごめんね、歩花……いつも寂しいから……」

「寂しい思いをさせてすまないな」


 なんだかんだ言いながらも、歩花は俺に身を委ねてくれた。……ふぅ、殺人事件にならなくて良かった。


 にしても、こう甘えられると猫のように可愛いな。ついつい可愛がりたくなる。


 そうだな、出発前に少しだけ歩花とのんびりするか。



----------------------------------------------------------------------

 今回で20万文字を突破しました。

 ラブコメでこれほど書けたのは初めてです。

 この作品は特に思入れ深いので、不定期でも続けていくつもりです。今後も応援くださると嬉しいです。


 今年はたくさんの応援ありがとうございました。良いお年を。


 続きが読みたいと感じたらでいいので★評価をお願いいたします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る