軽キャンピングカーで初車中飯

 道の駅へ向かう前に近くのコンビニへ立ち寄った。晩御飯の材料を買う為だ。


 レトルトカレーとかシーチキン&コーンサラダ、飲み物を購入。ああ、そうだ。これを忘れてはいけない。


 デザートも必要だ。


 歩花はホイップクリームとカスタードクリームの入ったシュークリームが大好き。忘れないように買っていった。


 車戻り、買出しは完了。

 要冷蔵ものは、ポータブル冷蔵庫へ突っ込んだ。



 出発――と言っても目的地である道の駅は、一分も掛からない距離にあった。



「到着した。ここが『道の駅アルプス安曇野ほりがねの里』だな」

「結構広いんだね!」



 駐車場は普通車が162台停められる規模らしい。なかなか広いな。

 隅が空いていたので目立たない位置へ停車した。


 さっそく後部座席の居住区へ。

 室内全体を照らすLED照明が標準で付いているので、普段の部屋と変わらない暮らしができる。


「夏なのに暑くないな。扇風機を軽く回すだけで十分そうだ」

「うん、昼はあんなに暑かったのにね」


 外がやや曇っているせいか、この時間帯の外気温は21℃。室内23℃と快適に過ごせる気温だった。


 夜は長袖でもいいくらいだ。

 おかげでエアコンの出番はなくなった。

 ポータブル電源の節電にもなるし、丁度いい。


 さっそく軽キャンピングカー『インディ272』での初車中飯だ。調理を開始する――!


 キッチンに、先ほど買ったキーマカレーのレトルトパウチを取り出す。


「これをお湯で温めるぞ」

「ねえねえ、お兄ちゃん。ガスコンロでやるの?」


「いや、道の駅やキャンプ場では火が使えない場所が多い。火災のリスクとかあるからね。だから使用はできない。でも『電気』は火を使わないから問題ないんだよ」


 この場合、お湯を沸かすには『IHクッキングヒーター』を使えばいい。ポータブル電源に接続し、IH専用のフライパンを置く。

 持ってきて良かった、取っ手の取れるフライパン・鍋セット。


 水は、貯水タンクから取り出した。


 鍋へ水を注ぎ、沸騰まで待つ。

 大容量ポータブル電源のおかげで高出力が実現できた。おかげでお湯はかなり早い段階で沸いた。そこへレトルトパウチを投入。


 更に。


 お米を焚いている余裕がなかったので、レンジでチンする“パックご飯”を買っておいた。


「簡単なヤツでスマンな」

「ううん、いいの。これでも立派な料理だよ、お兄ちゃん。でも……レンジがないから、パックご飯はチンできないよ?」


「ふっふっふ。歩花、このパックご飯はレンジをしなくても温められる方法があるんだ。いいか――食品用ポリ袋!」


 某猫型ロボット風に取り出すアイテム。これが非常に役に立つ。


「え、それ……スーパーとかにあるポリ袋?」

「いや、これはそれとは違う。まず、パックご飯を開封する。で、ご飯をこの透明なポリ袋の中へ入れる。それから沸騰した鍋へ投入する。これでしばらく待つと温まるんだ」


「え、そんなことしていいんだ!」

「ああ、このポリ袋は“湯煎ゆせん”が出来るんだ。車中泊の必須アイテムだよ」

「へえ、へえ~! お兄ちゃん、すごぉい!!」


「パウチとご飯を両方一気に温められるから、効率も良いぞ」



 本当はもっと本格的な料理とかしたいけど、時間もないし今日はカレーの気分だったから、これでいいのだ。



 その間にも俺はスノーパークのチタンマグを取り出す。



「あ、それ、お兄ちゃんのお気に入りのコップだね」

「うむ。歩花の分もあるぞ~。キンキンに冷えた『一升瓶の安曇野りんごジュース』でも注いで乾杯しようか」


 さすがにポータブル冷蔵庫に一升瓶丸ごとは入らなかったので、予め500mlのドリンクボトルへ移しておいた。


 ボトルからチタンマグへ注いでみると、りんごの良い香りが漂った。


「美味しそう~」

「こりゃ高いだけある。さっそく乾杯!」

「かんぱいっ!」


 カップを合わせ、俺はりんごジュースを一気飲みする。……味が濃くてうまっ! 普通のりんごジュースではない、高級感あふれる味がした。

 これ、全部飲めちゃうな。


「りんごジュース、甘くて上品な味わいだな」

「風味がふわぁっと広がってきたよ。コンビニとかで売ってるヤツと大違いだよ」


 買って正解だったな。

 またあったら買おうかな。


 なんだかんだ、まったりしているとパウチとご飯が煮えてきた。そろそろ良さそうだな。


 IHヒーターの電源を切り、鍋からご飯を出す。

 袋の中からご飯を転がし“どんぶり紙皿”へ。更にパウチを出して開封。キーマカレーをかけていけば――完成。



「はい、歩花の分。あとサラダもね」

「本当にカレーが出来ちゃった。こんな簡単に」


 驚いて感激する歩花は、目を輝かせていた。これが初めての車中調理だったから、新鮮だったのだろうな。俺は、ヨーチューブの動画で散々参考にしていたけど。


 おかげで知識だけは豊富だ。

 いや、今は必要なものも十分に揃っているか。ここまで実現できるとは思わなかったけど。全て歩花のおかげだ。



「さあ、食べようか」



 きちんと手を合わせ「いただきます」をして、スプーンを手に取る。ちなみに、チタン製の折り畳みスプーンだ。


 ご飯とキーマカレーをスプーンで丁寧にすくい、口へ運ぶ。食べやすい温かさで、完璧だった。


「う~ん、美味い。ちゃんと出来てるよ、お兄ちゃん」

「良かった。レンジのない環境だと、湯煎しかないからな」

「湯煎は気づかなかったなぁ」


 料理好きの歩花も、湯煎という方法は浮かばなかったようだな。という俺も、ヨーチューバーの受け売りなんだけどな。


 取り付けてあるディスプレイの電源を入れ、動画配信サイトへ繋げた。こういう時はアニメとか映画を流すに限る。


「歩花、なにか見たい?」

「お兄ちゃんのおススメでいいよ~」

「そうか。じゃあ、ヨーチューブでも見るか」


 ストリーミングメディアプレーヤー『メラメラスティック』は、非常にコンパクトで役に立つ。HDMIで繋げておけば、あとは専用のリモコンで操作するだけ。


 サブスクだけでなく、ヨーチューブだって見られるんだから万能だ。セールで2000円だったから買っておいて良かったぜ。


「車中泊動画見ようよー!」

「マジか! 車中泊してるのに車中泊動画とはな。いいけどね」


 歩花の要望通り、俺は『テルちゃんさんTV』を流した。

 そうして、ピリ辛のキーマカレーを堪能しながらも車中泊動画を楽しんだ。

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