えっちな車中泊
食事を終え、歩花はギャレーで歯磨きをしていた。
俺も同じように歯を磨く。
やっぱりキッチンがあると生活の幅が広まって快適だな。
時間はもう二十三時と深夜になりつつあった。眠気も誘ってきて、いよいよ眠い。
「歩花、ベッド展開するから一旦降りてくれ」
「分かった~」
歩花には一度車を降りてもらい、俺は就寝の為のベッド展開を開始した。
まずは荷物を片付けて収納ボックスへ突っ込めるものは突っ込んだ。テーブルも収納。足場が広くなったところで、俺はベット展開用の『板』を敷く。
これは予めオプションでついていたものだ。
専用の板を三枚敷くと後部座席がベッドに早変わり。フルフラットとなり、少し狭苦しいが、二人分は寝れるスペースが確保できた。
「歩花、もういいぞー」
「お、お兄ちゃん! 虫が、虫がいるよぅ!!」
……あ、そうだった。
やっぱり虫除けは必要だったな。
しかも、歩花は虫が大の苦手。
今やパニックになって涙目。
悪いことをしたな。
「すまん、歩花。でも、もうベッド展開は出来ているし、寝れるぞ」
「……あ、ほんとだ。なんか凄く広くなってる!」
太っていると二人分はキツイかもだが、俺も歩花も細身だから何とか寝れそうだ。けど、なにも寝る場所はここだけではない。
「歩花、天井も見てみな」
「うん? 天井? って……なんか立てるよ!? あれ、こんなに天井高かったっけ」
「前に言ったろ。これは『ポップアップルーフ』というんだよ。
「おぉ、なんか風通しもいいし、エアコンいらなさそうだね」
「その通り。上は
歩花はテンションを爆上げ。感心していた。
健康ランドの和室とは違って、今回は軽キャンピングカーの車中泊だ。ついに車で寝泊まりなんだ。
実のところ、俺もワクワクしていた。
寝られるかなー!
「ところで、床に二人で寝るの?」
「寝れないことはないよ。でも、狭苦しいだろうし、どちらかがポップアップルーフで寝るか」
「え、そんなことができるの!?」
「うん、ポップアップルーフに専用の板があるんだ。見てろ」
俺は立ち上がり、ポップアップルーフに備え付けられている板を展開する。すると車の天井がベッドになった。一人分は余裕で寝られる空間があった。小さなテントってところかな。
「わぁ! こんな機能があるんだ。これなら二人は余裕で寝られるんだね」
「キャンピングカーの特権さ。まあ、中には軽自動車を改造してポップアップルーフを取り付ける人もいるらしいけどね」
「凄いなぁ。キャンピングカー買って正解だったね」
「ああ、歩花のおかげさ。さて、どっちで寝る?」
聞くと歩花は、顔を赤くしてモジモジとしていた。
この反応はどう受け止めればいいのだろうか。
「……お兄ちゃんと一緒がいい」
「へ」
「だって今日は初めての車中泊だよ? 一緒がいいな」
「歩花……いいのか。兄ちゃんと一緒で」
「うん。今日は特別な日だから」
「そうだな。でも、せっかくルーフも展開したし、寝てみなって」
「あ、そっか。そうだね、ポップアップルーフへ上がってみる」
よじ登らなきゃいけないので、俺は歩花の身体を持ち上げてた。
「ほれ、歩花」
「お、お、お兄ちゃん……そ、そこ、歩花の弱いところ」
ふにゃふにゃになる歩花は、顔を真っ赤にした。そうだった、歩花はとにかく全身が敏感なのだった。
「我慢しろって」
なんとかルーフへ昇らせた。
「おー、結構広いね!」
「そうだろう。寝てみ」
「分かった、寝てみるね」
横になる歩花は、ゴロゴロしていた。
板が外れる心配もないし安定しているな。
「良かった、大丈夫そうだな」
「やばいこれ、普通に寝れちゃう。ちょっと眠いぃ~…」
「そのまま寝てもいいんだぞ」
「えー、お兄ちゃんと一緒がいい」
「仕方ないな。下ろすぞ、歩花」
「うん」
ルーフから歩花をそっと下ろす。
板だけ閉まって、ポップアップルーフはそのままにした。天井が高い方が圧迫感がないし、少し網戸にしておけば冷たい風が入ってきて涼しいからだ。
「じゃ、俺はいったんリアボックスから寝具を出してくる。歩花、寝間着に着替えるならその間に」
「そうるすね」
俺は一旦車から降り、リアボックスに保管してあるマットレスと薄い毛布を取り出す。タイミングを見計らって車へ戻ると、歩花は下着のままだった。
「ちょ、歩花! す、すまん」
「ううん。今日はこれで寝るから」
「はい!? し、下着のままで?」
「うん。だってその方が涼しいもん。ていうか、家ではこの格好が多いよ。お兄ちゃんも下着で寝たら?」
「お、俺はこのままでいい」
自分は元からシャツと短パンという軽装なのでこのまま寝る。しかし、歩花の格好は……刺激が強すぎるって。これは寝られないぞ。
「じゃ、寝よっか」
「せ、せめてシャツを着てくれ……」
「やだ。このまま寝る」
これは聞いてくれそうにないな。
マットを敷くと、そこへ歩花は寝そべった。俺も隣で寝るしか――ないよなぁ。
靴を脱ぎ、俺は歩花の隣へ。
「……お兄ちゃん」
歩花は俺にぴったり密着してきた。
「……!!」
「すっごくドキドキするね」
「あ、歩花……これでは緊張しすぎて寝られないぞ」
「そ、そうだね。でも、すっごく幸せ」
「ちょっと肌寒いし、風邪を引くぞ。やっぱりパジャマに着替えて……」
「大丈夫。お兄ちゃんの肌が温かいもん」
あぁ、こうなったら歩花は引いてくれない。観念にして一緒に寝るしかないな。
「仕方ないな。ほら、こうやって抱き合って寝るか」
完全に密着して手も足も絡まった状態になる。
歩花は甘えん坊になって、俺の胸に顔を埋めてスリスリしてくる。シャンプーの香りが俺の鼓動を加速させた。
「ねえ、お兄ちゃん」
「どうした」
「……好き。大好き」
耳元で囁く歩花。
その言葉には感情とか思いが強く込められていた。
たまらなくなった俺は、歩花を抱きしめた。いっそ、このまま……。
そうだ、二人きりの今こそしかない。
今この世界には俺と歩花しかいない。
存在しないんだ。
お互いの気持ちも同じはず。
だから俺は歩花を押し倒した。
「……歩花のせいだぞ」
「いいよ、歩花のせいで。責任取ってあげる」
「ばか。そういうのは男の俺のセリフだ」
「ううん。だって歩花はいつもお兄ちゃんを誘惑してるもん。だから、歩花のせいなの」
「そうかもな。けど、俺が責任を取ってやる」
「嬉しい。気持ちいこといっぱいしようね」
「ああ……朝までしよう」
「……うん。でも……はじめてだから……優しくてね」
俺は歩花の下着を剥ぎ取ろうと――『ピココン~♪』――したが、ライン電話に邪魔された。誰かから電話らしい。
くそぉぉぉ!!
こんな大事な時に!!
誰だ!!
誰だよぉぉおぉ(血涙)
スマホを取ると、そこには『親父』の名前が。
親父ィィィィイイッ!!!
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