安曇野スイス村

 安曇野スイス村は、車で十分ほどの距離だった。

 西洋風の建物が見えて来た。


「あれかぁ、なんか外国に来た気分だな」

「うん、面白い形をしているね」


 複合型テーマパークらしく、花畑があったり、蕎麦屋、お土産屋、乗馬体験

ラーメン屋に農産物直売所などいろいろあるようだ。


 駐車場に車を停めた。


 さっそく紺と合流しようとすると、向こうからやって来た。



「回お兄さん、ちょっと休憩にしませんか?」

「そうだな。ずっと走りっぱなしでまともに休憩してなかった。紺は、特に疲れているだろうし、三十分くらい自由にしよう」

「はい、また後で。それまではフリータイムということで」


「ああ、先に回ってくれても構わないから」

「了解です!」



 紺はバイクの方へ戻っていった。


 俺と歩花は、後部座席の居住区へ。

 ソーラー充電されたバッテリー残量を確認。余裕があったので冷房をつけた。……ふぅ、涼しい。


「というわけだ、歩花。しばらくは二人きりだ」

「やった。嬉しいっ」


「そういえば、歩花の行きたがっている『国営アルプスあづみの公園』だけど、どうせならイルミネーションを見たいし、夜にするか」


「それ賛成! だってさ、ネットで調べるとすっごく綺麗なんだもん。調べたらね、サマーイルミネーションがやってるんだって」



 サマーイルミネーション。

 だいたい八月一日~二十日など期間限定でやっているイベントらしい。点灯時間は十八時~二十一時か。



「分かった。今夜もやるようだし、暗くなったら向かおう」

「やったぁー! じゃあ、今日こそ車中泊できるのかな」


「うん、さっき調べたんだけど『道の駅 アルプス安曇野ほりがねの里』というところは、トイレもあって無料で車中泊ができるらしい。今夜、はじめてそこで泊まろうかなと」


「わぁ、楽しみ! だって、せっかくのキャンピングカーだもん。ここまで準備したし、使わないともったいないよ~」



 そうだな。健康ランドで一泊は想定外だったけど、でもあれはあれで楽しかった。だが、本題はこっちだ。


 車中泊して旅をする為に軽キャンピングカーを導入したんだ。今こそ、本領を発揮する時だな。



「今夜は楽しみだな」

「あとで食材も買っておかないとね」

「この安曇野スイス村で買えそうなものがあれば買っておくか」

「了解~!」



 歩花は笑顔で応え、使い捨ての体拭きタオルで汗を拭った。俺も一枚もらって汗を拭きとっていく。これをするしないで、だいぶスッキリ度が違う。


 軽くシャワーを浴びたような爽快感を得られ、気分が良い。



「ふぅ、スッキリした」



 満足していると、歩花が俺のひざを擦ってきた。



「お兄ちゃんの大切なところもスッキリさせてあげよっか」

「んな!? ば、馬鹿。そっちはいいって」

「でも、結構溜まってる……よね」


「そ、そんなことはない。いつも歩花で――あ」

「え、歩花で……なに?」



 そりゃ、目の前にこんな激可愛い女の子がいるんだぞ。妹だけど義理なんだ。義理だけど妹なんだ。だから必死に堪え、耐えていた。


 ――が、しかしだ。


 どうしても我慢できない時もある。

 それは男としてのさが


 いたって健康な男の子である以上、好きな女の子のことが気になって気になって仕方ない。



 だから、多少のおいたはあるさ。

 だがそれは決して表に出さない秘密裏。

 墓場まで持っていくつもりだ。



「いや、なんでもないよ」

「へぇ、お兄ちゃんって歩花をおかずにしてるんだ」


「んなぁ!?」

「でもいいよ。その方が嬉しいし」

「まだ、イエスとは言ってないぞ」

「ノーとも言ってないもんね」


「ぐっ……」



 あー、だめだ。こう密着されると少しタガが外れる。理性がどこかへ旅立とうとしている。でもいいか――嘘をつき続けるよりは何倍もいい。俺は正直でありたいな。



「……っ、お兄ちゃん。そ、そこ触っちゃ……だめ」

「歩花のふともも弾力があってツヤツヤで、好きなんだ」

「うん、でも……なんか変な感じがする」

「相変わらず全身が敏感なんだな、歩花は」


「歩花ね、昔からそうなんだ。でも、お兄ちゃんに触られるとドキドキして変な気分になっちゃうの。こんなえっちな気分になっちゃうと我慢できないの。だからね、もっと触って、キスして」



 そう言って歩花は、俺を襲ってきた。

 言っていることは“受け”なのに、なんだか矛盾していた。

 って、あれぇ……襲おうと思ったのに、俺、まさかの襲われる!?

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