ゲームコーナーで勝負! 負けたら脱ぐ?

 焼き担当の俺は、カルビをじゅうじゅう焼いていく。

 その間にも白飯と野菜が到着。


 安曇野がタレとかはしを準備してくれた。



「回お兄さん、良い焼き加減ですね~!」

「まあな! これでも家ではよくやってたんだ」

「へえ、そうなんですね。うん、美味しい」



 俺は焼けた肉を都度、みんなに配っていた。途中で歩花も参戦してくれて、兄妹二人で焼いていく。


 よく焼けたら器に移していく。単純作業の繰り返しだが、この肉を焼くという作業が俺は好きだった。



「ほら、焼けた。安曇野」

「ありがと。ていうか、本当に焼き加減絶妙ね、回くん。ぜんぜん固くないし、食べやすいわぁ」


 レモンサワーをぐびぐび味わいながら、安曇野は満足気に肉を頬張っていた。なんだか、飲み会のOLみたいで可愛いな。



「お兄ちゃん、焼いてばかりで食べれてないじゃん。ここは、わたしに任せて」

「そうだな。俺も腹ペコだし、そろそろ食うか」

「はい、ロースとハラミ」


 焦げなく焼けたロースとハラミを貰った。


 う~ん、肉の良い匂い。

 しかも特製タレがこれまた濃厚だな。


 俺はさっそく箸で肉を挟む。

 タレをふんだんに漬け込み、白飯の上へ。


 一緒にかっこんだ。



「んまぁッッ」



 肉が溶けるような食感だった。

 白飯を融合してこれが最高に幸せ。タレの味が脳を幸せにした。なんたる僥倖ぎょうこうか。旅先でこんな美味い飯が食えるとか、贅沢の極みだよ。



 紺も幸せそうに肉を噛みしめていた。

 あんな頬っぺた落ちそうにして――あんな笑顔が見れて俺は、それだけでお腹いっぱいだ。



「回くん、もっと食べなさーい!」

「あ、安曇野。まさか酔ってないよな?」

「ノンアルコールだって言ったでしょ。ほら、シャトーブリアン」



 ぷりっぷりの肉を安曇野からもらう、これは絶対うまいヤツ。


 そんな感じでワイワイと焼肉パーティは続いていった。



 * * *




「――はぁ、お腹いっぱい!」



 とにかく紺が幸せ全開で何よりだ。



「紺ちゃん、いっぱい食べたねぇ」

「歩花ちゃんは食べなさすぎぃ」

「わ、わたしは普段からあれくらいだから」


 歩花は小食だからな。がっつり食うタイプではない。それは俺がよく知っていた。



「てか、安曇野は大食いしていたな。まるでヤケ食いみたいなペースだったぞ」

「あはは……回くん、それは言い過ぎ。私は長野出身の田舎育ちだからねえ。あんなもんだよ」



 安曇野はきっと、社会人になったら飲み会で酔いつぶれるOLになるタイプだな。そんな光景が目に浮かぶようだった。



「さて、これからゲームコーナーでも行こうか?」



「「「さんせー!!!」」」



 全員の意見が一致した。

 ゲームコーナーは22時までは営業しているようだし、残り三時間ほどを満喫しよう。



 さっそくゲームコーナーへ向かう。



「ゲームコーナーってメダルゲームがあるんだね、お兄ちゃん」

「なんだか古めかしい筐体きょうたいが多いけど、懐かしいな。あっちのスロットとか四号機じゃん。まだ現存していたんだ」



 四号機スロット。

 2007年まで設置されていた全盛期時代のスロット機――らしい。WakWakpedia先生で確認した。

 という俺は、ゲーセンでよく遊んでいたので思い出補正が強い。



「すげぇ。これ『イカスロ』じゃん。こっちは『ハナビっち』か」



 イカのイラストが掛かれたスロット機。イカちゃんが三つ揃うとメダルが350枚ほど払い出しされるんだよな。ハナビっちの方もバンちゃんというキャラクターがそろえば大当たり。


 なんて思い出していると、安曇野が俺の肩を突く。


「回くん。こっちにプッシャーもあるよ」

「メダル落としか。いいね、でも四人は座れないし……そうだ、二手に分かれるか。俺と歩花はスロットで遊ぶ。そっちはプッシャーでメダルを増やしてくれよ」


「ああ、それならどっちがメダルを多く獲得できるか勝負しよ。負けた方はジュース奢りとかでいいんじゃない!? ……脱衣もありで(ボソッ)」



 安曇野の提案に全員が同意。

 いいね、その方が盛り上がるし、俄然やる気も出る。



「分かった。俺がみんなのメダルを買ってやるよ。全員、それぞれ200枚を持ちメダルにしてチーム戦ってことでどうだ」


「面白いじゃない、回くん! 受けて立つわ」



 ニヤッっと笑う安曇野。

 もしかして得意なのか。


 まあいい、あんまり弱すぎてもつまらないからな。


 俺はさっそく千円でメダルを買った。

 専用カップに『200枚』が払いだされた。

 それを俺含めて四人分を購入。

 四千円の出費だが、これくらいはいい。



「ありがとう、お兄ちゃん」

「ありがとうございます、回お兄さん。感謝します」

「回くん、こういうさり気無いところ……女子って弱いんだから」



 あれ、なんか三人とも顔がちょっと赤いな。



「とにかく、はじめるぞ。歩花、スロットへ行くぞ」

「うん!」



 空いている二席へ座る。

 俺はもちろん『イカスロ』へ。

 歩花は『ハナビっち』へ座った。



「歩花、やり方とか分かるか?」

「分かんない。お兄ちゃん、教えてくれる?」


「もちろんだ。って、歩花……浴衣をズラすなって。胸元が見えてるぞ」

「えへへ。今なら二人きりだもん」



 白く透き通るような谷間が目の前にあった。あまりに大きく、零れ落ちそうなほどのサイズ感。


 ……これは。


 妹とはいえ、義理。

 俺は興奮しかけてしまった。


 いかんいかん!


 勝負どころではなくなる。

 歩花がえっちなのは今に始まったことではない。耐えろ、耐えるんだ俺。今は勝負に勝つ。それだけを考えるんだ。



「ストップだ。歩花。周囲にいる若い男の視線がお前の胸元に集中している。これ以上は危険すぎる」

「そ、それは嫌だな。わたしの胸を見ていいのはお兄ちゃんだけだもん」



 本当に嫌そうに歩花は、胸元のボタンを戻した。……ふぅ、良かった。



「じゃあ、説明を続ける。

 えっと……メダルを投入口へ入れて、レバーを引いて、リールの下にあるそれぞれのボタンを押す。図柄が揃うと、3枚とか15枚とか払い出しがあるよ。で、キャラクターの図柄か『7』を揃えればビッグボーナスで350枚以上払い出しがある。

 『BAR』ってのはレギュラーボーナスと言って、100枚ほどの払い出しだな」


「へえ、そうやってメダルを増やすんだ。面白そうだね」

「ああ、ボーナスが続くと脳汁ドバドバで楽しいぞ」

「がんばってみる」


 歩花は、投入口にメダルを入れていく。

 左にある1、2、3のランプが点滅。


「基本、三枚掛けな」

「あ、三枚しか入らないんだ」

「三枚掛けすると、横線、斜め線と揃う位置が増えるんだ。図柄が揃いやすくなるっていうか、リーチ目を獲得するなら三枚掛けが基本だけどね」


「うーん、よく分かんないけど頑張るよ~」



 レバーを叩き、リールが回り始めた。そうだな、細かいことは抜きしてシンプルにがんばろう。歩花の幸運ならきっと大当たりを引きまくれるはずだ。


 俺もメダルを投入し、ゲームを開始した!

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