頬にキスと病む病む(松本城観光)
ネックファンとの
前へ倒れ込む形となり、俺は歩花に衝突。そのまま倒れ込んだ。
「――うわぁっ」
ドンッと鈍い音が響く。
背後で「キャッチ!」という紺の声が聞こえた。って、ネックファンをキャッチしたのかよ。なんだ、それなら歩花を押し倒す必要はなかったじゃないか。
いやそれより、俺は薄暗い空間の中に顔を埋めていた。
……えっと、これは?
「あぅ……! お、お兄ちゃん。どこに顔突っ込んでるの!」
「え? ん? んぉ!?」
起き上がると、俺はどうやら歩花の
俺、歩花の
「回お兄さん、歩花ちゃんの凄いところに顔が!!」
引っ張って俺を起き上がらせてくれる紺。た、助かった。このままだと俺が歩花を襲ったみたいになってるし。周囲の観光客から、
起き上がって、俺は歩花の無事を確認する。
「大丈夫? ケガはない?」
「う、うん。もぉ……着替えたばかりなのに」
「え?」
「ううん! なんでもないっ! それ以上聞いたら刺すからっ」
なぜか顔を真っ赤にする歩花。いや、それもそうか。あんな大胆な格好になってしまったのだから。
俺は謝りつつ、歩花を立ち上がらせた。その隣で見ていた紺が歩花に話しかける。
「ところでさ」
「ん、なぁに? 紺ちゃん」
「歩花ちゃん……下着が大人すぎ。いつもそんなのつけてるの!?」
「えっ……だってだって。勝負下着の方が……いいよね」
って、なんで俺を見て言うの!?
うわぁ、なんかこっちまで恥ずかしくなってきた。てか、恥ずかしい!! 歩花のヤツ、常に勝負下着なのかよ。
よく見てないから分からないけど、派手っぽいことは理解できた。いったい、どんな柄なんだかな。
そんな歩花は、恥ずかしがって俺と視線を合わせなくなった。スカートを押さえて泣きそうになってる。それはそれで可愛いというか、背徳感とか罪悪感が……。こりゃ、あとでお
「とにかく、先を急ごう。お城の中は結構広いようだし」
「ごめんね、お兄ちゃん」
「歩花が謝る必要はないよ。俺の方こそ悪かったな」
改めて謝罪すると――
「そ、その、あたしもごめんなさい。ネックファンが外れるとは思わなかったから」
紺も頭をブンブン振って謝ったけど、うぉい! また外れて吹っ飛ぶだろうがっ。俺は、紺を止めた。もう歩花の股に突っ込むわけにはいかない。これ以上は、確実に嫌われるって。
* * *
入場料を支払い、松本城へ入った。
近くで見ると
職人技だな。
城内は、土足厳禁。
靴を脱いで歩いて回るらしい。
中はそこそこ薄暗いが、落ち着きがある。歴史の深みを感じさせる木造の作り。古びた
これが何百年も現存しているとは――凄いことだ。いくつもの木窓、階段が無数に点在していた。特に階段は、
火縄銃などの展示物を眺めながら、先へ進む。
階段を上って、最上階の天守閣へ。
そこには松本市を見渡せる風景があった。
「おぉ、見晴らしが良いな」
「最高だねっ。写真撮ってこっと」
歩花は、スマホを取り出してパシャパシャ撮影。紺も同じように風景を撮影。俺は、そんな無邪気な二人を写真に収めた。
こりゃ、しばらくは止まりそうにないな。特に歩花は楽しんで写真撮影していた。多分、SNSとかにも
すっかり機嫌もよくなってくれて、俺はホッとした。ここ数時間、ちょっとおかしかったからな。
胸を
「どうした? 紺」
「このあと、喫茶店『まるも』へ行きません? ケーキとか
「いいね、みんなで行こうか」
「はいっ! やっぱり現地の美味しいお店は行っておかなきゃですね」
そうだな、せっかく長野まで来たんだ。美味しいものは味わっておきたい。
「紺、長野のグルメって何があるんだ?」
「ええ、調べておきました。信州といえば、お
ほぉ、お
五平餅とは――なんだ?
スマホで調べると、串に刺さった味噌漬けの大きな餅が出てきた。これは、写真で見ても美味そうだ。
「五平餅は食べたいな。絶対美味いヤツじゃん」
「あたしも食べた事ないので楽しみですっ」
よ~し、俺は決めた。
蕎麦に五平餅、かつ丼を食うまでは長野に滞在しよう。それに元同級生の『
「ぼちぼち行くか」
「はい。その前に、回おにいさん……今、ちょっといいです?」
「ん? どうした?」
「あのですね、今、歩花ちゃんは写真撮影に夢中になっています。だから、今がチャンスかなって」
思い切り飛びついてくる紺は、俺の頬にキスをした。――なッ! なんですとぉ!?
あまりに突然すぎて俺は固まった。
まさか紺がいきなりキスしてくるとは。
「…………えっと」
「ごめんなさい、回お兄さん。これ、あたしの気持ちっていうか、お礼です。ほら、きちんと合流してくれたし……今、とても楽しいから」
そんなモジモジとされると、俺も照れる。やばい、幸せ……ここまで頑張って運転してきて良かったぁ。でも、俺以上に紺はバイクで来ているからな。俺の方こそ尊敬する。それを伝えると、紺は両手で顔を
照れているようだ。
うわ、可愛い。
このまま抱きしめてお持ち帰りしたいほどに。なんて思っていると、歩花の視線を感じた。しかも、ラインが大量に入っていた。
『お兄ちゃん、お兄ちゃん、お兄ちゃん、お兄ちゃん、お兄ちゃん、お兄ちゃん、お兄ちゃん、お兄ちゃん、お兄ちゃん、お兄ちゃん。やだ、やだ、やだ、やだ、やだ、やだ、やだ、やだ、やだ、やだ、やだ、やだ、やだ、やだ、やだ、やだ。
お兄ちゃんを取られたくない、取られるくらいだったら……殺していい? うん、そうしよう。大丈夫、歩花も一緒に逝ってあげるからね』
うああああああああ……!!
***おねがい***
続きが読みたいと思ったらでいいので『★×3』をしていただけると非常に助かります。
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