えっちな妹が甘えてくる
残りの細かい荷物は、後でまとめる。
それより、最後の課題である『旅先』を決めねば。
テーブルにノートパソコンを置き、ソファに仲良く座って決めていく。検索サイト・グルグル先生のマップサイトを使用。日本地図を画面に映し出した。
「二人とも、これから観光地を選んでいこう」
俺の右隣りに座る歩花が密着してくる。
「うーん、日数とかどうする?」
「そうだな、とりあえず一週間でいいだろう。最大二週間ってところかな」
「それなら、色々回れるねっ」
小さな頭をこちらに寄せ、猫のようにスリスリしてくる歩花。それを見た紺もムッとした表情で左側から密着。……また挟まれた。
今日はよくサンドイッチにされるな。
それに、歩花も紺も風呂上りだから、シャンプーの良い匂いがする。――って、集中力を乱されている場合ではない。
「えっと、現在地が関東だから中部地方を目指して行って……近畿、中国地方、九州、四国と回るのもアリかな」
「なるほどですね! 北ではなく、南を目指すんですね」
「そそ。個人的に長野には行きたいからね。俺的なルートだけど、長野、岐阜、滋賀、京都で、そこから帰って愛知、静岡、神奈川と戻るのはどうだろうか」
そう提案すると、歩花が
「そうだね、九州までは大変だと思うし、無理はしなくていいと思う」
「済まないな。日数も考えると全部は不可能だ」
もし余裕があったら九州まで行くとして、今は長野→神奈川ルートで妥協。一応、紺の事も考えるとこれが限界だ。
「京都まで行くんですね。……頑張らないとだ」
バイクでついてくるつもりの紺は、京都と聞いて少し緊張していた。全部ついてこれるのかなあ。そういえば、秘策があると言っていたけど何だろうな。
直ぐ判明するのか、それとも旅中に教えてくれるのか。何にしても、ちょっと楽しみではある。
「とりあえず、俺の考案したルートでいいかな?」
二人とも
よし、観光ルートは決まった。
あとは観光スポットだが、全部を決めていると時間が足りない。ひとまずは京都辺りまでをザックリ決めてしまおう。
「ねえ、お兄ちゃん。わたしは岐阜の白川郷行ってみたーい!」
「おぉ、白川郷か。有名だし、あの異世界のような風景は一度生で見てみたいよな」
「うんうん!」
「軽く調べたら、温泉で車中泊できる場所やRVパークもあるようだから行けるな」
「おぉ!」
岐阜の白川郷は決まりだな。
次は滋賀だけど、う~ん。
「あ、滋賀なら琵琶湖を走ってみたいです! あの美しい湖を思いっきりバイクで走ったら楽しいと思うので!」
「いいねえ、車でも最高の眺めだろうし、分かった」
「ありがとうございますっ!」
段々と候補地が決まりつつあるな。
京都なら清水寺や金閣寺などたくさん観光地があるから、到着する前に考えればいいだろう。帰りの愛知では、名古屋城や名古屋港水族館とか軽く何処か寄って……静岡は富士山周辺で押さえておけば問題ない。
そして、神奈川は江の島――と。
「大方は決まったな。もちろん、向こうに行ってから気になるところとかあったら寄っていく。それでいいだろ」
「これで観光地も決まりだね」
歩花が頭を預けてきた。
うわ、紺の前で……いや、多分死角になって見えてないと思うけど……?
「ついにこれで明日には出発なんですね」
僅かに唇を震わす紺。
さっきから緊張しすぎだろう~! まあ、不安になる気持ちも分かる。紺に限っては125ccのバイクでついてくるわけだし。
「ああ、最後にもう一度確認するけど、本当に大丈夫かい?」
「は、はい……最初は長野なんですよね?」
「そうだ。とりあえず『松本』を目指そうと思う。車で四時間コースだな。バイクとなると……六時間は掛かる」
「ろ、六時間!? 分かりました。長野に関しては先に現地へ向かおうと思います」
「その手があったか!」
「はい、お兄さんたちが出られる前に出発しておきますね。なんだったら今から……!」
気が早いなっ。いやだけど、それは良い案だ。高速道路に乗れない原付二種では、一般道路を使わねばならないから、かなり時間が掛かる。
「まだ明日か分からないから、連絡するよ」
「分かりました。でも、ちょっと心配になって来たので一度、荷物とバイクの点検をしてこようと思います。というか、道具を見直してきたいんです」
そっか、それで焦っていたのか。バイク旅は荷物に限界があるし、整備も
「分かった。もう帰る?」
「はい、回お兄さん、歩花ちゃん。今日はお邪魔しました。また出発前に教えて下さい」
ソファから立ち上がる紺。
どうやら、帰るようだな。
俺と歩花も立って、玄関まで見送る。
「それじゃ、ラインするよ」
「お願いします。では、また長野で! 歩花ちゃん、またねっ」
元気に挨拶して行ってしまった。
懸念はあったけど、意外と何とかなりそうだな。秘策もあるようだし。
リビングへ向かおうとすると、歩花が抱きついてきた。
「お兄ちゃん……」
「ん? どうした、歩花」
「お兄ちゃん、紺ちゃんのフトモモばっかり見てたよね」
「ちょっ、歩花……!? なぜそれを……」
「だって、視線が向いていたもん。もー! 紺ちゃんばっかり見ないで、わたしも見てよ」
怒って抱きついてくる歩花。半袖のシャツにハーフパンツという涼しい格好をしているから、肌の感触も凄かった。や、柔らかい。
「そんな密着すると、胸元が見えるぞ……見えてるけど」
「そ、そこは見ないで……恥ずかしいから」
そう言いつつも、歩花は前から飛びついてきて――俺の首に腕を回す。必然的に俺は、歩花の背中を支える事になった。
「甘えん坊だな、歩花は」
「はい、お兄ちゃん“ちゅー”して」
仕方のない妹だな。
ツブヤイターのフォローを外されるのも嫌だし、俺はそっと歩花にキスをした。
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