キャンピングカー販売店へ向かえ

 ソファでスマホをポチポチしていると、歩花と狐塚ちゃんに挟まれた。


「ねぇ、お兄ちゃん。なにしてるの~?」

「もう日にちがないからな、必要なものを通販で頼んでしまおうと思う」

「他に何を買うの?」


「主にポータブル電源とポータブル冷蔵庫だな。あと、ソーラーパネルもついでに買おうかと。電気は必須だ。それに、冷蔵庫もあった方がいろいろ保存できるし」


 せっかくだ。自室からノートパソコンを持ってきて、二人に見てもらおう。


 一旦、部屋に戻り俺はノーパソを引っ張ってきた。



「回お兄さん、マックなんですね!」



 興味深そうに狐塚ちゃんが覗いでくる。そう、俺の愛機はマックだ。軽くて性能が良いし、動画編集にも向いている。



「これで二人とも見やすいだろ。注文していくから、分からない部分は言ってくれ。説明する」



「うんうん。お願いね、お兄ちゃん」

「じゃあ、あたしも」



 二人とも改めてピッタリくっついてくる。なんか距離感、近いなぁ……。うーん……香水の匂いなのか分からないけど、良い匂いがして興奮する。これじゃあ、集中できないな。何かいい方法がないかと思案する。



 う~ん……。


 うん、いったん出掛けよう。



 せかっくの夏休みなんだ、家でゴロゴロしているよりも外でゴロゴロする方が何十倍も有意義と言えよう。ならば、伝家の宝刀・カーシェアリングだ。


 予約状況をアプリでチェックしてみると『X-VAN』の空きがあった。……これだ! X-VANは最大四人乗りできるし、もちろん車中泊モードも展開できる。三人なら余裕のスペースだ。いや、寧ろ川とか涼しいところへ行くのもアリだ。



「なあ、二人とも提案がある」


「「?」」



 出掛けようと提案すると、二人とも瞳をキラキラ輝かせた。



「お兄ちゃん、名案!」

「さすが回お兄さん! 家より外ですよね」



 なるほど、二人とも出掛けたかったわけか。なら、ちょうど良い。さっそく外出準備を進めていく。



「よし、じゃあ準備が出来たら言ってくれ。俺もサクっと済ませてくる」


「はーい! じゃあ、準備してきちゃうね~」

「あたしはスマホしかないので……」


 そういえば、狐塚は財布やら落としてスマホしかないのか。というか、親御さんが心配しているんじゃ……帰らなくていいのかな。


 歩花が自室へ戻っていく。

 その間に俺は、狐塚に聞いた。



「なあ、家に帰らなくていいの?」

「あー…、大丈夫です。今朝、電話したら繋がったんですよ。で、今日までオッケー貰ったので、あたしも一緒に遊びます。……それとも、帰った方がいいですか?」


 不安気な眼差しを向ける狐塚。うぅ、そんな瞳で見られると、帰ってくれなんて言えるわけがない。まあ、電話したのならいいか。親の許可も貰っているようだし。


「分かった。今日の夜までは遊ぼう。でも、夜にはちゃんと帰るんだぞ」

「はいっ! ありがとうございますっ」


 めっちゃ良い笑顔で返事するなあ。よし、今日は三人で出掛けるぞ~。



 ――十五分後。



 玄関前で俺と狐塚は待っていた。

 しばらくして歩花がトコトコやって来た。今日はブラウスにミニスカという女の子らしい服装だった。歩花は何を着ても可愛いな。


「お待たせ、お兄ちゃん。紺ちゃん」

「おう。さっそく出掛けるか」



 外へ出ると、すぐに太陽が照り付けてきた。……うわ、暑。まだ午前十時なのに、この気温かよ。しまったなぁ……こんな暑いと車の中はサウナだ。冷房のあるキャンピングカーならまだしも、これはキツすぎる。


 ……冷房のある、キャンピングカー…?


 そうか!!


 カーシェアリングにこだわる必要なんてなかったんだ。俺は大事な事を失念していた。


「えっ、回お兄さんどうしたんですか? なんか頭の上に電球が出てますよ!?」

「ああ、思いついたんだよ。すげぇ事をな!」

「す、凄いこと?」


 ああ、俺はとんでもない悪魔的発想を思いついてしまったのである。サプライズがてら、俺は歩花と狐塚をある場所へ連れていく。



「お、お兄ちゃん。どこへ行くの? ま、まさか……わたしと紺ちゃんを裏路地とか連れていって、そ、その……えっちな事とか! ダメだよ、そんなの!」


「するかッ!! 歩花、誤解されちゃうから、自重してくれ」

「あっ、そっか。お兄ちゃんをたまに困らせるの面白くて……ごめんね」


 からかってくれるのは正直嬉しいけど、さすがに内容が内容だ。俺が逮捕されちまう。とにかく留まっていると熱気にやられる。先へ進もう。



 まずは、穂高ほだか駅へ向かった。



 電車で隣町へ向かい『オータム』へ向かうのだ。無論、歩花と狐塚は『???』状態で、困惑中。ナイショにしているからな、無理もない。だが、少しはドキドキがあってもいいだろう。その方が面白いから。



「ど、どこへ向かっているのでしょう? ――はっ、やっぱり、あたしと歩花ちゃんを裏路地に……」

「狐塚ちゃんまで何てことを言うんだ!? しかも、ここ駅前だぞっ!」


「だって、お兄さんってからかうと反応面白いんですもん」


 だからってなぁ……まあいいや。

 交通電子マネー『メロン』に三千円分をチャージ。歩花と狐塚ちゃんの分もプレゼントした。


「えっ、お兄ちゃん?」

「回お兄さん、これ……」



「三千円しか入ってないけど、交通費だ。あと飲み物とか欲しくなったら、買うといい。お腹が減ったら、キヨクスで買い物もできるしな」



 二人とも嬉しそうに感謝した。

 お金は余りある程あるからな。

 これくらいの小遣いは問題ないっ。


 さあ、キャンピングカー販売店『オータム』へ向かおうか!


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